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四月編 春だけど雪を見たい
西花Side2
しおりを挟む彼は気が利いてとても優しい。
細やかな気遣いが自然に出来る――それが彼の好ましいところだ。
さっきだってさり気なく私のスーツケースを持ってくれて、改札を通る時は切符を取り忘れないように注意を促してくれた。
もしそれが無ければ手ぶらで改札を通り抜け、目的地で切符がない事に気付いて途方に暮れていたことだろう。
更に冷えるといけないからとカーディガンにブランケットまで貸してくれた。
準備が良すぎて逆に怖くなるくらいだ。
時折過保護だと思うこともあるけれど、その優しさが私にだけ向けられていると私は知っているので嬉しくなる。
それは私だけを特別扱いしているということの証左で、そんな人が私の彼氏だなんて夢のようだ。
そんな彼はさり気なくスーツケースを網棚に載せ、窓際の席を譲ってくれたので「ありがとう」とお礼を口にして座席に座る。
彼が隣の席に座ったのを確認して問う。
「今日の目的地ってどこか聞いてもいい?」
「まずは富山だな。その後は着いてからのお楽しみだ」
そう答えた彼はニヤリと何か企む笑みを見せた。
「じゃあ、楽しみに期待しておくね」
「おう、存分に期待しといてくれ」
「――たとえ期待外れでも、北穂君とならどこへ行ったって楽しいから安心して」
「そう言ってもらえると助かる。……あと、山は冷えるから下に履けるものがあれば先に準備しておいた方がいいかもな」
目的地のヒントなのか、それとも私を気遣ったのかそんなことを口にした。
それにしても山、山か。
碌な装備も無いのに私はどこへ連れて行かれるのだろう。
少しだけ不安だったけれど、それよりも彼と一緒に旅行が出来るという幸福の前では微々たるものだった。
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