ゴミスキル『空気清浄』で異世界浄化の旅~捨てられたけど、とてもおいしいです(意味深)~

夢・風魔

文字の大きさ
16 / 52
1章

第──16

しおりを挟む
 ニキアスさんと別れて二日。
 俺たちの目指す町オヌズが見えてきた。
 街道を歩けばモンスターに襲われることは少ないと、ニキアスさんは言っていたが。
 実際にはこの二日の間に、両手で少しだけ足りないほどの戦闘回数があった。
 嘘つきめ。

 ただまぁ、空気操作の実践訓練にはなった。
 街道周辺に出るモンスターは森に生息するモンスターよりは弱く、使い慣れないスキルの練習にはもってこいだ。

「あらぁぁ。町はもうすぐだというのに、こんな所にも魔物が出るのですねぇ」
「出るけどアレ、雑魚じゃない」
「ベビーゴブリンだ! 試させてくれ!」

 ベビーゴブリン。別にゴブリンの赤ん坊じゃない。
 見た目がゴブリンとほど同じだけど、身長がゴブリンよりもうちょい小さく、そして弱い。
 肌の色が緑のゴブリンに対し、こっちは青緑といった感じ。
 一応まったく別物だ。
 頭が悪いので身の程を知らず、なりふり構わず襲ってくる。

「"空気操作"──」

 成分を弄れる範囲は、スキルレベルが上がって3メートル四方の立方体になった。レベルは今3。
 この範囲は動かすことができない。これが難点の一つだ。

 まずは操作可能範囲の空気温度を100度に上げる。最大温度は150度だ。

『アギッ』
『アジジッ』
「暑いを通り越して熱いよな。次、"空気操作"」

 あっつい空気空間まで来たベビーゴブリンは、突然の熱さに後ずさる。
 焼けるような喉の痛みに咽るベビーゴブリン。
 ひとしきり咳込んだあと、やることはといえば──そう、大きく息を吸うこと。

 空気操作は一度の複数の成分操作ができないが、連続使用はできた。
 二つ目の空気操作で、俺は最初に操作範囲から数十センチだけ後ろにずらした位置に高濃度のクロロメタン地帯を作った。

 そう。
 今ベビーゴブリンたちが深呼吸しているあの辺り、3メートル四方に有毒ガスが充満しまくっている。
 クロロメタンは吸い込むと中枢神経ってところがやられ、高濃度のガスを吸えば麻痺、昏睡状態に。
 で、四匹が倒れた。

 うぅん。範囲が狭いから小型のベビーゴブリンでもぎっしり密集でもしてくれなきゃ、一度に倒せやしないな。

 仲間が何もされていない(ように見えるだけ)のにバタバタと倒れるのを見て、ベビーゴブリンが狼狽える。
 そこにシェリルが炎の矢を放つ。

 クロロメタンって、可燃性なんだよなぁ──って、

「あぶっ!」

 俺がその場でしゃがむのと同時に、クロロメタン地帯が爆ぜた。
 倒れていたベビーゴブリンも、狼狽えていた奴らも、まとめで吹き飛ぶ。

 うん。距離があったからよかったものの……。

「火気厳禁! あぶないからマジで!」
「だって空のそのスキル。即死効果ないじゃない」
「そうだけど。でも危ないから!」
「そうよシェリル。せめてノームに土盾を立てて貰ってからにして」
「分かったわよ、もう」

 その土盾とやらは俺の前にも立ててくれますかね?
 




 うぅん。ガスを充満させて発火させるのが、確かに火力としては高いよなぁ。
 ただそうなると、爆発の威力がこっちにまで飛んでくるのが怖い。
 そういうのも空気操作で防げたりしないものかなぁ。

 そんなことを考えていると、あっという間に町へと到着した。

「必要な物を買ったら、今日は町の宿に泊まりましょう」
「そうね。それがいいですわね」

 と、二人は楽しそうだ。
 町に入ってからずっと、あちこちキョロキョロして浮かれているようだった。

 森の外に出るのは初めてだって言ってたし、町が楽しいんだろうな。

「じゃあ買いものついでにいろいろ見て回ろうか。俺もこっちの店とか、いろいろ見てみたいし」
「「賛成」です」
「その前に、これまで蓄えてたモンスターの素材を売りに行かなきゃな。ニキアスさんは冒険者じゃなくても、ギルドで素材を買い取って貰えるって言ってたし。まずはギルドを探そう」

 背中のリュックは某猫型ロボットのような、異次元に繋がっているかのような仕組みになっていて、アイテムボックスとして使えた。
 ただモンスターから剥ぎ取った素材を直接入れるのは、中が汚れるんじゃないかと心配で布に包んで入れてある。
 重くはないが、腐って臭わないかが心配。
 リュックの仕様検証もしなきゃならなかったなぁ。

 歩きながら人に聞き、そのたびにリシェルとシェリルに注目が集まる。
 エルフはやっぱり珍しいようだ。
 リシェルもシェリルも森から出たことがないと言っていたし、里の他のエルフもそうなんだろう。
 人間の生活圏を動き回っているエルフの絶対数が少ないってことだな。

 見つけた冒険者ギルドはコンビニぐらいの大きさの建物で、中に入ると十数人の冒険者っぽい人とギルド職員だろうなぁという人が数人。
 分からないので空いているカウンターに行って、素材を売りたいのだと説明する。

「冒険者登録をなさっている方ですか?」
「あ、いえ。そのうちしようとは思っているのですが、今は時間がないので買い取りだけお願いします」
「畏まりました。ではお売りする素材をお見せください」

 受付嬢とでもいうのかな。見た目は俺とそう変わらない年齢で、眼鏡をかけた可愛い子だ。
 可愛いんだけど、リシェルとシェリルに見慣れた俺にとって、それ以下でも以上でもない。
 ただ可愛い子だ。

 俺の目も肥えてしまったようだ。

「どう、かなさいましたか?」
「あ、いえ。素材ですね、これ全部お願いできますか?」

 この世界にもアイテムボックスは存在する。魔法アイテムで、かなり高価な品物だとニキアスさんは言い、彼も持っていた。
 高価なものをポイっと出してくるあたり、さすがだ……。
 だから俺も特に隠すことなく、リュックから次々に素材を取り出した。

 道中で得た素材。
 森で浄化の散歩をしていた時に得た素材。
 ぜーんぶ持って来た。

 どんどんどんどんカウンターに積み上げていく素材を見ながら、眼鏡の受付嬢が背後の扉に向かって「うえぇん、マスター」と半泣きしながら叫んでいた。
 
しおりを挟む
感想 98

あなたにおすすめの小説

人生初めての旅先が異世界でした!? ~ 元の世界へ帰る方法探して異世界めぐり、家に帰るまでが旅行です。~(仮)

葵セナ
ファンタジー
 主人公 39歳フリーターが、初めての旅行に行こうと家を出たら何故か森の中?  管理神(神様)のミスで、異世界転移し見知らぬ森の中に…  不思議と持っていた一枚の紙を読み、元の世界に帰る方法を探して、異世界での冒険の始まり。   曖昧で、都合の良い魔法とスキルでを使い、異世界での冒険旅行? いったいどうなる!  ありがちな異世界物語と思いますが、暖かい目で見てやってください。  初めての作品なので誤字 脱字などおかしな所が出て来るかと思いますが、御容赦ください。(気が付けば修正していきます。)  ステータスも何処かで見たことあるような、似たり寄ったりの表示になっているかと思いますがどうか御容赦ください。よろしくお願いします。

学校ごと異世界に召喚された俺、拾ったスキルが強すぎたので無双します

名無し
ファンタジー
 毎日のようにいじめを受けていた主人公の如月優斗は、ある日自分の学校が異世界へ転移したことを知る。召喚主によれば、生徒たちの中から救世主を探しているそうで、スマホを通してスキルをタダで配るのだという。それがきっかけで神スキルを得た如月は、あっという間に最強の男へと進化していく。

幼馴染達と一緒に異世界召喚、だけど僕だけ別な場所に飛ばされた先は異世界の不思議な無人島だった。

アノマロカリス
ファンタジー
よくある話の異世界召喚… スマホのネット小説や漫画が好きな少年、洲河 愽(すが だん)。 いつもの様に幼馴染達と学校帰りの公園でくっちゃべっていると地面に突然魔法陣が現れて… 気付くと愽は1人だけ見渡す限り草原の中に突っ立っていた。 愽は幼馴染達を探す為に周囲を捜索してみたが、一緒に飛ばされていた筈の幼馴染達は居なかった。 生きていればいつかは幼馴染達とまた会える! 愽は希望を持って、この不思議な無人島でサバイバル生活を始めるのだった。 「幼馴染達と一緒に異世界召喚、だけど僕の授かったスキルは役に立つものなのかな?」 「幼馴染達と一緒に異世界召喚、だけど僕は幼馴染達よりも強いジョブを手に入れて無双する!」 「幼馴染達と一緒に異世界召喚、だけど僕は魔王から力を授かり人類に対して牙を剥く‼︎」 幼馴染達と一緒に異世界召喚の第四弾。 愽は幼馴染達と離れた場所でサバイバル生活を送るというパラレルストーリー。 はたして愽は、無事に幼馴染達と再会を果たせるのだろうか?

40歳のおじさん 旅行に行ったら異世界でした どうやら私はスキル習得が早いようです

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
部長に傷つけられ続けた私 とうとうキレてしまいました なんで旅行ということで大型連休を取ったのですが 飛行機に乗って寝て起きたら異世界でした…… スキルが簡単に得られるようなので頑張っていきます

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

やさしい異世界転移

みなと
ファンタジー
妹の誕生日ケーキを買いに行く最中 謎の声に導かれて異世界へと転移してしまった主人公 神洞 優斗。 彼が転移した世界は魔法が発達しているファンタジーの世界だった! 元の世界に帰るまでの間優斗は学園に通い平穏に過ごす事にしたのだが……? この時の優斗は気付いていなかったのだ。 己の……いや"ユウト"としての逃れられない定めがすぐ近くまで来ている事に。 この物語は 優斗がこの世界で仲間と出会い、共に様々な困難に立ち向かい希望 絶望 別れ 後悔しながらも進み続けて、英雄になって誰かに希望を託すストーリーである。

祝・定年退職!? 10歳からの異世界生活

空の雲
ファンタジー
中田 祐一郎(なかたゆういちろう)60歳。長年勤めた会社を退職。 最後の勤めを終え、通い慣れた電車で帰宅途中、突然の衝撃をうける。 ――気付けば、幼い子供の姿で見覚えのない森の中に…… どうすればいいのか困惑する中、冒険者バルトジャンと出会う。 顔はいかついが気のいいバルトジャンは、行き場のない子供――中田祐一郎(ユーチ)の保護を申し出る。 魔法や魔物の存在する、この世界の知識がないユーチは、迷いながらもその言葉に甘えることにした。 こうして始まったユーチの異世界生活は、愛用の腕時計から、なぜか地球の道具が取り出せたり、彼の使う魔法が他人とちょっと違っていたりと、出会った人たちを驚かせつつ、ゆっくり動き出す―― ※2月25日、書籍部分がレンタルになりました。

異世界に転移したら、孤児院でごはん係になりました

雪月夜狐
ファンタジー
ある日突然、異世界に転移してしまったユウ。 気がつけば、そこは辺境にある小さな孤児院だった。 剣も魔法も使えないユウにできるのは、 子供たちのごはんを作り、洗濯をして、寝かしつけをすることだけ。 ……のはずが、なぜか料理や家事といった 日常のことだけが、やたらとうまくいく。 無口な男の子、甘えん坊の女の子、元気いっぱいな年長組。 個性豊かな子供たちに囲まれて、 ユウは孤児院の「ごはん係」として、毎日を過ごしていく。 やがて、かつてこの孤児院で育った冒険者や商人たちも顔を出し、 孤児院は少しずつ、人が集まる場所になっていく。 戦わない、争わない。 ただ、ごはんを作って、今日をちゃんと暮らすだけ。 ほんわか天然な世話係と子供たちの日常を描く、 やさしい異世界孤児院ファンタジー。

処理中です...