悪役令嬢になりましたので、自分好みのイケメン近衛騎士団を作ることにしました

葉月キツネ

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Time can only move forward

第264話-私への言葉-

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 景色が渦巻いていた現象が終わった。
 長い間続いていた気もするし、思えば一瞬の出来事だったような気もする。
 さっきまでまだ明るかった空の色は黒く染まっている。私が時間を戻すように願ったのは確か夜のことだから多分巻き戻す前に戻って来た。

「ありがとう」

 感謝の言葉はお友達に向けての言葉。いつもは何か反応があるけれど、今回は戻ってこない。いや、今回だけじゃない。きっとこれからも。ずっとそばに居てくれたお友達の気配と言うか感覚の様なものは消えていた。
 代わりに感じるのはかすかな脱力感。何かが私から抜けていったとも言えるのかも知れない。

「フランソワ様。大丈夫ですか?」

 目の前には横たわっている憧れの人がいた。
 今回はフランソワ様の嫌な思いを消すためにやった事が結果としてフランソワ様を怒らせる事になってしまった。そして結末としては今に至った。
 呼吸はちゃんとしているから生きてはいる。恐らく時間が戻った事での影響なのかもしれない。

「あれ……ここは……。貴方はアリス?」
「はい、フランソワ様。覚えてらっしゃいますか?」
「えぇ……覚えてる。微かにだけど」

 記憶はやっぱり消えていない。良かった。私とフランソワ様だけが持つ時間の記憶がある。それはほのかな優越感を私に抱かせた。

「立てますか?」
「えぇ。大丈夫」

 立ち上がるとやっぱり綺麗だと改めて見惚れてしまう。同じ女性からしてもそう思えるその立ち姿は天が与えた産物だと思える。

「貴方はアリスよね」
「はい。私の我儘に付き合わせてしまってすみません」
「そう。なんとなく貴方も見えていたから覚えてる」
「なんとなく?」

 不思議な言葉の言い回しに思わず首を傾げそうになった。

「貴方に伝言があるわ。あの人から」
「あの人?」

 どこか言葉が噛み合っていない様な気がした。私とフランソワ様で認識がずれている様な。

「あの人とはどなたですか?」
「私だった人。貴方に『これからも頑張って』ですって」
「フランソワ様だった人? 何ですかそれ!」

 思わずフランソワ様に詰め寄ってしまう。

「分からないわよね。私もまだちゃんと頭の中が整理できてないの。こんな非常識な事が起こるなんて想像も出来てないのよ。貴方の時間を巻き戻すっていう友達もね」

 フランソワ様の言葉は理解出来ない。「フランソワ様だった人?」つまりさっきまで話して居たのは別の人だった? 一体何が起こっているのか分からない。

「でも今の言葉だけは早く貴方にそのまま伝えておかないといけない気がしたから言っておいた。記憶にまだしっかり残ってるうちに」
「説明してもらえないでしょうかフランソワ様」
「信じてもらえるかは分からないけどそれで良ければ……」
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