女装と復讐は街の華

筆鼬

文字の大きさ
29 / 491
女装と復讐 -発起編-

page.13

しおりを挟む
『アンナさん…僕をこんなに綺麗にメイクしてくれて…けど、何の期待にも応えられなくて…ごめんなさい』


アンナさんは驚いた顔をした。


『え、ぁ…ううん。何も気にしないで。あなたをメイクしてて私、すっごく楽しませてもらったから』


突然、僕の目の前に白い紙片が差し出された。菊江さんから。
…これ、名刺?


『可愛いお兄ちゃん。もし思い返して、やっぱり働きたいとか、お金に困ったときは、ここに電話してちょうだい』


僕は名刺を両手で受け取った。


【おかまバー・菊次郎の夜 携帯☎︎:080…】


…菊次郎の夜…。
これって、日本文学への冒涜じゃない…?このお店の名前。
僕はこの店名に、つい一瞬イラッとしてしまった…。


『あっ、ちょっと待ってて!』


そう言いながらアンナさんは、慌ててこの特別客室を出ていくと、しばらくしてまた戻ってきた。


『念のためにね。ここの名刺も渡しておくわ』


僕はアンナさんから受け取った名刺を見た。あの読めなかったフランス語らしき美容院の名前が書いてある。


『アンナさん、この店名【cloche dorée】って、何て読むんですか?』

『あ、それね。【クローシュ・ドレ】って読むの。《金色の鐘》って意味よ』


クローシュ・ドレ…へぇ。そう読むんだ…。


『じゃ、そろそろクレンジング始めようかしら…ね』


僕は、なんだか凄く申し訳ない気分になって…そして最後に、僕の女の子顔を記憶に焼き付けておこうと、もう一度だけ鏡をじーっと見る。
鏡に映る、その申し訳なさそうな複雑な表情が…まためちゃくちゃ可愛く見えた…。


『さぁ、もう一度椅子に座って』


僕はアンナさんの顔を見てウンと頷くと、振り返って椅子に戻り座った。


『…クレンジングを始める前に…最後に一言だけ言っておくわね…』


アンナさんは僕に『メイクしたあなたの顔、ちゃんと目に焼き付けた?』と訊いてきたから『はい』と答えた。


『…私は、瀬ヶ池の女の子たちを、そりゃもう数え切れないほどメイクしてきたし、メイクした顔をたくさん見てきた…』


僕は鏡に映る、僕の横に立つアンナさんと視線を合わせた。


『…あなたは《綺麗》だとか《美人》っていう方向性では、ちょっと勝ち目はないかもしれない…』


…勝ち目?


『…だけど《可愛い》という方向性なら、あなたは…あの何千人と集まる瀬ヶ池の女の子たちのなかでも、上位の10人に入るだけのメイクルックスを持ってるわ。そう断言する。だから自信を持って』


あの、瀬ヶ池に集まる何千人というお洒落な女の子たちのなかで…上位の10人!?自信を持って!?って…マジで!?
























しおりを挟む
感想 224

あなたにおすすめの小説

入れ替わり夫婦

廣瀬純七
ファンタジー
モニターで送られてきた性別交換クリームで入れ替わった新婚夫婦の話

ビキニに恋した男

廣瀬純七
SF
ビキニを着たい男がビキニが似合う女性の体になる話

性別交換ノート

廣瀬純七
ファンタジー
性別を交換できるノートを手に入れた高校生の山本渚の物語

あべこべな世界

廣瀬純七
ファンタジー
男女の立場が入れ替わったあべこべな世界で想像を越える不思議な日常を体験した健太の話

小学生をもう一度

廣瀬純七
青春
大学生の松岡翔太が小学生の女の子の松岡翔子になって二度目の人生を始める話

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

ヤンデレ美少女転校生と共に体育倉庫に閉じ込められ、大問題になりましたが『結婚しています!』で乗り切った嘘のような本当の話

桜井正宗
青春
 ――結婚しています!  それは二人だけの秘密。  高校二年の遙と遥は結婚した。  近年法律が変わり、高校生(十六歳)からでも結婚できるようになっていた。だから、問題はなかった。  キッカケは、体育倉庫に閉じ込められた事件から始まった。校長先生に問い詰められ、とっさに誤魔化した。二人は退学の危機を乗り越える為に本当に結婚することにした。  ワケありヤンデレ美少女転校生の『小桜 遥』と”新婚生活”を開始する――。 *結婚要素あり *ヤンデレ要素あり

日本の運命を変えた天才少年-日本が世界一の帝国になる日-

ましゅまろ
歴史・時代
――もしも、日本の運命を変える“少年”が現れたなら。 1941年、戦争の影が世界を覆うなか、日本に突如として現れた一人の少年――蒼月レイ。 わずか13歳の彼は、天才的な頭脳で、戦争そのものを再設計し、歴史を変え、英米独ソをも巻き込みながら、日本を敗戦の未来から救い出す。 だがその歩みは、同時に多くの敵を生み、命を狙われることも――。 これは、一人の少年の手で、世界一の帝国へと昇りつめた日本の物語。 希望と混乱の20世紀を超え、未来に語り継がれる“蒼き伝説”が、いま始まる。 ※アルファポリス限定投稿

処理中です...