車両故障は不可抗力

ぽやしみ仙人

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「……ああ、あと、もう一個忘れてたぜ」

「忘れてたって何がですか?」

「車両故障の条件って奴だ。あともう一個としては定期点検の目安となる距離を超過した時、だな。一キロ二キロとかじゃなくって数十、下手すると数百キロ単位で、だ。あれはもう言い訳出来ねえし最悪だぜ?」

 そう渋い顔をしてすぐに誤魔化すように。

「悪い、今言ったことは忘れてくれ、ガハハハハッ、ガハハハハハッ」

 そういつも以上に工場長は大声で笑った。
 けれど、四街道はそれが見えていなかったのか。

「故障、超過、前兆……。なるほど、そういうことか!」

 急に立ち上がり、何かを閃いたのか明るい表情を浮かべつつ俺の方へ寄ってきた。
 そして、おもむろに俺の手を取り。

「実籾、僕は全てがわかったよ! だからもう安心してほしい!」

 目を輝かせながらそんなことを口にする。俺との距離が過去最高に近く少し鼓動が速くなった気がした。

「お、おう……」

 だから、そんなことしか呟けなかった。

「……若いっていいねえ」

 塩浜工場長が他人事のようにそう呟く。
 その声は、ピット内のバス車内まで鮮明に聞こえてくる雨音に、ただ吸い込まれていくのだった。
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