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さいごまでカッコつけてやる
しおりを挟む「デブの方は脂肪と筋力で投げているだけですけど、三分の方は、かなり優秀な投手ですよ。球の速さだけではなく、コントロールも球種も、なんというか、かなりシッカリしていました」
「そうだな。スキがない。いい感じにまとまっている。そして……全体的に……なんというか……新輝が、アカコーに調べつくされていたってイメージを抱いたな……」
「そうですね。頭のいい連中が、その頭をフルに使って、ギリギリの接戦をモノにした。そんな感じの試合でした。ま、ほとんどが三分の手柄ですけど」
「足りない力と技術は頭でカバーってか? はん……結果だけ聞いた時は驚かされたけど、実際見てみれば、なんてことはない。所詮、新輝は、二年目の新設でしかなかったってことだ。データ解析されていることは序盤で十分にわかること。不運や不確定要素や情報不足なんかにオタオタせず、どっしりと三分を攻略すれば、総力的には余裕で勝っているんだから、十分に勝てたのに、地力がないから、ズルズルと自滅して食われちまった。ふん、新設なんて、こんなもんなんだよ。金の力で質のいい中学生を集めるだけで勝てるほど、甲子園は甘くねぇ。……ま、二回戦が楽になって助かったぜ。三分程度の球じゃあ、仮にウチの打者が解析されていたとしても、抑えられることはない」
★
家に帰ったトウシは、当然のようにベッドにダイブし、
「よかった……新聞とニュースを見る限り、奇跡扱いはされとるけど、不審がられてはない。大事な最初の関門、なんとかクリア……よかった、ほんま、よかった……はぁあああああ」
今ごろになって。精神的な疲労がドっと出てくる。
「でも、次は三国……もっと、うまくやらなあかん。慎重にいかな……慎重に……できるんやろうか、ほんまに……あぁ……ぅ、うぷっ……うぇ、ぉえ……げほっ、げほっ」
不幸中の幸い、朝飯と昼飯がのどを通っていなかったので、今、口から飛び出たのは、濃い胃液だけだった。
ノドがちぎれそうなほど痛いが、部屋は汚れなかった。
「あぁ……つらい……つらい……つらい」
何度も口にすることで自分を慰める。そんなことしかできない。
「でも……やるしかない。最後の最後までカッコつけな……」
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