女装と復讐は街の華

筆鼬

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女装と復讐 -躍動編-

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観客ってさ、何か一言言う度にわあっと声が上がって、会場が盛り上がって反応が返ってくるよね。有り難いことではあるんだけど…そして今も。


『…皆さんに教えたい、今の私の1番の自慢というのは…詩織ちゃんと金魚ちゃんは、実は私の普段からの《realなお友達》だってこと』


鈴ちゃんからそれを聞いて、僕は《はっ!》として、座ったまま少し背筋がピンと伸びた。
詩織だって表情が、ゆっくりと嬉しそうな笑顔へと変わってゆく。

なんだかんだ言ったって所詮、僕らは素人。今の鈴ちゃんの発言は《鈴ちゃんの自慢》ってより《詩織と金魚の自慢》ってほうが強い。
僕らが『鈴ちゃんはrealなお友達』って言うより、鈴ちゃん本人の口からそう自慢されたほうが、何百倍も真実味と価値が増すからだ。


『先週も一緒にランチしたよね。私たち』

『…うん。へへっ♪』


詩織は凄く嬉しそうに…そして恥ずかしそうに頷いた。
それを確認してから僕もうなずく。


『けどけど…今日の詩織ちゃんと金魚ちゃんの衣装、ほんとにいいよね~。金魚ちゃんの男装衣装は凄くかっこいいし、詩織ちゃんは黒と赤ってのが凄く可愛いし~』


…今度は、みかなちゃんのこの発言から、話題はこの衣装のことに変わった。


『みんなちゃんと見た?詩織ちゃんと金魚ちゃんの背中の、カッコいいお揃いの金魚の刺繍』


更に鈴ちゃんがそのことに触れると、観客側のどこからか、女の子の高い声で「見えなかったー」って言ったのが聞こえた。


『ねぇ…金魚ちゃんと詩織ちゃん、もう1回立ってその衣装、ちょっと見せてもらえる?』

『うん、いいよ。金魚も立って』

『うん』


僕と詩織は椅子から立ち上がり、くっ付くぐらいに並んで後ろに振り向いて、改めて観客側へ背中の刺繍をまた見せる。
鈴ちゃんもみかなちゃんも、ちょこちょこと前へと移動して回り込み、観客と一緒に刺繍を見た。


「おー。お揃いー」
「刺繍カッコいいー」
「金魚のデザインの刺繍ー」

『ねー。カッコいいよねー。ねぇ、詩織ちゃんさぁ…長い後ろ髪を上げて、もう少し皆さんに良く見せてあげてくれない?』

『あ…はい。ちょっと待って』


詩織は自身のその長い後ろ髪を、左手で掻き寄せて前へ回して胸元へ垂らし、刺繍を観客にちゃんと見せた。


「うなじが白くて色っぽーい」
「後ろ姿、スタイル綺麗ー」
「詩織ちゃんのウェスト細ーい」
「羨ましーい」


観客からのその声に、詩織の後ろ姿が恥ずかしそうに、モジモジソワソワしだす。てゆうか観客…刺繍よりも気になるの、そっちなのか…。


「ーー、ーーー?」

『えっ何?ごめんなさい…今ちゃんと聞こえなかった。もう一回言って』


突然の観客からの質問。それが何を言ったのかは聞き取れなかったけど、それを鈴ちゃんが拾おうとした。


「今日の衣装はー、どこで買ったのー?」

『あー。なるほど。今のはちゃんと聞き取れました。ありがとう』


鈴ちゃんが僕らに『…で、どこで買っ…』と質問を振ろうとしたところで、詩織がキョロキョロと周りを見だした。


『これ、買ったんじゃないんだけど…秋良くーん、秋良くん?…あれ?秋良くん、ステージ下りちゃってる?』


すると秋良さんが下りたステージを落ち着いて、またゆっくりと上がってきた。そして僕らの後ろのほうで立ち止まる。


『あ…来た来た。さっき私たちの歌のギター演奏をしてくれてた、鈴木秋良くんでーす。観客さん達にちゃんと見えてるかなぁ?…秋良くん、こっちこっち。前に来てよ』


確か…最初にステージに上がったときも秋良さん、自己紹介してたとは思うけど。


「行かねーよ。いいって後ろで。つか俺の名前呼び過ぎだろ」

『きゃははは。ごめんごめん。秋良くん』


秋良さんとのやり取りは、秋良さんがマイクを持って上がってきたわけじゃなかったから、その声は観客には聞こえず僕らにしか聞こえてなかった。


「おい啓介ー!お前も上がってこい!」


秋良さんに呼ばれて、啓介さんもステージにまた上がってきた。



























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