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第十五話
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「な、何事ですか!?」
慌てて飛び出してきたメガネくん――コルトナは、吹っ飛んで倒れている冒険者たちを見て目を丸くする。
「カミキさん、これはどういう……」
「あぁーっとその……この者たちがだな、フェミアのことを……スケベェな目で見ていたから、つい手が滑って」
ワンパンした。
殴った相手はひとりだが、そいつが他の仲間たちを絡めて吹っ飛んだのだ。
だから余の暴行罪はひとり分であって、残り四人は事故である。
というのをコルトナに説明した。
「頭痛か、コルトナ」
「えぇ……頭痛いですね」
「そうか。さっきの解熱剤の薬草が効くんじゃないのか?」
「ありがとうございます。後で飲んでおきますねって違うでしょう!!」
なんだ違うのか。
「確かに彼らは素行が悪く、女癖の方もかなりアレだとは聞きます。しかしBクラスの冒険者なんですよ!」
「Bクラス?」
三年生か?
「Bクラスともなると、この町でも数少ない有能な人材なんですよ!」
「有能にしては俺のワンパンで――」
「いったいあなたのステータスはどうなっているんです。魔術師ではなかったんですか!?」
ぬっ。いかん、鑑定する気か?
と思ったが、あ、違う? 鑑定スキルを持っていない?
なるほど一安心。
「こっちに来てください。鑑定スキル持ちの職員の所へ案内しますから」
「いや、案内されなくていいぞ?」
「さっきも言いましたが、この町は森に囲まれています。森の中にはモンスターも多数生息しています。そしてモンスターは時折出てきて人を襲います。ここの冒険者にはそういった有事に、町の防衛を担って貰っているんです。彼らが動けない間、あなたには責任を取ってもらいますからねっ」
「そんな……俺のスローライフ……」
「知ったこっちゃありません!」
コルトナに引きずられギルドの中へ。後ろからはフェミアが着いてきている。
余のステータスはあの時のままだ。といっても実際の能力値ではなく、鑑定結果に映し出される数値がそうなっているというだけだ。
あの時はとにかく追放されるための理由が欲しかったので、最底辺にしてある。
それをそのまま見られたら、魔法を使っていることも、奴らをワンパンしたことも、いろいろ不自然さがあり過ぎる。
慌てて書き換えねば。
あーして、こーして……。
「ラウラさん。このカミキさんの鑑定をお願いします。ファイブスターナイツの皆さんに重傷を負わせたので、彼らが復帰するまでの間、代わりに働いて貰おうと思いましてね」
「え、あのファイブスターナイツをですか?」
「あいつらファイブスターナイツというのか?」
「パーティー名です。恥ずかしい名前だってのは重々承知していますのでつっこまないでください」
どこか遠い目をするコルトナに変わり、ラウラという女性職員が余を鑑定する。
可視化されて浮かび上がるステータスはこうだ。
カミキ ユウト:人間 18歳
職業:魔術師
力強さ:D / 頑丈さ:D
素早さ:C / 魔力:B
習得スキル
全魔法
慌てていたので、とりあえず元のステータスから∞を削除し、職業と種族の余計な部分、固有スキルを削除した。
スキルに関しては、個別に書き出すと面倒なのでこのままにしておいた。
「習得スキルが全魔法って……どういうことなの?」
「カミキさん、これはいったい……」
「あぁ……広く浅く……みたいな。彼らをワンパンしたのも、ほれ、"筋力増強《マッスルパワー》"を使って――」
更に相手の防御力を下げ、こちらの攻撃を一度だけ二倍にする魔法を……とまぁ、無理やりな説明をする。
「頭痛か、二人とも」
「そのネタはいいです。とにかくまずまず有能そうで安心しました。ではカミキさん――」
森からモンスターが出てきて、見張りの兵たちが取り逃がした場合、見張り塔の鐘が鳴る。
鐘の音が聞こえる方角に、当番の冒険者は駆け付けモンスターを倒す。
当番というのは、通常はパーティー単位で当番を決め、三日交代で町に常駐しなければならないそうだ。
余の場合、家があそこなので自宅待機でも構わないと言う。
「もちろん近隣の農家が襲われても助けに向かってください」
「ぉう……随分と働かされるんだな。で、いつ当番なのだ?」
「今日からです」
「……今日からか」
「えぇ。彼らは今日から三日間、町に常駐するスケジュールでしたから」
今から木を伐採して家財道具と交換して貰おうと思ってたのに……なんてことだ!
フェミナと馬車で自宅へと戻ってきた余は、ゴブリンのお土産を片手に家の裏手へ。
――え? 木を伐採して家具を? 別にいいですよ。鐘が聞こえたらすぐに走って貰えば。
というコルトナの言葉を受け、さっそく作業に取り掛かった。
「フェミア。お前、耳はいいんだろ?」
「う」
「じゃあ鐘の音が聞こえたら教えてくれ。まぁ早々鳴ることもないだろうがな」
そして手斧を構える。
振りかぶる。
ジーンっという衝撃が手首に伝わり、痛い。
「はっはっは。忘れていた、"筋力増強《マッスルパワー》"」
この肉体は日本人男児としてのそれである。
貧弱ではないが、強靭でもない。
付与《バフ》無しでの力仕事は辛いな。
まぁそのうち鍛え抜かれたガチムキになりそうではある。
「さぁもういっちょ行くぞ!」
「あう!」
「何、客がきた? そういえばコルトナが言っていたな。余ひとりで当番させるのは可哀そうだから、助っ人となるパーティーを呼んでやるつ。あとで余の家に向かわせるとかなんとかも――はぁっ!」
思い切り手斧を振りかぶると、スコ――――ンという音と共に、木が傾き始めた。
余の家に向かって。
「ああぁぁぁっ」
「あぅああぁぁっ」
『ヒヒーンッ』
「きゃあぁぁぁっ」
慌てて飛び出してきたメガネくん――コルトナは、吹っ飛んで倒れている冒険者たちを見て目を丸くする。
「カミキさん、これはどういう……」
「あぁーっとその……この者たちがだな、フェミアのことを……スケベェな目で見ていたから、つい手が滑って」
ワンパンした。
殴った相手はひとりだが、そいつが他の仲間たちを絡めて吹っ飛んだのだ。
だから余の暴行罪はひとり分であって、残り四人は事故である。
というのをコルトナに説明した。
「頭痛か、コルトナ」
「えぇ……頭痛いですね」
「そうか。さっきの解熱剤の薬草が効くんじゃないのか?」
「ありがとうございます。後で飲んでおきますねって違うでしょう!!」
なんだ違うのか。
「確かに彼らは素行が悪く、女癖の方もかなりアレだとは聞きます。しかしBクラスの冒険者なんですよ!」
「Bクラス?」
三年生か?
「Bクラスともなると、この町でも数少ない有能な人材なんですよ!」
「有能にしては俺のワンパンで――」
「いったいあなたのステータスはどうなっているんです。魔術師ではなかったんですか!?」
ぬっ。いかん、鑑定する気か?
と思ったが、あ、違う? 鑑定スキルを持っていない?
なるほど一安心。
「こっちに来てください。鑑定スキル持ちの職員の所へ案内しますから」
「いや、案内されなくていいぞ?」
「さっきも言いましたが、この町は森に囲まれています。森の中にはモンスターも多数生息しています。そしてモンスターは時折出てきて人を襲います。ここの冒険者にはそういった有事に、町の防衛を担って貰っているんです。彼らが動けない間、あなたには責任を取ってもらいますからねっ」
「そんな……俺のスローライフ……」
「知ったこっちゃありません!」
コルトナに引きずられギルドの中へ。後ろからはフェミアが着いてきている。
余のステータスはあの時のままだ。といっても実際の能力値ではなく、鑑定結果に映し出される数値がそうなっているというだけだ。
あの時はとにかく追放されるための理由が欲しかったので、最底辺にしてある。
それをそのまま見られたら、魔法を使っていることも、奴らをワンパンしたことも、いろいろ不自然さがあり過ぎる。
慌てて書き換えねば。
あーして、こーして……。
「ラウラさん。このカミキさんの鑑定をお願いします。ファイブスターナイツの皆さんに重傷を負わせたので、彼らが復帰するまでの間、代わりに働いて貰おうと思いましてね」
「え、あのファイブスターナイツをですか?」
「あいつらファイブスターナイツというのか?」
「パーティー名です。恥ずかしい名前だってのは重々承知していますのでつっこまないでください」
どこか遠い目をするコルトナに変わり、ラウラという女性職員が余を鑑定する。
可視化されて浮かび上がるステータスはこうだ。
カミキ ユウト:人間 18歳
職業:魔術師
力強さ:D / 頑丈さ:D
素早さ:C / 魔力:B
習得スキル
全魔法
慌てていたので、とりあえず元のステータスから∞を削除し、職業と種族の余計な部分、固有スキルを削除した。
スキルに関しては、個別に書き出すと面倒なのでこのままにしておいた。
「習得スキルが全魔法って……どういうことなの?」
「カミキさん、これはいったい……」
「あぁ……広く浅く……みたいな。彼らをワンパンしたのも、ほれ、"筋力増強《マッスルパワー》"を使って――」
更に相手の防御力を下げ、こちらの攻撃を一度だけ二倍にする魔法を……とまぁ、無理やりな説明をする。
「頭痛か、二人とも」
「そのネタはいいです。とにかくまずまず有能そうで安心しました。ではカミキさん――」
森からモンスターが出てきて、見張りの兵たちが取り逃がした場合、見張り塔の鐘が鳴る。
鐘の音が聞こえる方角に、当番の冒険者は駆け付けモンスターを倒す。
当番というのは、通常はパーティー単位で当番を決め、三日交代で町に常駐しなければならないそうだ。
余の場合、家があそこなので自宅待機でも構わないと言う。
「もちろん近隣の農家が襲われても助けに向かってください」
「ぉう……随分と働かされるんだな。で、いつ当番なのだ?」
「今日からです」
「……今日からか」
「えぇ。彼らは今日から三日間、町に常駐するスケジュールでしたから」
今から木を伐採して家財道具と交換して貰おうと思ってたのに……なんてことだ!
フェミナと馬車で自宅へと戻ってきた余は、ゴブリンのお土産を片手に家の裏手へ。
――え? 木を伐採して家具を? 別にいいですよ。鐘が聞こえたらすぐに走って貰えば。
というコルトナの言葉を受け、さっそく作業に取り掛かった。
「フェミア。お前、耳はいいんだろ?」
「う」
「じゃあ鐘の音が聞こえたら教えてくれ。まぁ早々鳴ることもないだろうがな」
そして手斧を構える。
振りかぶる。
ジーンっという衝撃が手首に伝わり、痛い。
「はっはっは。忘れていた、"筋力増強《マッスルパワー》"」
この肉体は日本人男児としてのそれである。
貧弱ではないが、強靭でもない。
付与《バフ》無しでの力仕事は辛いな。
まぁそのうち鍛え抜かれたガチムキになりそうではある。
「さぁもういっちょ行くぞ!」
「あう!」
「何、客がきた? そういえばコルトナが言っていたな。余ひとりで当番させるのは可哀そうだから、助っ人となるパーティーを呼んでやるつ。あとで余の家に向かわせるとかなんとかも――はぁっ!」
思い切り手斧を振りかぶると、スコ――――ンという音と共に、木が傾き始めた。
余の家に向かって。
「ああぁぁぁっ」
「あぅああぁぁっ」
『ヒヒーンッ』
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