女装と復讐は街の華

筆鼬

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女装と復讐 -憧憬編(序章)-

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母さんはもう一枚、別の写真を見せてくれた。
さっきは4人で写っていたけど、今度は5人の若い母さんたちがまたお洒落で、今度は暖かそうな冬の衣装で写っていた。

見た感じ、クリスマスイブの夜の写真のようだった。写した場所は…何処かの都会っぽい感じ…。

写真の中の街は…たくさんの女の子たちと…街のネオンと…クリスマスのイルミネーションで溢れかえってキラキラと輝いてた…。


『じゃあ…次はお母さん、どーれだ?』

『ねぇ、母さん』

『…んー?』


母さんは振り返って、僕の顔を…とても不思議そうに見た。


『これ…どこで撮ったの?』

『瀬ヶ池よ』


…瀬ヶ池?って……どこ?


『あー。瀬ヶ池って言っても解らないかぁ』

『……。』


母さんは笑って『ごめんごめん』って小さく言った。


『藤浦市って言ったら解るよね』

『あー。解るよ。美波県の県庁所在地だから、それぐらいは…』

『うん。そうね』


母さんはそのまま続いて『信ちゃんは勉強熱心だから、あんまりテレビ見ないもんね』って。『だから《瀬ヶ池》って言っても解らないのは仕方ないっか』って。


『信ちゃん。藤浦市には、いくつか区があるんだけど、その中の《新井あらい区》という所の中に《早瀬ヶ池》っていう大きな街があるの』

『へぇ…』


《瀬ヶ池》とは、その《早瀬ヶ池》という街の略称らしい。


『あ!』


…って言ったすぐに、お母さんが両手を勢いよく合わせてパチン!


『ちょっと待って…探してみる』

『?』


母さんが慌てて、デジカメの写真の中から次に選んだのは…。


『見て。これ…綺麗じゃない?』

『え…凄い!確かに綺麗!どここれ!』


何処かの、もの凄く高いビルから写したんだろう超高層ビル群の夜景の写真。

高低差あるたくさんのビルが建ち並ぶ街の、数えきれない程ある窓の灯りのひとつひとつが…写真のずっと奥のその向こうまで、まるで夜空の星の全部を綺麗に…一つの大きな宝石箱に並べて飾って納めたように…月夜にひっそりと息を潜めて静かに、ずっとキラキラと…その街は輝いていた…。


『これも藤浦市の《アンプリエ》っていうね、有名な一番高いビルの中にあるお店の、とても大きな窓から撮った夜景なの。どう?綺麗でしょ』


でも、僕がその感想を言うその前に、母さんは…。


『でも、20年くらい前のデジカメで撮った写真だからね。やっぱり解像度も良くないし…この街の夜景の綺麗さが、あんまりよく分からないかな…』


母さんはそう言ったけど…僕には十分なんて言葉以上に、この街の夜景がこんなにも綺麗なんだってことは伝わってた。


『おい、風呂出たぞ。次入ってくれ』


父さんがお風呂から出て居間に顔を覗かせる。母さんは急に慌て出した。


『あ、じゃあ私入る!信ちゃんごめん。お母さんお先ね!除夜の鐘に行く前に、色々と準備したいから!』

『う…うん。いいよ。先入って』


慌てて居間から出て行くと、お母さんはまた居間に戻ってきてひょいと顔を覗かせ、パソコンの画面を指差した。


『あ!それと…さっきの5人の写真ね、お母さんは左から2番目だから。もう一回見といてー』


慌ててお風呂へと向かう母さん。

僕は母さんの言うとおり、パソコンの画面を覗き込んで、黒ぶち眼鏡をかけ直してもう一度見た。
クリスマスイブの夜の5人の写真を…じゃなくて、藤浦市の高層ビル群の夜景の写真を。


こんな大都市の街の夜は…どんな音や声が聞こえるんだろう…どんな人たちが集まって、何をしてるんだろう…僕がこんなにキラキラ輝く街の真ん中に居たら、どんなに胸が感動でドキドキすることだろう…。

…この時から《この街》は僕の憧れとなった。























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