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「実籾が壊す車がほとんど古い車だったらまだ反論の余地はあると思うんだけど、これじゃあ、ね……」
そう呟き四街道は眠たげな顔で手元の資料を繰って、目新しい情報がないか探し始める。
俺も俺で記憶を頼りに、バスが壊れた時に共通する事柄を思い出してみるがそう上手く因果関係が見つけるわけではない。むしろ、因果関係があれば俺の意図的な犯行であると逆に利用されそうだ。
「……あ、実籾がちゃんと点検してないとか?」
「毎朝、たっぷり時間をかけて念入りに点検しているんですがそれが……」
「なんか、ごめん……」
四街道が申し訳なさそうな表情を浮かべる。
日常点検で発見出来ないような故障というのは、滅多に起きないはずなのだ。確かに路線バスは一日で三百キロとか走るのでその分部品の磨耗や劣化が早いはずだが、自社工場での定期点検などでカバーをしている。
「そもそも車両故障が自然に起きたのか、それとも意図しない形で人為的に起きたのかってところだよね。全てが全て自然現象だったらいくら何でも件数的におかしいだろうし……」
「まあ、そうだな。実際その件数の故障が起きたとしても俺が引きまくる確率って結構低いだろうし……」
「それとも、実籾の運が滅茶苦茶悪いとか?」
「……俺、お祓いでもしてこようかな――って休みなかったわ……」
二人して大きくため息をつく。
これでは悪戯に無為な時間が過ぎていくだけだ。
だからと言ってこの状況を覆す画期的なプランはまったくといっていいほど思い浮かばない。
そもそもバスの構造について二人とも詳しいわけではなく、素人に毛が生えた程度の知識だ。
経験が決して豊富とは言えない運転士と、知識だけで現物を見たことがない本社勤めの事務員。
そんな二人がこうして実物も見ずに机上の空論を考えるなんて無理があるだろう。
何もやらないよりはまし――程度のことだ。
せめて専門家の一人や二人いればまだ希望はあるのだが、生憎とその伝手を持ち合わせていない。
「……実籾、明日はどんなダイヤなの?」
不意に何か思い付いたのか、急に四街道がそんなことを問い掛けてくる。
「確か、一番出勤が早い早番だな。その後に重たいオマケが付いてるけど……」
「……あっそ。休憩は何時から何時くらい?」
「十一時半から十四時ちょい前くらいだな、確か」
「なら、その時間、用事を入れずに待ってて。一つ思い付いたことがあるからさ」
「わかった。よろしく頼むわ」
「――と言っても大したことじゃないから、過度な期待はすんなし!」
「あ、ああ……。まあ、大いに期待しておくさ。それぐらいしか希望がないから、な……」
シトシトと降る雨は止む気配すら見せない。
今はただそれが俺の未来を示すものでないことを期待するしか出来なかった。
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