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1章
第──2
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結論から言うと、空気清浄ではどうしようもないだろこれ!!
慌てて木によじ登り、兎が登って来れないことを確認できてホッとしているのが今。
一応、大ジャンプを警戒してかなりの高さまで登っては見たものの、兎もじっと見上げて離れる気はないらしい。
どうすんだこれ?
あれがただの兎ならいい。
だけど角があって目が血走ってて二足歩行で、あと1メートル以上の大きさなんだよ。
可愛くもないし、むしろシュールで怖い。
そのうち諦めてどこか行くだろう。
そう祈りながら、巨木の上で待った。
30秒おきに空気清浄を発動させ、常に浄化された空気を満たしておく。
鼻はまだむずむずするが、それでも垂れてくるほどではない。
くしゃみの咳もすっかり治まり快適だ。地面で待ち構える兎さえいなければな。
「あぁ、俺。いつまでこうしているんだろう」
そうして夜になり、スキルの上書きも必要なのもあって一睡もできず。
朝になり、見下ろす先には兎が二羽になっていた。
「なんで増えるんだよお前ら!」
『ギュウゥゥゥッ』
『ギュルルゥゥ』
俺だって腹が減ってきゅるきゅる鳴ってるさ。
どうせ登るなら実の付いた木に登ればよかった。
そう思って周りを見渡すが、木の実を付けていそうなのは見当たらない。
そもそも木々が生い茂りすぎてて、奥のほうまで全然見えないから仕方ない。
「けほっ。おっと、"空気清浄"」
あいつら仕留めて、あとは火があれば食べられるかもしれない。
火? どうやって起こす。
仕留める? どうやって?
俺の鞄──リュックは親切にも残しておいてくれたが、武器になるような物なんて持って来ていない。
今日は終業式だし、そもそも刃物なんて持ち歩いてたらヤバいっての。
まぁシャーペンを目に突き刺せれば倒せるかもしれない。
でもその前にこっちがやられそう。
一応リュックを確認してみると……何も入ってない……。
いや、なんか目の前に浮かんだ。
ゲームでよく見る、所持したアイテムの一覧表みたいな?
おいおい、ひと様のリュックを勝手に魔改造しないでくれ。どうやって使うんだよこれ。
空気師。せめて空気操作とか、そんなスキルだったら良かったのに。
空気中の成分を操作して、温度も弄れたりすれば……。
ま、無い物を強請っても仕方がない。
俺にできることは空気を清浄化させることだけだ。
そういえば、一晩中スキルを使っていたけれど……スキルレベルとかって上がるのか?
ステータスの見方は昨日、魔術師のじーさんが話していた。
オーソドックスに『ステータスオープン』で見ることが出来る。
SF映画で見るようなホログラムモニターが浮かび、そこにステータスは表示される。
「お、空気清浄のスキル、レベル3になってるじゃないか!」
レベルが3になって、効果時間は1分30秒に。
長くなった!
だが90秒では眠れない……。
使えば使うだけレベルが上がるなら、効果が切れる前にじゃんじゃんスキルを使えばいいんじゃないか?
連続使用しても疲れるようなこともなかったし。
「ならじゃんじゃん使うか! "空気清浄"──"空気清浄"──」
数十秒おきにスキルを使い、たまにステータスを確認。
ただ空腹はどうにもならない。
次第にお腹が空きすぎて気分が悪くなり、スキルの発動も効果時間が切れる直前にかけなおすに留まってしまう。
木の下の兎の数はいつの間にか五羽に増えていた。
そうして夜が訪れ、空気清浄のスキルレベルは4になったものの、効果時間は2分。
たった2分で眠れるはずもない。まして眼下には兎が十羽近くにまで増え、恐ろしくてうたた寝すらできなかった。
再び朝が来て、空腹と睡眠不足、そして恐怖で俺の意識は途切れそうになっていた。
眠れば死ぬ。
だけど眠らなければ死ぬ。
いや、その前に空腹で死ぬのか?
小山の奴隷契約を蹴ったまではいいが、こんなことになるぐらいなら……。
いや、これでいいんだ。
奴の奴隷になるぐらいなら、ここで足掻いて、それで死んだ方がまだマシだ。
ギリギリまで生きてやる。
「"空気……清浄"」
俺が欲しくてやまなかった、アレルギーとは無縁の暮らし。
それが手に入るはずだったのになぁ。
視界が歪み、そろそろ俺の意識も限界が近づいていた。
「"空気……清浄"」
これが最後なのかな。
「あぁ……空気……うめぇ」
ぽぉっと浮かんだ緑色のシャボン玉。それを掴もうと手を伸ばすと、そこに何かが触れた。
「そのスキルで狂うことなく正常でいられたのか」
声がして、それは女の子のもので。
でもここにはクラスの女子は誰もきていなかったはず。
「だ……れ……」
「シェリル、この人死にそう」
「お腹を空かせているだけ。まだ死にはしないわ」
女の子は二人?
とにかく人がいた。助かるかもしれない。
意識が朦朧とするなか必死に手を伸ばす。
助かりたい。
死にたくない。
腹が減った。
口をぱくぱくさせ、そこにあるモノを貪った。
「く……うき……おいし……」
「は? 何言ってんの、こいつ」
その瞬間、俺の意識は完全に沈んだ。
慌てて木によじ登り、兎が登って来れないことを確認できてホッとしているのが今。
一応、大ジャンプを警戒してかなりの高さまで登っては見たものの、兎もじっと見上げて離れる気はないらしい。
どうすんだこれ?
あれがただの兎ならいい。
だけど角があって目が血走ってて二足歩行で、あと1メートル以上の大きさなんだよ。
可愛くもないし、むしろシュールで怖い。
そのうち諦めてどこか行くだろう。
そう祈りながら、巨木の上で待った。
30秒おきに空気清浄を発動させ、常に浄化された空気を満たしておく。
鼻はまだむずむずするが、それでも垂れてくるほどではない。
くしゃみの咳もすっかり治まり快適だ。地面で待ち構える兎さえいなければな。
「あぁ、俺。いつまでこうしているんだろう」
そうして夜になり、スキルの上書きも必要なのもあって一睡もできず。
朝になり、見下ろす先には兎が二羽になっていた。
「なんで増えるんだよお前ら!」
『ギュウゥゥゥッ』
『ギュルルゥゥ』
俺だって腹が減ってきゅるきゅる鳴ってるさ。
どうせ登るなら実の付いた木に登ればよかった。
そう思って周りを見渡すが、木の実を付けていそうなのは見当たらない。
そもそも木々が生い茂りすぎてて、奥のほうまで全然見えないから仕方ない。
「けほっ。おっと、"空気清浄"」
あいつら仕留めて、あとは火があれば食べられるかもしれない。
火? どうやって起こす。
仕留める? どうやって?
俺の鞄──リュックは親切にも残しておいてくれたが、武器になるような物なんて持って来ていない。
今日は終業式だし、そもそも刃物なんて持ち歩いてたらヤバいっての。
まぁシャーペンを目に突き刺せれば倒せるかもしれない。
でもその前にこっちがやられそう。
一応リュックを確認してみると……何も入ってない……。
いや、なんか目の前に浮かんだ。
ゲームでよく見る、所持したアイテムの一覧表みたいな?
おいおい、ひと様のリュックを勝手に魔改造しないでくれ。どうやって使うんだよこれ。
空気師。せめて空気操作とか、そんなスキルだったら良かったのに。
空気中の成分を操作して、温度も弄れたりすれば……。
ま、無い物を強請っても仕方がない。
俺にできることは空気を清浄化させることだけだ。
そういえば、一晩中スキルを使っていたけれど……スキルレベルとかって上がるのか?
ステータスの見方は昨日、魔術師のじーさんが話していた。
オーソドックスに『ステータスオープン』で見ることが出来る。
SF映画で見るようなホログラムモニターが浮かび、そこにステータスは表示される。
「お、空気清浄のスキル、レベル3になってるじゃないか!」
レベルが3になって、効果時間は1分30秒に。
長くなった!
だが90秒では眠れない……。
使えば使うだけレベルが上がるなら、効果が切れる前にじゃんじゃんスキルを使えばいいんじゃないか?
連続使用しても疲れるようなこともなかったし。
「ならじゃんじゃん使うか! "空気清浄"──"空気清浄"──」
数十秒おきにスキルを使い、たまにステータスを確認。
ただ空腹はどうにもならない。
次第にお腹が空きすぎて気分が悪くなり、スキルの発動も効果時間が切れる直前にかけなおすに留まってしまう。
木の下の兎の数はいつの間にか五羽に増えていた。
そうして夜が訪れ、空気清浄のスキルレベルは4になったものの、効果時間は2分。
たった2分で眠れるはずもない。まして眼下には兎が十羽近くにまで増え、恐ろしくてうたた寝すらできなかった。
再び朝が来て、空腹と睡眠不足、そして恐怖で俺の意識は途切れそうになっていた。
眠れば死ぬ。
だけど眠らなければ死ぬ。
いや、その前に空腹で死ぬのか?
小山の奴隷契約を蹴ったまではいいが、こんなことになるぐらいなら……。
いや、これでいいんだ。
奴の奴隷になるぐらいなら、ここで足掻いて、それで死んだ方がまだマシだ。
ギリギリまで生きてやる。
「"空気……清浄"」
俺が欲しくてやまなかった、アレルギーとは無縁の暮らし。
それが手に入るはずだったのになぁ。
視界が歪み、そろそろ俺の意識も限界が近づいていた。
「"空気……清浄"」
これが最後なのかな。
「あぁ……空気……うめぇ」
ぽぉっと浮かんだ緑色のシャボン玉。それを掴もうと手を伸ばすと、そこに何かが触れた。
「そのスキルで狂うことなく正常でいられたのか」
声がして、それは女の子のもので。
でもここにはクラスの女子は誰もきていなかったはず。
「だ……れ……」
「シェリル、この人死にそう」
「お腹を空かせているだけ。まだ死にはしないわ」
女の子は二人?
とにかく人がいた。助かるかもしれない。
意識が朦朧とするなか必死に手を伸ばす。
助かりたい。
死にたくない。
腹が減った。
口をぱくぱくさせ、そこにあるモノを貪った。
「く……うき……おいし……」
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その瞬間、俺の意識は完全に沈んだ。
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