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四月編 春だけど雪を見たい
西花Side9
しおりを挟む終点に着いて寒さに怯えながら外に出たけれど、日差しがあるお陰で思ったよりも寒くは無かった。
私の防寒対策が万全だから――そう言いたいところだが、私の身体を寒さから守っているのはほとんど彼の私物だ。
偉そうな事はとてもじゃないが口に出来ない。
衣類に加え貼るタイプのカイロまで備えているので、真冬の雪山は無理にしても北海道くらいなら余裕な装備だろう。
冬どころかそもそも北海道行ったことないけれど……。
駅の外は大勢の人で賑わっていた。
みんなバスだけで来たとは到底思えない混雑っぷりだ。
と思ったら彼曰く富山側だけでなく長野側からもアクセスすることが出来るらしい。
長野側もマイカーで乗り入れる事は出来ず、途中でケーブルカーやバスを乗り継いでここへ至るわけで。
それなのに人人人……見渡す限り人ばかり。
雪の大谷ならぬ人の大谷と言っても過言ではないだろう。
……人の大谷だったら大活躍しているメジャーリーガーになっちゃうな。
それはさておき。
時折吹く風が冷たいというのになんだか暑くなってきた。
絶対、身体中に貼り付けたカイロのせいだ。
それ以外考えられないので服の中に手を入れ熱々のカイロを回収する。
「これ余ったから使って」
「お、サンキュ」
少し寒そうにしていた彼にカイロをお裾分けする。
お裾分けっていうか、元々は彼の物なんだけどな……。
特段彼も気にしていないようだし、それは言わないお約束か。
……どうしよう、まだ熱い。
カイロを全て回収しても身体の火照りは収まるところを知らず、冷たい風が涼しいと思うくらい異常だ。
純粋に熱があるんじゃないかと疑うけれど、どうやら違うようでホッとした。
と、なれば更に装備を解除したくなる。
……手袋とマフラー、いらないな。
さり気なく両方とも外し、手袋は上着のポケットに隠した。
マフラーは彼の首元に巻き付けちゃおう。
彼がドキドキして嫌でも私を意識することになる。
我ながらあざとくて。
マフラーも押し付け――違う違う、彼にさり気なく返却もできる一石二鳥の作戦間違いなしだろう。
「北穂君、ちょっと失礼するね」
背伸びして彼の首にマフラーを巻く。
これをこうで、あれをこうしてっと。
「にっしー、く、苦しい苦しい!」
「え、うそ、ごめん、ごめんね……」
慌ててマフラーを緩めると、彼はホッとしたように深呼吸した。
私はなんて愚かな事をしたんだろう……。
危うく彼を絞殺しそうになるなんて……。
自分の過ちに目の前が真っ暗になり、まともに彼の顔を見ることすら出来なかった。
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