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檻に囚われ、堕とされて(6)
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「いやぁ、流石に遊び疲れたな。」
「主様、体力おばけ!?」
「おばけはお前だろう、紅塵。」
夜、大広間の淫宴は終わり、どこからともなく嬌声は聞こえるものの、瑤香宮は静かな空気に包まれていた。
「まぁ、お前と同化した時から、俺はもう人間ではないのだろう。」
他の者たちにはめられ、断罪させられかけたとき、何とか命をつないで報復するに至ったのは、この紅塵夢狐と同化したことがきっかけだった。
さらに、皇帝から将軍まで、この都にいる人々を支配し、一番自分のものにしたい人をこの瑤香宮に閉じ込めることに成功した。
瑤香宮の一角、美しい庭に囲まれた離れに赴いた双星は「入りますよ」と御簾をめくる。
「ご機嫌いかがです?師匠。」
「もうその呼び名はやめるように言っているでしょう、双星。」
蘇望雲。都の書記官たちを束ねる主録令であり、位の低い双星の才を見出した恩人である。
年齢を感じさせない美しい容姿に、双星はうっとりと彼を眺める。
「そんなところに立っていないで、中に入ったらどうです?」
「はい。」
双星は蘇望雲の部屋へと足を踏み入れる。
蘇望雲は既に準備していた茶器に手を伸ばし、手際よく茶を淹れる。そして、それを双星と紅塵へ差し出した。
「熱いので気を付けてくださいね?」
「ありがとうございます。」
「ありがとな!」
一人と一匹が嬉しそうに受け取ると、蘇望雲は微笑んだ。その慈愛に満ちた瞳に見つめられると、双星は胸が高鳴るのを感じた。
「それで?しばらく留守にしていたと思ったら、急に帰ってきて、一体何をしていたのです?」
「以前から衝突を繰り返してきた隣国を黙らせに行って参りました。師匠へのお土産もたくさんありますよ。師匠の、この……。」
蘇望雲の銀色に輝く長髪をひと房すくいあげ、双星はその髪に口づける。
「美しい御髪に似た簪を。」
「双星……っ!からかうのは止めなさい!」
蘇望雲は恥ずかしそうに双星の手を払い、顔を背けた。
「からかってなどいませんよ。師匠は世界で一番美しいのだから、それ相応の装いをしないといけないでしょう?」
「頭のおかしいことを。大体、弟子の危機を防ぐこともできなかったこの師に、そんな言葉は似つかわしくないのです。」
「師匠、もういいのです。あの時のことはもう。ねぇ?」
双星が陥れられたのは、ちょうど蘇望雲が不在の時を見計らってのことだった。蘇望雲が帰ってきた頃には、もう彼の手で収集がつかないくらいに事は進行していた。しかし、ずっと蘇望雲は双星を助けられなかったことを悔やみ続けている。
「それにあの一件がなければ、紅塵と出会うこともありませんでしたし、こうして師匠を閉じ込める後宮を作ることも叶いませんでしたので。」
「後宮……?閉じ込める?一体、何を……?」
不思議そうに聞き返す蘇望雲に、「おっと!」と双星が慌てて口をつぐんだ。
「危ない……師匠と離れすぎて、以前の“設定”のことがすっかり抜けていた……えっと、なんだっけ、紅塵……。」
「おいらが覚えているとでも?」
「だよなぁ……。」
後ろでこそこそと話し合う双星と紅塵に対し、「こら。無視をしない。」と蘇望雲がたしなめる。
「すみません、師匠。えーと、ここ最近の師匠は一体どんなお仕事を……?」
「全く、今晩の双星は不思議なことばかり言いますねぇ。以前、あなたがこの師に言ったのでしょう。“主録令として、弟子に性指導をするのが師の務めである”と。」
呆れた顔で蘇望雲が言うと、「あはは!そうでした、そうでした♡」と双星は笑った。
「見なさい。お前がいつまでもこの師のところへ来ないから、こんなに指南書が溜まってしまいました。」
「おや、これは?」
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