車両故障は不可抗力

ぽやしみ仙人

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「しかし、ほんとに人っ子一人いないねー」

 バスを降りた四街道は物珍しそうに周囲をキョロキョロと眺める。
 毎日のようにあちこちへと移動するバス運転士とは違い、普段デスクワークをしている人間にとっては、こういう景色は案外珍しいものなのかもしれない。

「次の発車までは何分あるの?」

「発車まではあと八分だな」

 腕時計を眺めながらそう答える。短時間と言えどこうして外の空気を定期的に吸えるのはありがたい。
 他の路線だと時間がギリギリでずっと走りっぱなしということもあるが、この路線だけ朝ラッシュ以外はこうした時間が確保されている。それだけがこの路線のメリットかもしれない。

「……まあ、八分あるんだったら概要だけ聞いておこうかな」

「何か言ったか?」

「いいや、なんでもないよ。とりあえず、実籾がぶっ壊したバスのデータとか件数ってないの?」

「まあ、一応あることにはあるが……」

 副所長からもらった紙ベースのデータを携行している鞄から取り出し四街道に渡す。

「ありがとさん。……暗くて何にも見えないんだけど」

「そりゃ外で見るからだろ……」

「ああ、そういえばそうだったね。すっかり忘れていたよ……」

 えへへと笑いながら、四街道は車内灯が煌々と点る車内へ戻り、先程座っていた一段高くなった座席に腰掛ける。

「確認なんだけど、これって意図的に水増しとかされていないよね? 明らかに何十件も多いとか……」

「いいや、それはないだろ。というか、その件数はあくまでも『運行中』のものだから、点検中に不具合発見のも含めればもっと多くなるかもな」

 車両故障の項目に『日常点検時』という項目がないのは、ただ単純に集計が面倒だったか、それとも気にすらしていないだけか……。
 そもそも不具合を運行前に発見し、路上故障なんて最悪な事態を避けるための日常点検だ。
 異常を発見することに関しては、責めるどころかむしろ称賛されてもおかしくはない。
 ……いや、日常点検も法令で定められてるし、たとえ異常を発見しても褒められはしないか……。
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