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敵地潜入? 残されたふたり…!(第二幕)
シーン3
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シーン3
元は肥沃な大地であったというが、いがみ合う二国間の争いによりすっかり荒れ果てた荒野―。
地平線からゆっくりとその輪郭を現した大型の装甲輸送機は、いかつい車体を激しく震わせながら目的地まで走破する。
都合、三体が寄り添うように並び立つギガ・アーマーのもとへと。
ただしその内の一体はくたばるように仰向けで見た目で言えば小破の状態だ。
きっと機械に目が利く輸送車の運転士なら、それが見た目のままでなくした大破であることもすぐに見抜くだろう。通常よりずっと髙い位置にある運転台のドアが開け放たれ、そこから緑色の整備服を着込んだ見慣れた人影が姿を現す。いわゆる大熊族にしてはずいぶん見てくれのほっそりした青年は、身軽なさまで巨大なタイヤに被さるカタチで掛けられたハシゴを下りて地面に降り立った。はじめ何故か鼻先をクンクンとさせて、風にかすかに残る残り香みたいなものをかぎ取ったものらしく、はたと小首を傾げさせていたか。
くるりと身体を巡らせて、その視線の先にあったふたりのいかついパイロットスーツ姿に敬礼!
ただちに小走りでこれに駆け寄るのだが、風向きが変わると共に顔つきが怪訝に曇りだし、しまいは足を止めてその場に慄然と立ちすくむのだった…! かなり困惑したさまで両手を鼻に当てて言葉にも詰まる始末だ。
「ベアランド准尉! ウルフハウンド准尉どのもご無事でしたか!! 遅ればせながらただ今到着しましたっ、ん! んんっ!! んんんんんんっ…!?」
言葉とは裏腹にのけぞってもだえるようなさまの青年に、あははと鷹揚な笑いでみずから歩み寄るでかい大熊族のパイロット、ベアランドはウィンクしてその若い機械工に聞いてやる。
「あはは♡ そんなにニオウかい、このおれたちは? おまえが用意してくれたマスクしてるからあいにくわからないんだが、相当なんだな、その表情からするには♪ 役に立ってるよ、このマスク! てか、じぶんの分は用意してなかったんだな?」
「はっ、はい! おえっ…いえ、あの、このニオイは一体っ、おええっ、す、すいません!!」
鼻から手を外せないで満足な敬礼すらできないさまのリドルに、しかめツラのオオカミが横から出て同情に満ちた目線を投げかける。
「いいんだよ、無理すんな! ちょっと前までここはひでえありさまだったんだ…!! 今となってはおまえには感謝してるよ。コイツがなければオレも危うかった。ちょっとしゃべりづらいのが難点だが…そんなにニオウのか??」
青い顔でブルブルと顔を振るリドルに、マスクの中でため息つくウルフハウンドは隣でお客さんを方に担いだ相棒を見上げる。
「気分が悪いったらありゃしねえ、とっととずらかりてえよな? オレたちじゃなくてそいつがニオウんじゃねえのか??」
地元のパイロットスーツ姿の犬族を担いだ左肩をすくめさせるベアランドはあっけらかんとしたさまだ。
「五十歩百歩だよ♪ でもリドルに任せるにしてもこのニオイをどうにかしなくちゃな? それじゃあ、リドル、頼んでおいたアイツのリモコンは出来てるかい? 早速使いたいんだけど♡」
「…は、はい! それは、もちろんご用意してありますが、まだ試験しておりませんので…あの、そちらの肩に担がれている方は…」
いろんなことが渋滞して困惑することしきりの若いメカニックは目を白黒させるばかりだが、やがてみずからの整備福の胸ポケットから何かしら小型のツールらしきを取り出した。ベアランドとその肩からだらんと茶色いシッポの垂れ下がったケツを向ける知らないパイロット姿を見比べるが、利き手のそれをおそるおそるに上官へと差し伸べる。このままこの小僧をきつく抱きしめたら、一体どんな悲鳴を発するのだろうかとひそかに腹の底にわき上がるサドっ気をのど元で押しとどめるデカ熊は右手で倒れるアーマーを目で示して言った。
「ほんとにかわいいよな♡ じゃなくて、行きがかりで救助したうちの地元っ子だよ! コレって何番隊だっけ? とにかく基地まで送り返してくれよ。暴れられたりしないように、ロープとかでがんじがらめにしばってさ♡」
「そんなものはおまえがやってやれよ! そいつの細い腕じゃまともに縛れるからもわからねえっ、いや、機械いじりなんだからそのくらいはお手の物か? というかこのニオイ! あとそいつはなんだ??」
リドルから受け取った棒状のアイテムを不審げに見るオオカミに、いたずらっぽい笑みのでかいクマはそれを口元にやってにまりとした笑みを口元に浮かべる。マスクが邪魔して見えなかったが、意味深に言ってくれた。
「内緒♡ すぐにわかるよ。ちょっとしたリモートコントローラーさ♪ コイツをちょちょいといじれば、うちのでっかい相棒が…ほら!」
「…あっ、ベアランド准尉! 何を!?」
棒状のそれをおのれが乗ってきた大型のアーマーに向けるなりピピッと発信音みたいなものを鳴らすのに、廃語で慌てるリドルのさまも訝しく聞くウルフハウンドだが、見上げたアーマーがおかしなさまになるのに目玉を大きく見開いてみずからも驚きの声を発するのだった…!
「あ? なんだ、て、おいっ、なんだ、勝手にアーマーが…!!」
直後、ちょっとしたパニックが巻き起こった♡
元は肥沃な大地であったというが、いがみ合う二国間の争いによりすっかり荒れ果てた荒野―。
地平線からゆっくりとその輪郭を現した大型の装甲輸送機は、いかつい車体を激しく震わせながら目的地まで走破する。
都合、三体が寄り添うように並び立つギガ・アーマーのもとへと。
ただしその内の一体はくたばるように仰向けで見た目で言えば小破の状態だ。
きっと機械に目が利く輸送車の運転士なら、それが見た目のままでなくした大破であることもすぐに見抜くだろう。通常よりずっと髙い位置にある運転台のドアが開け放たれ、そこから緑色の整備服を着込んだ見慣れた人影が姿を現す。いわゆる大熊族にしてはずいぶん見てくれのほっそりした青年は、身軽なさまで巨大なタイヤに被さるカタチで掛けられたハシゴを下りて地面に降り立った。はじめ何故か鼻先をクンクンとさせて、風にかすかに残る残り香みたいなものをかぎ取ったものらしく、はたと小首を傾げさせていたか。
くるりと身体を巡らせて、その視線の先にあったふたりのいかついパイロットスーツ姿に敬礼!
ただちに小走りでこれに駆け寄るのだが、風向きが変わると共に顔つきが怪訝に曇りだし、しまいは足を止めてその場に慄然と立ちすくむのだった…! かなり困惑したさまで両手を鼻に当てて言葉にも詰まる始末だ。
「ベアランド准尉! ウルフハウンド准尉どのもご無事でしたか!! 遅ればせながらただ今到着しましたっ、ん! んんっ!! んんんんんんっ…!?」
言葉とは裏腹にのけぞってもだえるようなさまの青年に、あははと鷹揚な笑いでみずから歩み寄るでかい大熊族のパイロット、ベアランドはウィンクしてその若い機械工に聞いてやる。
「あはは♡ そんなにニオウかい、このおれたちは? おまえが用意してくれたマスクしてるからあいにくわからないんだが、相当なんだな、その表情からするには♪ 役に立ってるよ、このマスク! てか、じぶんの分は用意してなかったんだな?」
「はっ、はい! おえっ…いえ、あの、このニオイは一体っ、おええっ、す、すいません!!」
鼻から手を外せないで満足な敬礼すらできないさまのリドルに、しかめツラのオオカミが横から出て同情に満ちた目線を投げかける。
「いいんだよ、無理すんな! ちょっと前までここはひでえありさまだったんだ…!! 今となってはおまえには感謝してるよ。コイツがなければオレも危うかった。ちょっとしゃべりづらいのが難点だが…そんなにニオウのか??」
青い顔でブルブルと顔を振るリドルに、マスクの中でため息つくウルフハウンドは隣でお客さんを方に担いだ相棒を見上げる。
「気分が悪いったらありゃしねえ、とっととずらかりてえよな? オレたちじゃなくてそいつがニオウんじゃねえのか??」
地元のパイロットスーツ姿の犬族を担いだ左肩をすくめさせるベアランドはあっけらかんとしたさまだ。
「五十歩百歩だよ♪ でもリドルに任せるにしてもこのニオイをどうにかしなくちゃな? それじゃあ、リドル、頼んでおいたアイツのリモコンは出来てるかい? 早速使いたいんだけど♡」
「…は、はい! それは、もちろんご用意してありますが、まだ試験しておりませんので…あの、そちらの肩に担がれている方は…」
いろんなことが渋滞して困惑することしきりの若いメカニックは目を白黒させるばかりだが、やがてみずからの整備福の胸ポケットから何かしら小型のツールらしきを取り出した。ベアランドとその肩からだらんと茶色いシッポの垂れ下がったケツを向ける知らないパイロット姿を見比べるが、利き手のそれをおそるおそるに上官へと差し伸べる。このままこの小僧をきつく抱きしめたら、一体どんな悲鳴を発するのだろうかとひそかに腹の底にわき上がるサドっ気をのど元で押しとどめるデカ熊は右手で倒れるアーマーを目で示して言った。
「ほんとにかわいいよな♡ じゃなくて、行きがかりで救助したうちの地元っ子だよ! コレって何番隊だっけ? とにかく基地まで送り返してくれよ。暴れられたりしないように、ロープとかでがんじがらめにしばってさ♡」
「そんなものはおまえがやってやれよ! そいつの細い腕じゃまともに縛れるからもわからねえっ、いや、機械いじりなんだからそのくらいはお手の物か? というかこのニオイ! あとそいつはなんだ??」
リドルから受け取った棒状のアイテムを不審げに見るオオカミに、いたずらっぽい笑みのでかいクマはそれを口元にやってにまりとした笑みを口元に浮かべる。マスクが邪魔して見えなかったが、意味深に言ってくれた。
「内緒♡ すぐにわかるよ。ちょっとしたリモートコントローラーさ♪ コイツをちょちょいといじれば、うちのでっかい相棒が…ほら!」
「…あっ、ベアランド准尉! 何を!?」
棒状のそれをおのれが乗ってきた大型のアーマーに向けるなりピピッと発信音みたいなものを鳴らすのに、廃語で慌てるリドルのさまも訝しく聞くウルフハウンドだが、見上げたアーマーがおかしなさまになるのに目玉を大きく見開いてみずからも驚きの声を発するのだった…!
「あ? なんだ、て、おいっ、なんだ、勝手にアーマーが…!!」
直後、ちょっとしたパニックが巻き起こった♡
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