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第三話‼
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現状を理解することのできていない僕を、藤堂はもう一度強く抱きしめ直した。
いや、何抱きしめ直しちゃってんの?まずなんで抱きついてんの?
僕は体の隙間からするりと腕を抜いて藤堂の頭を掴む。
「…先に言わせてもらう、お前が悪いんだからな‼‼‼」
今までに出したことがないってレベルの声で僕は叫び、ぐいっと逸らした体を鞭のようにしならせ勢いよく額をぶつけた。
「っってぇ⁉⁉」
じんじんと僕の額が痛むのと報酬に、藤堂は悶絶しながら尻もちをついた。ずるずると動き回りながら悶えるその姿はさながら赤子の様で、思わず頬がひきつる。はぁ、と息を整え終わり、あたりを見回せば予想通り皆引いている。
だと思ったよ。もう目に見えていたオチに焦りも羞恥も感じなくなった。
僕はすくっと立ち上がり、制服を整え直し、机で茫然としている三人へ体を向けた。
「すみません。こいつの事は、もう、気にしないでいいんで…。」
へこへこと謝ると、三人も引き気味で許してくれた。本来なら、僕は謝る側でも、謝られる側でもなかったはずなのに。そう思いながら、頭を上げた。
後ろを振り向けば、不服そうに顔をしかめる藤堂が座り込んでいた。犬か。散歩行けなかった犬なのか。
思わず脳内で突っ込んでしまう。こんな奴と関わっていたら、安心して高校生活なんて送ることができない。一度藤堂の顔を見てから、僕は全力で横を通り過ぎた。
藤堂のような体の大きい男は筋肉量が違う。一歩のでかさも違うし、踏み込む強ささえも僕とは比にならない。
そんな奴相手にどう逃げ切るか。そう、先手必勝というわけだ。先に入って見つからないよう身を潜めておけば、相手は見つけるのが困難になるだろう。
あいつが追いかけてくる確率は必ずと言ってもいいと思う。僕は軽快な足取りで屋上前の踊り場まで走った。
階段を飛ぶように上り、隠れることのできるスペースを見つけ、そこへと身を隠した。ここは元々僕のお気に入りの場所だ。そうだよ、ぼっち飯だよ‼‼‼
飯を食べるときなんて、普通話さないと僕は思う。口の中は見えるし、粒は飛ぶし、何故話せるかが分からなかった。でも、そんなことを気にせず会話に花を咲かせる周りが羨ましくて仕方がない。こんな性格に育ってしまったせいか昔から友達がいなかった。ましてや好きな人も、恋人も。親の教育にも関係があるとは思う。母や父は厳しく立派な人だった。暖かい言葉こそはもらわなかったが、僕を育てるために働いている、それこそが愛の証だと分かった。
そんなことを思い返しながら、財布を開く。お札が数枚と、小銭…。
「飲み物くらい買って来ればよかったな。」
「ほんとだよな。」
「ほんとほんと……………………は?」
来るはずのない応答に違和感を覚え、口から息が漏れた。
恐る恐る上を見上げれば、ちぇ、と拗ねた顔をしている藤堂の姿。嘘だろ、何で。逃げ出そうと立った時、ガタガタと壁に立てかけられたモップが頭へと直撃した。痛みにたじろぐ僕を見て、藤堂は豪快な笑いをした。
こりゃ無理だな。逃げれやしない。観念した僕に気付いたのか、藤堂は笑うのをやめ、ひょいっと僕の隣へ座った。
こうして隣に来られると、体の差を思い知らされる。
話すことがなく、そわそわと落ち着かない様子の僕に藤堂は何かを差し出してきた。お茶だった。
「…いや、僕の分…って事?」
「え?当たり前だろ、ほら。」
戸惑う僕を置いて、藤堂はぐいっとお茶を押し付けた。優しいところもあるんだな。普段は感じない優しさにむずがゆくなり、お茶をぎゅっと握った。藤堂は、良い奴なのかもしれない。ちら、と藤堂を見てみる。
すると、目が合った。気まずくなった僕は、視線を様々な方向へと彷徨わせた。
「あー…藤堂、くん。さっきの告白、の事だけど。僕、男だし、」
かちこんだ。ものすごくかちこんだ。自分から沼に突っ込んでいる気分だ。どっ、どっ、と忙しない鼓動が耳まで響いてくる。緊張している自分を心の中で嘲笑う。すると、肩へずしりとした重みを感じた。驚いて横を見れば、藤堂が僕の肩に頭をのせていた。
…なんでこいつは、ほぼ初対面の相手にこんなことができるんだ。
寝ているわけじゃ、なさそうだけど。てか、体動かせられない。
時間もないし、かといってどかせともいえないし。どうしたもんかな。はあ、と深いため息をついた。
「…藤堂くん、昼休み終わるよ。ほら、授業とか。」
「もう少し」
「え?」
「もう少し…このままで、居させて」
さきの態度と違う藤堂に、僕はまた鼓動が早まる。経験したことのない出来事に、体がついていってないんだろう。
クマのような藤堂ではなく、幼い子供の様に僕にもだれる姿は何故か心がきゅっと痛くなった。
まぁ…、今日くらいは、授業休んでもいいか。
♦♦♦♦♦♦♦♦°˖✧
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