異世界転移「スキル無!」~授かったユニークスキルは「なし」ではなく触れたモノを「無」に帰す最強スキルだったようです~

夢・風魔

文字の大きさ
26 / 30

26話

しおりを挟む
 エルフの里を出発して半年が過ぎた。
 この世界での暮らしもすっかり慣れてきた頃、ある噂を耳にした。

「ブレアゾンの姫さんが召喚したって言う勇者が、城から脱走したそうだな」
「まぁ勇者として召喚されて、ただのお飾りってんだからやってらんねーだろ」
「そうかねぇ? 俺はただぼーっと突っ立ってるだけで、毎日美味い飯が食えるってんだから、いい仕事だと思うがねぇ」

 ブレアゾンブレアゾン……あぁ、あの金髪縦ロールだ。
 ってことは、脱走したのはクラスメイドだな。

「カケルのお友達も、大変みたいねー」
「そうだなぁ。あいつら、今頃どうしてるんだろう」
「脱走するぐらい、楽しくなかったのかなぁ」
「勇者様、大変なのぉ?」

 大変なのかなぁ。
 その辺り、俺は全然分からないけど。

 宿の食堂でそんな話を耳にして、なんとなく離れ離れになったクラスメイトが気になって。
 それに気づいてか、ネフィが「次はブレアゾンに行ってみる?」と提案してくれた。

 ブレアゾンは隣の国で、乗合馬車でも結構掛かる。
 行ったところで再会できるとも限らない。

 けど──

「行ってみるか」





 馬車で五日かけて、ブレアゾン王国へと入った。
 町では勇者に関する情報に耳を傾け、同時に冒険者ギルドでも話を聞いた。ついでにホットサンドメーカーの宣伝も忘れない。
 
「ホットサンドメーカードワーフ印の噂は耳にしているよ。ずいぶんいい物みたいだねぇ」
「おぉ、ついに隣の国にまで噂は広まったのか」
「生産が追い付かないようで、他のドワーフの集落でも作る手配をしているともね」

 そんなに大人気なのか。
 地球と違って機械で自動生産できる訳じゃないし、需要に対して供給が追い付くのはもっと先になりそうだな。

「それで、召喚された勇者の話か……王国から捜索隊は出ているようだけど、まだ見つかってないようだ。お前さんも報酬目当て化?」
「あー……えぇ、そんなところです」

 発見したら金一封。そんなことになってるみたいだな。
 しかし脱走するって、どんな生活を送っていたんだろう?

「あの、召喚勇者はなんで城を脱走なんか?」

 ギルドの職員に尋ねると、彼は周囲に視線を向け、それから手招きをして耳を貸せという。

「ここのお姫さんがな、隣国を挑発しすぎたのさ」
「挑発?」
「そう。なんせ十人以上も勇者を召喚できたんだ。そりゃあ鼻高々にもなるだろう」
「まさか勇者の数が多いからって、喧嘩を吹っ掛けたんですか?」
「シーッ。聞かれたらマズいだろ?」

 俺は慌てて口を閉じ、周囲に視線を向けた。
 とりあえずネフィたち以外には聞かれてないようだ。

「まぁそういう噂があるってことだ。ただ突っ立ってるだけってのも退屈だろうが、戦争に巻き込まれるとあれば……なんで異世界人の為に自分が危険な目に会わなきゃならないんだって……君ならそうは思わないかい?」

 そう尋ねられ納得する。
 戦争とは無縁な環境で育った俺たちが、人間同士の殺し合いに進んで参加するなんて考えられない。
 それが嫌で逃げた奴らがいるんだろうな。

 出来れば匿ってやりたいが、まず見つかるかどうか。

 ブレアゾン王国で三つの町を移動し、ホットサンドメーカーの宣伝をすること一カ月。
 とある町で突然冒険者に呼び止められた。

「あんたら、そのホットサンドメーカー。どこて手に入れたんだ?」
「え? これはドワーフの里で──」

 作って貰った──というのは嘘。
 もともと日本から持ってきていた奴だ。

「購入希望だったら、申し訳ないけど流通するまで待ってくれないか? 宣伝用に持ってないとダメだからさ」
「いや。ドワーフ産のものだっていうなら別に用はないんだ」

 ドワーフ産に用はない?
 じゃあどこ産ならいいって言うんだ。

「そのホットサンドメーカーをドワーフに作らせている奴を知らないか?」
「え? つ、作らせて?」
「あぁ。そいつを探しているんだ。俺たちの雇い主に頼まれてな」

 ごくり。
 その雇い主って、いったい誰なんだ?

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

キャンピングカーで走ってるだけで異世界が平和になるそうです~万物生成系チートスキルを添えて~

サメのおでこ
ファンタジー
手違いだったのだ。もしくは事故。 ヒトと魔族が今日もドンパチやっている世界。行方不明の勇者を捜す使命を帯びて……訂正、押しつけられて召喚された俺は、スキル≪物質変換≫の使い手だ。 木を鉄に、紙を鋼に、雪をオムライスに――あらゆる物質を望むがままに変換してのけるこのスキルは、しかし何故か召喚師から「役立たずのド三流」と罵られる。その挙げ句、人界の果てへと魔法で追放される有り様。 そんな俺は、≪物質変換≫でもって生き延びるための武器を生み出そうとして――キャンピングカーを創ってしまう。 もう一度言う。 手違いだったのだ。もしくは事故。 出来てしまったキャンピングカーで、渋々出発する俺。だが、実はこの平和なクルマには俺自身も知らない途方もない力が隠されていた! そんな俺とキャンピングカーに、ある願いを託す人々が現れて―― ※本作は他サイトでも掲載しています

異世界に召喚されたが「間違っちゃった」と身勝手な女神に追放されてしまったので、おまけで貰ったスキルで凡人の俺は頑張って生き残ります!

椿紅颯
ファンタジー
神乃勇人(こうのゆうと)はある日、女神ルミナによって異世界へと転移させられる。 しかしまさかのまさか、それは誤転移ということだった。 身勝手な女神により、たった一人だけ仲間外れにされた挙句の果てに粗雑に扱われ、ほぼ投げ捨てられるようなかたちで異世界の地へと下ろされてしまう。 そんな踏んだり蹴ったりな、凡人主人公がおりなす異世界ファンタジー!

石しか生成出来ないと追放されましたが、それでOKです!

寿明結未
ファンタジー
夏祭り中に異世界召喚に巻き込まれた、ただの一般人の桜木ユリ。 皆がそれぞれ素晴らしいスキルを持っている中、桜木の持つスキルは【石を出す程度の力】しかなく、余りにも貧相なそれは皆に笑われて城から金だけ受け取り追い出される。 この国ではもう直ぐ戦争が始まるらしい……。 召喚された3人は戦うスキルを持っていて、桜木だけが【石を出す程度の能力】……。 確かに貧相だけれど――と思っていたが、意外と強いスキルだったようで!? 「こうなったらこの国を抜け出して平和な国で就職よ!」 気合いを入れ直した桜木は、商業ギルド相手に提案し、国を出て違う場所で新生活を送る事になるのだが、辿り着いた国にて、とある家族と出会う事となる――。 ★暫く書き溜めが結構あるので、一日三回更新していきます! 応援よろしくお願いします! ★カクヨム・小説家になろう・アルファポリスで連載中です。 中国でコピーされていたので自衛です。 「天安門事件」

40歳のおじさん 旅行に行ったら異世界でした どうやら私はスキル習得が早いようです

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
部長に傷つけられ続けた私 とうとうキレてしまいました なんで旅行ということで大型連休を取ったのですが 飛行機に乗って寝て起きたら異世界でした…… スキルが簡単に得られるようなので頑張っていきます

世界最強の賢者、勇者パーティーを追放される~いまさら帰ってこいと言われてももう遅い俺は拾ってくれた最強のお姫様と幸せに過ごす~

aoi
ファンタジー
「なぁ、マギそろそろこのパーティーを抜けてくれないか?」 勇者パーティーに勤めて数年、いきなりパーティーを戦闘ができずに女に守られてばかりだからと追放された賢者マギ。王都で新しい仕事を探すにも勇者パーティーが邪魔をして見つからない。そんな時、とある国のお姫様がマギに声をかけてきて......? お姫様の為に全力を尽くす賢者マギが無双する!?

レベル1の時から育ててきたパーティメンバーに裏切られて捨てられたが、俺はソロの方が本気出せるので問題はない

あつ犬
ファンタジー
王国最強のパーティメンバーを鍛え上げた、アサシンのアルマ・アルザラットはある日追放され、貯蓄もすべて奪われてしまう。 そんな折り、とある剣士の少女に助けを請われる。「パーティメンバーを助けてくれ」! 彼の人生が、動き出す。

学校ごと異世界に召喚された俺、拾ったスキルが強すぎたので無双します

名無し
ファンタジー
 毎日のようにいじめを受けていた主人公の如月優斗は、ある日自分の学校が異世界へ転移したことを知る。召喚主によれば、生徒たちの中から救世主を探しているそうで、スマホを通してスキルをタダで配るのだという。それがきっかけで神スキルを得た如月は、あっという間に最強の男へと進化していく。

没落した貴族家に拾われたので恩返しで復興させます

六山葵
ファンタジー
生まれて間も無く、山の中に捨てられていた赤子レオン・ハートフィリア。 彼を拾ったのは没落して平民になった貴族達だった。 優しい両親に育てられ、可愛い弟と共にすくすくと成長したレオンは不思議な夢を見るようになる。 それは過去の記憶なのか、あるいは前世の記憶か。 その夢のおかげで魔法を学んだレオンは愛する両親を再び貴族にするために魔法学院で魔法を学ぶことを決意した。 しかし、学院でレオンを待っていたのは酷い平民差別。そしてそこにレオンの夢の謎も交わって、彼の運命は大きく変わっていくことになるのだった。 ※2025/12/31に書籍五巻以降の話を非公開に変更する予定です。 詳細は近況ボードをご覧ください。

処理中です...