女装と復讐は街の華

筆鼬

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女装と復讐 -発起編-

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…あれから10分後。
僕は電車の中にいた。






女装した金魚が僕だとバレなかったのは良かったけど…。
大家のおばちゃんの大誤解っぷりといったら、それはそれは容赦なく凄まじかった…。

あの場から逃げてくるのに僕は必死だった…あぁ。

普段の本当の僕はもっと真面目だ。そんなんじゃない。
だから誰にも、だったなんて思われたくないんだ。






正午を過ぎた電車内。瀬ヶ池へと向かう多くの女の子らも、同じ車両に乗っている。

僕は、このしわくちゃワンピースを周りの女の子たちに見られたくない一心で、背を向けて電車の扉のほうを向き、窓から見える街の景色をじっとして眺めている…のは、このワンピースのせいにしなくても、そういやいつもの事か。

普段の土曜日のように新井早瀬駅で下車し、地下鉄に乗り換えてアンナさんの美容院へと急ぐ。







『……失礼します…』

『あ、金魚。来たわね』


美容院の玄関扉が静かにパタンと閉まった。


アンナさんは櫛を持ち、中学生だろう可愛らしい女の子の黒髪を、丁寧に優しくといて仕上げている最中だった。


『未優ちゃん、ちょっとごめんね。美佳ちゃん、代わってくれる?』

『あ、はい』


アンナさんは従業員のお姉さんと代わり、あの特別客室へと駆け込んで、僕の衣服の入った紙袋を持って出てきた。
そして僕の手に渡す。


『あと…これね』


紙袋を左手に下げた僕にアンナさんは、小さなあの巾着袋を差し出す。
僕はそれを右手で受け取った。


『秋良くんがね、今度の金曜日の夜…春華ちゃんを連れて、あなたのアパートへ行ってもいいかしら?って』

『…金曜日の夜ですか?』

『うん。金曜日の夜よ』


僕は、少し不安げに頷いた。


『…はい。分かりました』

『じゃあ、そう秋良くんに伝えておくわね』






…あれから更に15分後。

僕は本当は…美容院のあの部屋で着替えてから帰りたかったのに、僕の服やジーパンを、綺麗に畳んでわざわざ紙袋に入れてもらって、手渡されたから…またこのしわくちゃワンピースを着たままアパートへ帰ることに…。


『…来週の土曜日…このお店に来る時に、今着ているワンピースをその紙袋に入れて持ってきて。洗うから』


アンナさんには普段から色々とお世話になりっ放しだ。
だから僕はアンナさんに逆らうこととか絶対できない…。






…右をキョロキョロ。左をキョロキョロ……はぁぁ…。

大家のおばちゃんがいないことを確認し、サッとアパートの部屋へ帰宅。
さっそく紙袋の中を見ると…あー、なるほどね…。

なんとご丁寧に、クレンジングオイルとコットン、フェイスタオルまで入ってる。




























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