女装と復讐は街の華

筆鼬

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女装と復讐 -完結編-

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ずっとさっきからだけど…僕らに雄二さんの若かった頃の話をしているアンナさんは終始、柔らかくて優しい笑顔…なんだか嬉しそうだった。


『…雄二はあの日の《G.F.》の撮影指導から帰ってきた夜、凄く上機嫌な様子で私に話してきたのよ…』


僕も詩織も、ただただ黙ってアンナさんの長い長い語りをずっと聞いてた。

アンナさんが、こんなにも話し好きだったなんて知らなかった…っていうか、こんなに話すのは《雄二さんの過去のこと》だから特別だったのかもしれないけど。


『…なぁ杏菜。今日の《G.F.》の撮影室でさぁ、そこらの小娘とは雰囲気が全然違う不思議な女の子を見付けたんだよ…って。一目見ただけで、もうその子を撮ってみたいって衝動で、俺の身体が小震えし始めて…ってね。普段は寡黙で滅多に感情をあらわにしない、あの雄二がよ…』


…それで、アンナさんが『その子は、なんて子だったの?』って訊いたら、雄二さんは『…あ、撮るのに夢中で、名前を訊くの忘れたな…そういやぁ』って。それでアンナさんが大笑いしたって。

詩織も『きゃははは。それ雄二さんらしーぃ♪』って、笑ってた。


『…結局ね、雄二は…まだ若くてプロのカメラマンとして未熟だったあの頃の自分を、見付け出して拾い上げて、お世話してくれた冴島社長に対して、何のお礼も感謝の一言も残さないまま、忽然と姿を消してしまったことに心苦しさとか後悔とか…強い負い目を感じてずっと忘れられないまま、永く密かに苦悩していたの。だけど鈴ちゃんを冴嶋社長に紹介できたことで、少しは恩返しができたかな…って』






雄二さんは、鈴ちゃんを撮影しながら、独り黙って頭の中で悶々と…。


《この娘から感じられる、この尋常じゃない清楚さと綺麗さと可愛らしさ…それにカメラを向けただけで雰囲気や表情、そしてこの落ち着きよう…既に出来上がっているんだが、どういうことだ?》

《俺がどんな写真撮りを求めてんのか、自分がそれにどう応えればカメラマンの俺が満足できるのか…完璧に理解してるっつうか…気楽に撮影できねぇ…》

《本格的な撮影とか初めてなんです…って、実はもうプロのモデルやってる娘だったりしないか?…だとしたら、俺もプロの写真家だ。このプロとしての誇りに賭けて、更に気が抜けねぇじゃねぇか…》

《これでもし本当に、まだど素人の小娘だってんなら、この子を俺が…》






…雄二さんは、東京都内での生活が長かったせいで、丹波鈴ちゃんが実は小学校の頃から既に《めちゃくちゃ可愛い子》だって地元であるこの藤浦市内では有名だったことを、全く知っていなかった…。

そして鈴ちゃんの写真が、鈴ちゃん本人には内緒で…雄二さんの手によって冴嶋社長に紹介された…。






















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