転生領主の辺境開拓~転移魔法で屋敷を追放されましたが、自由にスキルリセット出来る『リカバリー』で案外元気に暮らしています~

夢・風魔

文字の大きさ
24 / 32

24:風呂って大事だよね

しおりを挟む
「"ヒール"……おぉ! 凄い、怪我が治った!!」
「そりゃあヒールだもの。治るわよ」

 綿花を摘めるだけ摘み取ると、手は擦り傷だらけだった。
 花托部分にトゲがあって、うまく綿花だけ摘ままないとそれで指を傷つけてしまう。
 採取スキルをセットして摘み取ればよかったと後で後悔したよ。もう遅いけど。

 砦まで戻ってヒールをセットし、怪我の治療をした。
 魔力が低いので何度も使えないけど、擦り傷ぐらいなら一発で治療できるようだ。

「まぁまぁ、綿花があったのね?」
「あ、ネネさん。これ、使えますよね?」
「えぇ、もちろんです。糸を紡いで、毛皮とシーツを縫い合わせましょう」
「縫う……となると、針が必要ですよね」

 針なら釣り用に使っているあれ一つしかない。
 
「大丈夫ですよ。スリーホーンの角を加工して作りますから」
「角から?」
「えぇ。砥石を使って細長く研磨して、あとは穴を開けるだけ。その穴も同じように捕捉尖らせた角で開けられるのよ」

 へぇ。なんでも自分たちで作る暮らしだからこその技術か。
 貴族の家の子として転生して、何不自由のない暮らしをしていたもんな、俺。
 それでもこうして順応できるのは、転生者ならではなんだろう。

「針加工は私がやるニャん。だからディオンさん、砥石を借りてもいいですか?」
「リリか?」
「はいニャ。素材加工っていうスキルを持っていますニャん。まだ3ニャけど」
「単純な形の物を作るなら、十分なレベルですから」

 それなら俺が──とも思ったけど、ここはやっぱりリリに頼ろう。きっとその方が彼女も喜ぶだろうし。

「あぁ、他に必要な物があったら言ってくれ。まぁこういう場所だから、手に入るかどうかの保証は出来ないけど」
「はいニャん」





「燃やした灰をお湯と混ぜ合わせます」
「ふんふん」
「あとは一晩放置なので、今日の作業はここまでなんです」
「おっと、草を燃やして終わってしまった」

 灰がしっかりお湯に溶け込むまで数時間必要なんだとか。
 残りの作業は明日。そう面倒でもないそうだ。

「そうなると、次に必要なのは風呂場だよなぁ」
「トイレの横の部屋がそうじゃないんですか?」
「トイレの横……あの何もない?」
「はい。床に排水溝とかありますし、そうだったんじゃないかなぁって思うんですけど」

 排水溝……気づかなかったな。扉を開けて何もないのを確認したらすぐ閉めてしまったし。
 言われて燭台を手にトイレの横の部屋に行ってみると、部屋の中央に向かってすごーっく微妙な傾斜が。そして中央には蓋付の排水溝が確かにある。

「でも浴槽とかないよねぇ」
「よ、浴槽って、あのお湯を貯めて中に入れるヤツですか!?」
「え、あ、う、うん。そう、だけど」

 お湯を貯めて中に入るヤツ……まぁ描写としては間違っていないけど。
 あぁ、そうか。この世界ではお風呂は高級品だったんだよな。

 前世でも当たり前のように風呂はあったし、今世でも屋敷に銭湯のような大きな風呂があった。
 でも風呂のある家庭っていうのは、富裕層だけだってじいちゃん言ってたっけ。
 というのも、浴槽にお湯を貯めるっていうのが面倒なんだ。
 各家庭に水道の蛇口なんてない。共同の井戸から水を汲んできて、それを料理に使ったりする。
 町なら銭湯があるけど、それに入るのは月に数回程度。あとタオルで体を拭くぐらいだって言っていた。
 
 でも……ずぅーっと風呂に慣れ親しんだ身としてはやっぱり欲しい。
 どうやって浴槽を造る? どうやって水を溜める? どうやって沸かす?

 問題はやまずみだよなぁ。

「ディオン、またひとりで悩んでるの?」
「あ、セリス。ごめん。石鹸が手に入るんだから、風呂が欲しいなぁと思ってさ」
「お風呂!? 贅沢ねぇ」

 やっぱり贅沢なのかなぁ。

「でも……欲しいわねぇ」
「だ、だろ!? でもさ、浴槽をどうやって作るかとか、お湯をどうやって沸かすかとか考えると、ハードル高いよなぁと思ってさ」
「井戸のお水も、足りなくなりますよね」

 ロロの言う通り、井戸の底から湧き出る水は無限ではない。
 時間をかけて湧き出してくるので、一度に大量の水を使うと、暫くの間枯渇してしまう。

「うぅーん」
「うにゃーん」
「うぅん」

 俺とロロ、そしてセリフの三人で腕組みをし、うぅーんと唸っているところへトートがやって来た。
 そして俺たちの顔を交互に覗き込み、それから──

「井戸もういっこ掘ったらいいニャよ」

 ──と言った。

 もう……いっこ……。

 ここで誰かがぽんっと手を叩く。

「そうよ! ノームがいるんですもの、井戸を掘るのなんて簡単よ!」

 とセリスが言うと、また誰かがぽんっと手を叩いた。

「だったらノームに竈造りに仕えそうな粘度とか探して貰えないですかね? 井戸の隣に竈を造れば、お湯を沸かすのも楽になるはずです!」
「そうね! 近くにあれば見つけて来てくれるわ。なくても砦から離れら場所でノームを召喚して探して貰えばいいし」

 井戸の横に竈……それなら、竈の上に浴槽を置けばどうだろう?
 五右衛門風呂みたいな感じにさ。

しおりを挟む
感想 4

あなたにおすすめの小説

【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜

一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m ✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。 【あらすじ】 神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!   そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!  事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます! カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。

家族転生 ~父、勇者 母、大魔導師 兄、宰相 姉、公爵夫人 弟、S級暗殺者 妹、宮廷薬師 ……俺、門番~

北条新九郎
ファンタジー
 三好家は一家揃って全滅し、そして一家揃って異世界転生を果たしていた。  父は勇者として、母は大魔導師として異世界で名声を博し、現地人の期待に応えて魔王討伐に旅立つ。またその子供たちも兄は宰相、姉は公爵夫人、弟はS級暗殺者、妹は宮廷薬師として異世界を謳歌していた。  ただ、三好家第三子の神太郎だけは異世界において冴えない立場だった。  彼の職業は………………ただの門番である。  そして、そんな彼の目的はスローライフを送りつつ、異世界ハーレムを作ることだった。  お気に入り・感想、宜しくお願いします。

異世界に転移したら、孤児院でごはん係になりました

雪月夜狐
ファンタジー
ある日突然、異世界に転移してしまったユウ。 気がつけば、そこは辺境にある小さな孤児院だった。 剣も魔法も使えないユウにできるのは、 子供たちのごはんを作り、洗濯をして、寝かしつけをすることだけ。 ……のはずが、なぜか料理や家事といった 日常のことだけが、やたらとうまくいく。 無口な男の子、甘えん坊の女の子、元気いっぱいな年長組。 個性豊かな子供たちに囲まれて、 ユウは孤児院の「ごはん係」として、毎日を過ごしていく。 やがて、かつてこの孤児院で育った冒険者や商人たちも顔を出し、 孤児院は少しずつ、人が集まる場所になっていく。 戦わない、争わない。 ただ、ごはんを作って、今日をちゃんと暮らすだけ。 ほんわか天然な世話係と子供たちの日常を描く、 やさしい異世界孤児院ファンタジー。

生贄にされた少年。故郷を離れてゆるりと暮らす。

水定ゆう
ファンタジー
 村の仕来りで生贄にされた少年、天月・オボロナ。魔物が蠢く危険な森で死を覚悟した天月は、三人の異形の者たちに命を救われる。  異形の者たちの弟子となった天月は、数年後故郷を離れ、魔物による被害と魔法の溢れる町でバイトをしながら冒険者活動を続けていた。  そこで待ち受けるのは数々の陰謀や危険な魔物たち。  生贄として魔物に捧げられた少年は、冒険者活動を続けながらゆるりと日常を満喫する!  ※とりあえず、一時完結いたしました。  今後は、短編や別タイトルで続けていくと思いますが、今回はここまで。  その際は、ぜひ読んでいただけると幸いです。

無能と追放された俺の【システム解析】スキル、実は神々すら知らない世界のバグを修正できる唯一のチートでした

夏見ナイ
ファンタジー
ブラック企業SEの相馬海斗は、勇者として異世界に召喚された。だが、授かったのは地味な【システム解析】スキル。役立たずと罵られ、無一文でパーティーから追放されてしまう。 死の淵で覚醒したその能力は、世界の法則(システム)の欠陥(バグ)を読み解き、修正(デバッグ)できる唯一無二の神技だった! 呪われたエルフを救い、不遇な獣人剣士の才能を開花させ、心強い仲間と成り上がるカイト。そんな彼の元に、今さら「戻ってこい」と元パーティーが現れるが――。 「もう手遅れだ」 これは、理不尽に追放された男が、神の領域の力で全てを覆す、痛快無双の逆転譚!

アワセワザ! ~異世界乳幼女と父は、二人で強く生きていく~

eggy
ファンタジー
 もと魔狩人《まかりびと》ライナルトは大雪の中、乳飲み子を抱いて村に入った。  村では魔獣や獣に被害を受けることが多く、村人たちが生活と育児に協力する代わりとして、害獣狩りを依頼される。  ライナルトは村人たちの威力の低い攻撃魔法と協力して大剣を振るうことで、害獣狩りに挑む。  しかし年々増加、凶暴化してくる害獣に、低威力の魔法では対処しきれなくなってくる。  まだ赤ん坊の娘イェッタは何処からか降りてくる『知識』に従い、魔法の威力増加、複数合わせた使用法を工夫して、父親を援助しようと考えた。  幼い娘と父親が力を合わせて害獣や強敵に挑む、冒険ファンタジー。 「カクヨム」「小説家になろう」にも掲載しています。

異世界転生したので森の中で静かに暮らしたい

ボナペティ鈴木
ファンタジー
異世界に転生することになったが勇者や賢者、チート能力なんて必要ない。 強靭な肉体さえあれば生きていくことができるはず。 ただただ森の中で静かに暮らしていきたい。

冒険者パーティから追放された俺、万物創生スキルをもらい、楽園でスローライフを送る

六志麻あさ
ファンタジー
とある出来事をきっかけに仲間から戦力外通告を突きつけられ、パーティを追放された冒険者カイル。 だが、以前に善行を施した神様から『万物創生』のスキルをもらい、人生が一変する。 それは、便利な家具から大規模な土木工事、果てはモンスター退治用のチート武器までなんでも作ることができるスキルだった。 世界から見捨てられた『呪われた村』にたどり着いたカイルは、スキルを使って、美味しい料理や便利な道具、インフラ整備からモンスター撃退などを次々とこなす。 快適な楽園となっていく村で、カイルのスローライフが幕を開ける──。 ●表紙画像は、ツギクル様のイラストプレゼント企画で阿倍野ちゃこ先生が描いてくださったヒロインのノエルです。大きな画像は1章4「呪われた村1」の末尾に載せてあります。(c)Tugikuru Corp. ※転載等はご遠慮ください。

処理中です...