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(詰んだぁぁぁ)
しおりを挟む「大変そうですね。……ずっと考えていたのですが、全部押し付けるのも悪いですし、なにか、手伝えることがあれば、手伝いますけど?」
「ぴよぴよ(私も同じ気持ち。何かできることはない?)」
「命令通りに動いてくれればそれでええ。てか、お前ら、野球の計算とかできへんやろ? これはバカにしとるとかやなくて、単純に、できるかできんかの話や。たとえば、セーフティバントの成功率で、ファースト方向・サード方向、どっちに転がせば確率が高いか、投手の利き腕では、右・左どっちの方が成功させやすいか、その確率は数値にするとどのくらいか、とか、勉強してへんから知らんやろ?」
「……そうですね。感覚的には、サードに転がせば、単純に送球の距離が遠くなるのでいいと思いますが」
「正解はファースト方向と左投げ。左投げ投手のほうが五パーほど成功しやすく、二塁手に取らせるのが成功率六割強と一番確率が高いからファースト方向が正解。理屈は単純で、左投手は捕球時の体勢が右より悪いから。で、ファースト方向にころがった球は、ベースカバーの判断と捕球を、投手・一塁手・二塁手の三人が完璧に判断せなあかんから、どっかでミスが起こる可能性が高い。サードの場合、捕ったら投げるだけ。その分、成功率はファースト方向の方が高い」
「ああ……なるほど」
「カウント別の盗塁成功率とか、球種ごとのゴロを打たせられる割合とか、単純に、速度やコースによる空振り率とか……そういう、小さなことから全部、一試合通して、なにもかもを完璧に、それも、ワシらが強豪校を相手に自然に見えるようにという条件つきで、数十試合分計算せなあかんねやで。できる自信があるんやったら、頼むから、代わってくれや。めんどくさぁてしゃーないねん」
「……つつしんで、すべて、お任せいたします」
「ぴよぴよ(申し訳ないけれど、できそうにないわね。その代わり、どんな指示にも従うと誓うわ)」
「話が早ぉて助かるわ。……はぁ」
★
家に帰ったトウシは、いつもどおり、ベッドにダイブし、
「なんで、ワシ、こんないやがらせばっかり受けてんのやろ……」
溜息がとまらない。
時折、たまらず、頭をかきむしる。
「ええかげんにせぇよ。なんやねん、三試合連続で強豪て……なんで、ワシばっかり、こんな目にあわないかんねん……もう、いやや……もうええ、ほんまに、もうええ……あぁ……辛い……苦しい……最近、それしか言うてへん……なんやねん、ワシの人生……はぁああああああ」
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