異世界最強の賢者~二度目の転移で辺境の開拓始めました~

夢・風魔

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18-とてとてと歩くハムスター

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「よぉしよしよし。そこを動くなよ」
『メエェー』

 ダークエルフの長老から教えて貰った、物々交換に使える物とは──。

「"蜘蛛の糸スパイダー・ネット"」
『メッ』

 動物だった。

 クロイス村の後ろに連なる山々には、山羊、猪、鶏、牛、兎、馬など、いろいろな動物が生息していた。
 それぞれどの辺りに生息しているのかという情報も、ダークエルフたちはしっかりと管理。
 というのも、山羊や牛の乳を探すために生息地域を把握しておく必要があったからだ。

 山羊は比較的、村に近い山に生息していた。
 こいつらが断崖絶壁を好む。
 確かに村のすぐ後ろの山は切り立った崖が多い。
 そこを北に行くと、しばらくなだらかな丘が続き、ここに野生の牛や馬が暮らしているという。

 まずは山羊から捕獲開始だ。

 浮遊で崖まで上がり、俺を見て逃げようとする山羊に蜘蛛の糸を投げ込む。
 絡まって崖から落ちそうになったところで、抱き上げて地上まで下ろす。
 下では縄を用意した村人が待っているので、あとは彼らに任せて次の獲物だ。

「ケンジさん。あんたよくこんな大物を、軽々と持ち上げるもんだな」
「まぁ軽くはないですが、このぐらいならなんとか。俺の友人なんて、ドラゴンの尻尾を掴んで振り回す奴がいますから」

 勇人と一騎だ。
 あの二人は体力馬鹿で、正直付いて行けない。
 俺は賢者だ。魔法が使えるだけのひ弱な人間なんだ──異世界に召喚されて半年ぐらいした頃かなぁ。二人にそう話したのは。
 するとあの馬鹿どもから、体を鍛えろっていろいろ付き合わされて。
 もうね、死ぬかと思ったよ。

 まぁそのおかげで人並みの体力と筋力はついたかなー。比較対象の『一般人』をほとんど知らないけれど。

 先ほどの崖に浮遊し、捕まった仲間を心配して残っていた山羊たちに蜘蛛の糸を投げる。
 お、今度は雌のようだ。さっきのは角が長かったし、雄だろう。
 これで繁殖も可能だが、出来ればまだまだ捕まえておきたい。

 雌を地上へと下ろすと、残った山羊も全て捕まえた。





 二時間かけて24頭捕獲。
 これ以上は世話をするのが大変になるため中止した。

「じゃあ次は山羊を閉じ込めておく為の壁だな」
『我の出番か?』
「勘が良いな。頼むよハ、ベヒモス」
『……むきゅう……』

 とてとてと歩くハムスターベヒモスは、どことなく諦めた表情だった。
 村の西に森と畑がある。なので家畜を飼うのは村の東側だ。

 小屋や柵はまだ用意できていないので、ひとまず土の壁で囲うことにした。
 その壁の外側に頑丈な柵を、ゆっくりでいいから作ればいい。

「山羊は高い所が好きなようだし、真ん中あたりに小山を作ってくれないか?」
『ならそこから外に飛び出さぬよう、囲いの面積を大きく取るぞ』
「あぁ、任せるよ」

 そうして出来上がった壁の内側は、だいたいテニスコート六面分ぐらいだろうか。
 真ん中には高さ縦横5メートルほどの十字の形をした壁が立っていた。

 あとは山羊たちをこの中に入れて──

『メエェェッ』
『ンメェーッ』
『ンバァーッ』

 なんか一匹変な声で鳴くやつがいる……と、とりあえず中に入れよう。
 全て入れ終えたら、あとは出入口になっている部分を土で塞ぐだけ。
 その都度ノームに頼んで出入口を開いて貰わなきゃならないので、ここに一匹常駐させておこう。

 昼までに山羊の小屋をいつものように、丸太を組んで建て、そこに藁の代わりになる柔らかい草を敷く。
 この草はドライアドお勧めのものだ。西の森に生えているので、午前中のうちに村人に刈って貰ったものだ。

「山羊さん、気に入ってくださいますかね」
「気に入ってくれなきゃ困るが……」
「お、見ろ。あの角の大きな雄が小屋に入ったぞ」

 セレナとクローディアは、万が一に備えて、草刈り中の村人の護衛をお願いしていた。
 昼から俺は鶏を探しにいくので、また草は必要になる。
 家畜が揃うまで、しばらく別行動だ。

 雄が一頭小屋に入ると、それを合図に他の山羊たちも続々と小屋へ入っていく。
 どうやらあいつが群れのリーダーのようだな。
 雌は乳しぼりに必要だが、雄は繁殖用を残してそのうち捌くことになるだろう。

 乳が絞れればチーズが作れるようになる。シチューの類もだ。
 そこに卵が加われば、マヨネーズも夢じゃなくなる!
 小麦が揃えばパンにケーキもだ。

「食材が揃って来たら、セレナの手料理もますます楽しみだな」
「ほ、本当ですか! ふっふっふ」
「くっ。ボ、ボクだって料理ぐらい!!」
「お。クローディアも得意なのか? じゃあ昼は君に任せてみるか?」
「……お、おう!」

 気のせいだろうか。今一瞬、間があった気がする。

 セレナの家の調理器具、竈を使ってクローディアが料理。
 俺とセレナがもやしの収穫をし終えて戻ると、家の中は真っ黒な煙が充満!?

「なっ、なにが起こったんだ!?」
「きゃーっ。い、家がぁっ」
「"風の精霊シ──あぁっ。まだ契約していないんだったぁぁっ。ま、窓だっ。窓を全部開けるんだっ」

 追えとセレナがばたばたする中、煙の奥ではクローディアの声が聞こえてきた。

「で、出来た」

 彼女はそう一言呟き、煙の中から現れる。
 その顔はダークエルフでもそこまで黒くないだろってほど真っ黒で、すっかり煤だらけだ。

 なんとか家の中の煙を全部外に出せたが、これは水拭き掃除しなきゃダメだな。

「おい、出来たぞ!」

 クローディアが嬉しそうに駆け寄って来る。
 その手には煤だらけの木皿と、真っ黒い塊が。

「炭? いや、料理を頼んだはずなんだが。炭から作って火を起こす予定だったのか?」
「す、すみ……ちがっ」

 何かを言おうとしたクローディアだが、突然ビクリと体を震わせ始めた。
 その時、俺の背後でセレナの「うふふふふふふふふ」という声が聞こえていた。

 結局、収穫したばかりのもやしを薄切り肉とさっと炒め、ふかし芋と一緒に昼食とする。

「じゃあ鶏を探してくるから、草刈りのほうを頼むよ」
「はい。頑張ってくださいね! 卵があったら、お料理のレパートリーも増えますから!」
「あぁ。期待してるし、期待して待っててくれ」

 クローディアはセレナの家を真っ黒にしてしまったことを反省しているようで、少し落ち込んでいた。
 心配ない。家のことはクラーケンと、新たに契約したブラウニーに任せてあるから。
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