転生魔王は全力でスローライフを貪りたい

夢・風魔

文字の大きさ
15 / 35

第十五話

しおりを挟む
「な、何事ですか!?」

 慌てて飛び出してきたメガネくん――コルトナは、吹っ飛んで倒れている冒険者たち・・・・・を見て目を丸くする。

「カミキさん、これはどういう……」
「あぁーっとその……この者たちがだな、フェミアのことを……スケベェな目で見ていたから、つい手が滑って」

 ワンパンした。
 殴った相手はひとりだが、そいつが他の仲間たちを絡めて吹っ飛んだのだ。
 だから余の暴行罪はひとり分であって、残り四人は事故である。
 というのをコルトナに説明した。

「頭痛か、コルトナ」
「えぇ……頭痛いですね」
「そうか。さっきの解熱剤の薬草が効くんじゃないのか?」
「ありがとうございます。後で飲んでおきますねって違うでしょう!!」

 なんだ違うのか。

「確かに彼らは素行が悪く、女癖の方もかなりアレだとは聞きます。しかしBクラスの冒険者なんですよ!」
「Bクラス?」

 三年生か?

「Bクラスともなると、この町でも数少ない有能な人材なんですよ!」
「有能にしては俺のワンパンで――」
「いったいあなたのステータスはどうなっているんです。魔術師ではなかったんですか!?」

 ぬっ。いかん、鑑定する気か?
 と思ったが、あ、違う? 鑑定スキルを持っていない?
 なるほど一安心。

「こっちに来てください。鑑定スキル持ちの職員の所へ案内しますから」
「いや、案内されなくていいぞ?」
「さっきも言いましたが、この町は森に囲まれています。森の中にはモンスターも多数生息しています。そしてモンスターは時折出てきて人を襲います。ここの冒険者にはそういった有事に、町の防衛を担って貰っているんです。彼らが動けない間、あなたには責任を取ってもらいますからねっ」
「そんな……俺のスローライフ……」
「知ったこっちゃありません!」

 コルトナに引きずられギルドの中へ。後ろからはフェミアが着いてきている。

 余のステータスはあの時のままだ。といっても実際の能力値ではなく、鑑定結果に映し出される数値がそうなっているというだけだ。
 あの時はとにかく追放されるための理由が欲しかったので、最底辺にしてある。
 それをそのまま見られたら、魔法を使っていることも、奴らをワンパンしたことも、いろいろ不自然さがあり過ぎる。

 慌てて書き換えねば。

 あーして、こーして……。

「ラウラさん。このカミキさんの鑑定をお願いします。ファイブスターナイツの皆さんに重傷を負わせたので、彼らが復帰するまでの間、代わりに働いて貰おうと思いましてね」
「え、あのファイブスターナイツをですか?」
「あいつらファイブスターナイツというのか?」
「パーティー名です。恥ずかしい名前だってのは重々承知していますのでつっこまないでください」

 どこか遠い目をするコルトナに変わり、ラウラという女性職員が余を鑑定する。
 可視化されて浮かび上がるステータスはこうだ。


 カミキ ユウト:人間 18歳
 職業:魔術師

 力強さ:D / 頑丈さ:D
 素早さ:C / 魔力:B

 習得スキル
 全魔法


 慌てていたので、とりあえず元のステータスからムゲンを削除し、職業と種族の余計な部分、固有スキルを削除した。
 スキルに関しては、個別に書き出すと面倒なのでこのままにしておいた。

「習得スキルが全魔法って……どういうことなの?」
「カミキさん、これはいったい……」
「あぁ……広く浅く……みたいな。彼らをワンパンしたのも、ほれ、"筋力増強《マッスルパワー》"を使って――」

 更に相手の防御力を下げ、こちらの攻撃を一度だけ二倍にする魔法を……とまぁ、無理やりな説明をする。
 
「頭痛か、二人とも」
「そのネタはいいです。とにかくまずまず有能そうで安心しました。ではカミキさん――」

 森からモンスターが出てきて、見張りの兵たちが取り逃がした場合、見張り塔の鐘が鳴る。
 鐘の音が聞こえる方角に、当番の冒険者は駆け付けモンスターを倒す。
 当番というのは、通常はパーティー単位で当番を決め、三日交代で町に常駐しなければならないそうだ。
 余の場合、家があそこなので自宅待機でも構わないと言う。

「もちろん近隣の農家が襲われても助けに向かってください」
「ぉう……随分と働かされるんだな。で、いつ当番なのだ?」
「今日からです」
「……今日からか」
「えぇ。彼らは今日から三日間、町に常駐するスケジュールでしたから」

 今から木を伐採して家財道具と交換して貰おうと思ってたのに……なんてことだ!





 フェミナと馬車で自宅へと戻ってきた余は、ゴブリンのお土産を片手に家の裏手へ。

 ――え? 木を伐採して家具を? 別にいいですよ。鐘が聞こえたらすぐに走って貰えば。

 というコルトナの言葉を受け、さっそく作業に取り掛かった。

「フェミア。お前、耳はいいんだろ?」
「う」
「じゃあ鐘の音が聞こえたら教えてくれ。まぁ早々鳴ることもないだろうがな」

 そして手斧を構える。
 振りかぶる。
 ジーンっという衝撃が手首に伝わり、痛い。

「はっはっは。忘れていた、"筋力増強《マッスルパワー》"」

 この肉体は日本人男児としてのそれである。
 貧弱ではないが、強靭でもない。
 付与《バフ》無しでの力仕事は辛いな。
 まぁそのうち鍛え抜かれたガチムキになりそうではある。

「さぁもういっちょ行くぞ!」
「あう!」
「何、客がきた? そういえばコルトナが言っていたな。余ひとりで当番させるのは可哀そうだから、助っ人となるパーティーを呼んでやるつ。あとで余の家に向かわせるとかなんとかも――はぁっ!」

 思い切り手斧を振りかぶると、スコ――――ンという音と共に、木が傾き始めた。

 余の家に向かって。

「ああぁぁぁっ」
「あぅああぁぁっ」
『ヒヒーンッ』
「きゃあぁぁぁっ」
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

異世界召喚されたけどスキルが地味だったので、現代知識とアイテムボックスで絶品料理を作ったら大商会になっちゃいました

黒崎隼人
ファンタジー
手違いで剣も魔法もない異世界に召喚された、しがない日本のサラリーマン、湊カイリ。 彼に与えられたのは、無限に物が入る【アイテムボックス】と、物の名前が分かる【鑑定】という、あまりにも地味な二つのスキルだけだった。 戦闘能力は皆無。途方に暮れるカイリだったが、異世界の食事が絶望的に不味いことを知り、大きなチャンスに気づく。 現代日本の「当たり前」の知識は、この世界ではとんでもない「宝」なのだと! 「醤油?味噌?そんなものがあれば、この世界の食文化はひっくり返るぞ!」 ひょんなことから出会った没落貴族の美少女・リリアナと共に、カイリは現代知識と地味スキルを駆使して屋台から商売をスタート。 絶品料理で人々の胃袋を掴み、さらには便利な生活用品を次々と発明していく。 伝説の神獣の幼体「フェン」やドワーフの鍛冶師など、頼れる仲間たちも加わり、彼らが立ち上げた「サンライズ商会」は瞬く間に大躍進! 迫り来る悪徳商会や腐敗した貴族の妨害も、現代のマーケティング術と知恵で痛快に打ち破る! これは、平凡なサラリーマンが異世界の常識を覆し、食と生活に革命を起こして一代で大商会を築き上げる、痛快成り上がりファンタジー! 美味しい料理と、もふもふな相棒、そして仲間との絆。 人生、逆転できないことなんて何もない!

辺境のスローライフを満喫したいのに、料理が絶品すぎて冷酷騎士団長に囲い込まれました

腐ったバナナ
恋愛
異世界に転移した元会社員のミサキは、現代の調味料と調理技術というチート能力を駆使し、辺境の森で誰にも邪魔されない静かなスローライフを送ることを目指していた。 しかし、彼女の作る絶品の料理の香りは、辺境を守る冷酷な「鉄血」騎士団長ガイウスを引き寄せてしまった。

【完結】スーパーの店長・結城偉介 〜異世界でスーパーの売れ残りを在庫処分〜

かの
ファンタジー
 世界一周旅行を夢見てコツコツ貯金してきたスーパーの店長、結城偉介32歳。  スーパーのバックヤードで、うたた寝をしていた偉介は、何故か異世界に転移してしまう。  偉介が転移したのは、スーパーでバイトするハル君こと、青柳ハル26歳が書いたファンタジー小説の世界の中。  スーパーの過剰商品(売れ残り)を捌きながら、微妙にズレた世界線で、偉介の異世界一周旅行が始まる!  冒険者じゃない! 勇者じゃない! 俺は商人だーーー! だからハル君、お願い! 俺を戦わせないでください!

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

ダンジョンを拾ったので、スキル〈ホームセンター〉で好き勝手リフォームします

ランド犬
ファンタジー
 異世界に転移した佐々木悠人は、召喚でも勇者でもなかった。ただ迷い込んだ先で見つけたのは、王都を望む郊外にひっそりと口を開けるダンジョン。足を踏み入れた瞬間、発動したスキルは ――〈ホームセンター〉 壁を張り替え、部屋を増やし、畑や牧場、カフェまで作れる不可思議な力だった。 気ままに始めたリフォームは、もふもふなネコミミ獣人の少女との出会いをきっかけに、思わぬ変化を呼び始める。 拡張され続けるダンジョンの先で、悠人が作り上げる“住める迷宮”とは――?

裏切られ続けた負け犬。25年前に戻ったので人生をやり直す。当然、裏切られた礼はするけどね

魚夢ゴールド
ファンタジー
冒険者ギルドの雑用として働く隻腕義足の中年、カーターは裏切られ続ける人生を送っていた。 元々は食堂の息子という人並みの平民だったが、 王族の継承争いに巻き込まれてアドの街の毒茸流布騒動でコックの父親が毒茸の味見で死に。 代わって雇った料理人が裏切って金を持ち逃げ。 父親の親友が融資を持ち掛けるも平然と裏切って借金の返済の為に母親と妹を娼館へと売り。 カーターが冒険者として金を稼ぐも、後輩がカーターの幼馴染に横恋慕してスタンピードの最中に裏切ってカーターは片腕と片足を損失。カーターを持ち上げていたギルマスも裏切り、幼馴染も去って後輩とくっつく。 その後は負け犬人生で冒険者ギルドの雑用として細々と暮らしていたのだが。 ある日、人ならざる存在が話しかけてきた。 「この世界は滅びに進んでいる。是正しなければならない。手を貸すように」 そして気付けは25年前の15歳にカーターは戻っており、二回目の人生をやり直すのだった。 もちろん、裏切ってくれた連中への返礼と共に。 

処理中です...