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女装と復讐 -完結編-
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女の子のメイクをする《修行》である今のバイトを始める前までは、鈴ちゃんに何か特別な予定が入らないかぎりは毎週土曜日、定期的に鈴ちゃんとランチできてた。
けれど、このバイトを始めてからは、逆に僕のほうが忙しくなってしまって、一緒にランチする機会は今日まで一度も無かった。
『そういえば金魚ちゃん、女の子たちにメイクをしてあげるお仕事のほうは、どうなの?順調?』
僕の目の前に鈴ちゃん、詩織は僕の隣に座っている。
いつもと変わらない、3人での座り位置のパターン。
『まぁ…うん。たまに《小顔に見えるメイクを…》とか《小鼻メイクを…》とか、やったことないメイクの難しい注文を受けることはあるけど…まずまずかな。調子』
だってさ…詩織は元から小顔だし、鼻も理想的に小さくてツンとしてるし、だから普段からそういうメイクテクニックを使わないもんだから。
やったことないっていうのは、そういう理由。そういう言い訳。
『だけどメイクが上手だなんて、ほんとに凄いよねー。金魚ちゃんは…』
「…男の子なのにね」って、そこだけは周囲のお客さん達には聞こえないよう、小声で囁くように言ってくれた鈴ちゃん。
『私ね、詩織ちゃんから聞いてたの。《金魚ちゃんはメイクの天才なんだよー》って』
『えっ?いや…そんな、天才だなんて…』
そう言いながら僕は、僕の横に静かに座っていた詩織の横顔をちらりと見る。
詩織はそれに気付いて、振り向いて僕を見た。
『だってほんとに金魚って、メイク上手だし。私、嘘なんて言ってないもん…』
『私もしてほしいな…金魚ちゃんのメイク』
『…えっ!?』
僕は驚き、慌てて鈴ちゃんを見た。
『ねぇ、どうしたら私、金魚ちゃんにメイクしてもらえるの?』
鈴ちゃんのそれに、僕は何て答えたらいいのか凄く迷った。
『あ、あの…鈴ちゃん』
『大丈夫。私、ちゃんと真面目に本気で言ってるんだから』
『で、でも…いいの?ほんとに…』
鈴ちゃんが微笑んで頷く。
『うん。メイクのお願い…いい?』
…午後0時47分。ランチのラーメンを食べ終えた僕ら3人は、少し急いでナオさんの化粧品店へと戻ってきた。
『じゃあ…お化粧道具、3点以上買えばいいのね』
『あ…鈴ちゃん…』
僕は『鈴ちゃんがメイク道具を買わなくてもメイクしてあげられないか、ちょっと店長のナオさんに交渉してみる』と、そう言って店内の奥に行こうとした…。
『待って!金魚ちゃん!』
『えっ?』
『お店に入れば私だって、普通のお客さんだよ。なのに私だけが特別扱いって、良くないって思うの…』
そ…そうでした。大変ごめんなさい…。
『それにちょうど、使ってたファンデとか…他にも色々とメイク道具、無くなりかけてたし。だから大丈夫よ。お気遣いありがとうね』
けれど、このバイトを始めてからは、逆に僕のほうが忙しくなってしまって、一緒にランチする機会は今日まで一度も無かった。
『そういえば金魚ちゃん、女の子たちにメイクをしてあげるお仕事のほうは、どうなの?順調?』
僕の目の前に鈴ちゃん、詩織は僕の隣に座っている。
いつもと変わらない、3人での座り位置のパターン。
『まぁ…うん。たまに《小顔に見えるメイクを…》とか《小鼻メイクを…》とか、やったことないメイクの難しい注文を受けることはあるけど…まずまずかな。調子』
だってさ…詩織は元から小顔だし、鼻も理想的に小さくてツンとしてるし、だから普段からそういうメイクテクニックを使わないもんだから。
やったことないっていうのは、そういう理由。そういう言い訳。
『だけどメイクが上手だなんて、ほんとに凄いよねー。金魚ちゃんは…』
「…男の子なのにね」って、そこだけは周囲のお客さん達には聞こえないよう、小声で囁くように言ってくれた鈴ちゃん。
『私ね、詩織ちゃんから聞いてたの。《金魚ちゃんはメイクの天才なんだよー》って』
『えっ?いや…そんな、天才だなんて…』
そう言いながら僕は、僕の横に静かに座っていた詩織の横顔をちらりと見る。
詩織はそれに気付いて、振り向いて僕を見た。
『だってほんとに金魚って、メイク上手だし。私、嘘なんて言ってないもん…』
『私もしてほしいな…金魚ちゃんのメイク』
『…えっ!?』
僕は驚き、慌てて鈴ちゃんを見た。
『ねぇ、どうしたら私、金魚ちゃんにメイクしてもらえるの?』
鈴ちゃんのそれに、僕は何て答えたらいいのか凄く迷った。
『あ、あの…鈴ちゃん』
『大丈夫。私、ちゃんと真面目に本気で言ってるんだから』
『で、でも…いいの?ほんとに…』
鈴ちゃんが微笑んで頷く。
『うん。メイクのお願い…いい?』
…午後0時47分。ランチのラーメンを食べ終えた僕ら3人は、少し急いでナオさんの化粧品店へと戻ってきた。
『じゃあ…お化粧道具、3点以上買えばいいのね』
『あ…鈴ちゃん…』
僕は『鈴ちゃんがメイク道具を買わなくてもメイクしてあげられないか、ちょっと店長のナオさんに交渉してみる』と、そう言って店内の奥に行こうとした…。
『待って!金魚ちゃん!』
『えっ?』
『お店に入れば私だって、普通のお客さんだよ。なのに私だけが特別扱いって、良くないって思うの…』
そ…そうでした。大変ごめんなさい…。
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