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激動の令和
しおりを挟む……また失敗だ。
時を遡り歴史を変えて、また時を遡る。
けれど、結末はいつも変わらない。
変わるのは過程だけで。
解決の道筋が見通せない。
何度繰り返したところでいつも失敗する。
現実とは複雑に絡み合った糸のようなもので。
それを解いたところで、別のところが絡まって解けない。
つまり一度絡まった時点でもう全てが始まっているのだ。
どこまで戻っても糸は絡まっている。
それを無意味に解く。
ただひたすら解き続ける。
けれど、結び目を解いても解いても減っていかない。
それどころか歪な結び目が増殖し続ける。
ただのいたちごっこ。
やがて結び目は歯車へと変わり。
ちょっとした衝撃で幾層もの歯車を回り始める。
一つ一つは小さな歯車が、やがて巨大な歯車を動かす。
こうなっては手の施しようがない。
黙ってその動きを見ているしか出来ない。
「――何度繰り返しも無駄だよ」
鷲が毛づくろいしながら、他人事のようにそう呟く。
「でも、止められるのは――」
「――君は溶岩が吹き出す火山に蓋をすれば、噴火を抑えられるとでも思っているのかい?」
「…………」
「どんな強大な力があっても、所詮はちっぽけな人間の集まり――限界はあるさ」
「…………」
「人間である以上、差し伸べられる手は二本しかない」
「…………」
「……つまり、さ」
鷲は翼を大きく広げた。
「――既に始まってしまった事象はもう誰にも止められない。たとえ僕であってもね」
そう冷たく呟き、くすんだ空へと飛翔する。
陸では熊が――。
海ではパンダが――。
獰猛な目をして他の動物に襲い掛かる。
それを合図に様々な動物が暴れ始める。
大地は荒れ果て。
海は陸地を飲み込み。
空は眩しく光り続ける。
きっかけは何だったであろうか。
こうなってはもう誰にも止められない。
何度も見てきた凄惨な景色。
過去のものとは比べ物にならない。
だから。
だから。
だから。
――また時を遡る。
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