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第7話

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「今日は私から誘っといてなんだけど、吉沢君は探してるものとかないの?」
「いや、俺は今の所ないかな。欲しいのがあったら買う感じ」
「分かる~。衝動買いには抗えないよね。表紙買いとか絶対するしね」

 そう…おっしゃる通り表紙買いには逆らえんのです……。

 オタメイトは今日も人で溢れていた。レジにずらっと人が並んでいる様子はいつみても圧巻だ。夢の国の乗り物待機列を思い出させる。
「出てる出てる! これこれ!」
「意外だった…。女性コーナー向けに連れて行かれるかと思ってたけど、普通に男性向けの作品見るんだな」
「私どっちかと言うとこっち側だよ。言ってなかったけ?」
「今日が初耳だ」
「なら今日から覚えといてね」

 口元に手を置いてニヤニヤとしながらこっちを見てくる。何が可笑しいんだ。

「だって可愛い女の子の作品って見てて面白いじゃん? ちなみに私の推しキャラこの子ね」

 主役キャラの幼馴染で天然キャラを指さす。

「そっちか。俺はてっきりこっちかと」

 俺が示したのはもう一人の幼馴染で大和撫子キャラ。女性人気も高くて、男女ともに受けの良いキャラだ。

「私美人系よりかわいい系のキャラ好きだからさ。見てて癒されるじゃん。ほら見てよ! このポーズとか最高でしょ! リアルで欲しいよねこんな幼馴染。いたら毎日抱き着く」

 俺もオタクだから分かる。正直その気持ちは分かる。だけどその気持ちを緩みきった顔で言われると。犯罪臭がした。せっかくの綺麗な顔が台無しだ相川さん……。
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