ゴミスキル『空気清浄』で異世界浄化の旅~捨てられたけど、とてもおいしいです(意味深)~

夢・風魔

文字の大きさ
33 / 52
2章

第──33

しおりを挟む
「"光の精霊! 明るく照らしてっ"」

 リシェルの声が森に木霊する。
 その声に応えるかのように、小さな光の玉がいくつも飛んで行った。
 そしてパチパチと点滅していた辺りをいっきに照らす。

『ゲギャッ』
『グゲーッ』

 うん?
 見覚えのあるベビーゴブリンだが、大きいか?

「ゴブリンだわっ」

 シェリルの声を聞いて、なるほどと頷く。
 こっちが本家本元のゴブリンだってことか。
 身長は俺の頭二つ分ほど低い程度で、胴に対して手足が細い。装備は腰ミノか。

「だけどあのゴブリン……ずいぶん大きいですね」
「俺には十分小さく見えるけどな。それより毛玉を助けよう」

 剣を抜きつつ「"空気操作"」と唱え、左手で範囲を決める。

 ゴブリンは5匹。それが地面の毛玉を襲おうとして円陣を組むように立っていた。
 好都合だな。
 
 毛玉を巻き込まないよう、操作範囲の高さ調節をして──二酸化炭素濃度を、今できる最大濃度に!

『ゲギャッ──ガッ』
『ンガガッ』
『フギーッ!?』

 おぅおぅ、パニックになってやがる。
 パニックになればなるほど、人は呼吸する速度が上がる。まぁあいつら人じゃないけど、呼吸して生きてるし同じだろう。
 あとやっぱりオツムが足りてないようだ。

 その場でじたばたするばかりで、逃げようとかそういう思考はないのか。
 少し移動すれば酸素あるんだけどなぁ。

 スキルの効果時間60秒を待って、それが切れる頃には4匹が地面に倒れていた。
 毛玉が報復とばかりパチパチしているのが見える。
 残る一匹も意識朦朧状態。
 駆けて行って俺が剣で仕留め──る前に、シェリルの弓に倒れてしまった。

「俺の出番……」
「で、出番あったじゃない!」
「カッコいいところ見せたかったのに」
「い、いいじゃない! い、いつだってカ、カッコいいわよっ」

 ……なにそれ。物凄く嬉し恥ずかし。
 倒れた4匹は念のために止めを刺しておこう。首のところをザクっとやれば、まぁ呆気なく死ぬ。

『ぎ……ぎゅい……』
「おっと、毛玉、大丈夫か?」

 地面でもぞもぞ動く毛玉に手を伸ばすと、何故か毛玉はその手を避けた。
 毛が汚れている。少し赤い染みも。
 けどそれより……。

「お前、大きくなったのか?」

 30センチほどだった毛玉が、ちょっとだけ大きくなっている気がする。
 それを聞いて毛玉がビクりと震えた。

「毛玉。俺たちを探しに牧場まで来たのか? ごめんな、すれ違いになったみたいで。さ、怪我を治してもらおう」
『きゅうぅぅ』

 まるで初めて畑で見かけた時のように、弱々しくなっている毛玉。
 何かあったのか?
 いや、こんな暗い森でゴブリンに襲われたんだ。怖かったんだろう。

 避けようとする毛玉を無理やり捕まえ、抱き上げてリシェルの所へと向かった。

「リシェル、回復頼む」
「あ、はい……あれ? パチパチ、少し大きくなってますか?」
「成長期なんだろ? 怪我してるから頼む」
「分かりました」

 毛玉の治癒をする間にシェリルが死んだゴブリンを確認していた。

「これ、変異体だわ」
「変異体?」

 腕の中の毛玉がもぞりと動く。

「こら、暴れるなっ。シェリル、変異体って?」
「……瘴気を吸い込んだ動物は、変異してモンスターになるって話したわよね」
「あぁ。人も狂ったりするんだろ?」
「えぇ、そう。でもおかしくなるのは、なにも人や動物だけじゃないの」

 まさかモンスターもか!?
 瘴気はそもそも、全ての生命に対して害にしかならない。それはモンスターに対しても。

「例外として、悪魔種族やアンデッドには影響ありません。それに瘴気を吸ってモンスター化した動物にも。耐性ができてしまうので」
「だけど瘴気を吸ってモンスター化した動物の寿命は短いわ。肉体が瘴気に耐えきれず、内側から腐って死んでしまうから」
「うへぇ……」
「それは普通のモンスターにも言えることなんです。瘴気をたくさん吸えば確かに肉体が強化され、狂暴性が増します。けれど──」

 そう長くは生きられない。
 モンスターは本能でそれを知っているから、好んで瘴気の中に留まろうとはしないらしい。
 たとえゴブリンでも、だ。

「寿命が短いって、どのくらいなんだろう?」
「森の動物が変異したものだと、一年ぐらいだったかしら」
「叔父様が言うには、体の大きなものほど長く生きれるけれど……小型のドラゴンでも五年と持たないそうです」

 その小型のドラゴンの寿命は、エルフと同じぐらい長いらしい。大型ともなれば千年以上生きているのもいるだろうって。
 普通の動物やゴブリン程度の体のサイズなら、一年生きられるかどうか。

 それが分かっていて変異するほど瘴気を吸い込む奴も、確かにいないだろう。

「それにね空。瘴気を少し吸った程度じゃ、体は変異しないわ」
「はい。せいぜい気分が悪くなる程度です」
「そう、なのか」
「そうじゃなかったらエルフの里は今頃、変異したエルフだらけよ」
「むしろ空さんがこちらの世界に来た時には、もう死滅していたでしょうね」

 まぁそれもそうか。
 じゃああいつらはよっぽど瘴気を吸い込みまくったのか?

「さ、治療は終わりました。村へ戻りましょう」
「そうね。とにかくゴブリンがいることは分かったし、戻って対策を立てたほうがいいわね」
「あぁ。こいつらが畑を荒らしていたに違いない」

 ぷるぷると震える毛玉を抱いたまま、村へと戻った俺たち。
 眠っている村長を叩き起こし森での出来事を報告すると、思いもよらない反応が返って来た。

「ゴ、ゴブリン? そんな馬鹿な。この近辺にゴブリンなんて、生息してないはず!?」

 ……だったら何故畑の見張りを依頼したあぁぁっ!?
しおりを挟む
感想 98

あなたにおすすめの小説

人生初めての旅先が異世界でした!? ~ 元の世界へ帰る方法探して異世界めぐり、家に帰るまでが旅行です。~(仮)

葵セナ
ファンタジー
 主人公 39歳フリーターが、初めての旅行に行こうと家を出たら何故か森の中?  管理神(神様)のミスで、異世界転移し見知らぬ森の中に…  不思議と持っていた一枚の紙を読み、元の世界に帰る方法を探して、異世界での冒険の始まり。   曖昧で、都合の良い魔法とスキルでを使い、異世界での冒険旅行? いったいどうなる!  ありがちな異世界物語と思いますが、暖かい目で見てやってください。  初めての作品なので誤字 脱字などおかしな所が出て来るかと思いますが、御容赦ください。(気が付けば修正していきます。)  ステータスも何処かで見たことあるような、似たり寄ったりの表示になっているかと思いますがどうか御容赦ください。よろしくお願いします。

学校ごと異世界に召喚された俺、拾ったスキルが強すぎたので無双します

名無し
ファンタジー
 毎日のようにいじめを受けていた主人公の如月優斗は、ある日自分の学校が異世界へ転移したことを知る。召喚主によれば、生徒たちの中から救世主を探しているそうで、スマホを通してスキルをタダで配るのだという。それがきっかけで神スキルを得た如月は、あっという間に最強の男へと進化していく。

幼馴染達と一緒に異世界召喚、だけど僕だけ別な場所に飛ばされた先は異世界の不思議な無人島だった。

アノマロカリス
ファンタジー
よくある話の異世界召喚… スマホのネット小説や漫画が好きな少年、洲河 愽(すが だん)。 いつもの様に幼馴染達と学校帰りの公園でくっちゃべっていると地面に突然魔法陣が現れて… 気付くと愽は1人だけ見渡す限り草原の中に突っ立っていた。 愽は幼馴染達を探す為に周囲を捜索してみたが、一緒に飛ばされていた筈の幼馴染達は居なかった。 生きていればいつかは幼馴染達とまた会える! 愽は希望を持って、この不思議な無人島でサバイバル生活を始めるのだった。 「幼馴染達と一緒に異世界召喚、だけど僕の授かったスキルは役に立つものなのかな?」 「幼馴染達と一緒に異世界召喚、だけど僕は幼馴染達よりも強いジョブを手に入れて無双する!」 「幼馴染達と一緒に異世界召喚、だけど僕は魔王から力を授かり人類に対して牙を剥く‼︎」 幼馴染達と一緒に異世界召喚の第四弾。 愽は幼馴染達と離れた場所でサバイバル生活を送るというパラレルストーリー。 はたして愽は、無事に幼馴染達と再会を果たせるのだろうか?

40歳のおじさん 旅行に行ったら異世界でした どうやら私はスキル習得が早いようです

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
部長に傷つけられ続けた私 とうとうキレてしまいました なんで旅行ということで大型連休を取ったのですが 飛行機に乗って寝て起きたら異世界でした…… スキルが簡単に得られるようなので頑張っていきます

やさしい異世界転移

みなと
ファンタジー
妹の誕生日ケーキを買いに行く最中 謎の声に導かれて異世界へと転移してしまった主人公 神洞 優斗。 彼が転移した世界は魔法が発達しているファンタジーの世界だった! 元の世界に帰るまでの間優斗は学園に通い平穏に過ごす事にしたのだが……? この時の優斗は気付いていなかったのだ。 己の……いや"ユウト"としての逃れられない定めがすぐ近くまで来ている事に。 この物語は 優斗がこの世界で仲間と出会い、共に様々な困難に立ち向かい希望 絶望 別れ 後悔しながらも進み続けて、英雄になって誰かに希望を託すストーリーである。

祝・定年退職!? 10歳からの異世界生活

空の雲
ファンタジー
中田 祐一郎(なかたゆういちろう)60歳。長年勤めた会社を退職。 最後の勤めを終え、通い慣れた電車で帰宅途中、突然の衝撃をうける。 ――気付けば、幼い子供の姿で見覚えのない森の中に…… どうすればいいのか困惑する中、冒険者バルトジャンと出会う。 顔はいかついが気のいいバルトジャンは、行き場のない子供――中田祐一郎(ユーチ)の保護を申し出る。 魔法や魔物の存在する、この世界の知識がないユーチは、迷いながらもその言葉に甘えることにした。 こうして始まったユーチの異世界生活は、愛用の腕時計から、なぜか地球の道具が取り出せたり、彼の使う魔法が他人とちょっと違っていたりと、出会った人たちを驚かせつつ、ゆっくり動き出す―― ※2月25日、書籍部分がレンタルになりました。

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

異世界に転移した僕、外れスキルだと思っていた【互換】と【HP100】の組み合わせで最強になる

名無し
ファンタジー
突如、異世界へと召喚された来栖海翔。自分以外にも転移してきた者たちが数百人おり、神父と召喚士から並ぶように指示されてスキルを付与されるが、それはいずれもパッとしなさそうな【互換】と【HP100】という二つのスキルだった。召喚士から外れ認定され、当たりスキル持ちの右列ではなく、外れスキル持ちの左列のほうに並ばされる来栖。だが、それらは組み合わせることによって最強のスキルとなるものであり、来栖は何もない状態から見る見る成り上がっていくことになる。

処理中です...