釣り人の異世界無双。〜釣れば釣るほど強くなるから飯テロする〜

ももるる。

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アナタが推し。

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「ん? おいおい、なんだって俺の時に無垢魂むくだまが来るんだよ」

 最高神が留守の間、御霊の業務を肩代わりしてる時の事。

 まだ死ぬには早く、汚れてもおらず、しかし信仰に篤くエネルギーを溜め込んだ特定の魂の事を無垢魂むくだまと呼ぶ。

 そう言った魂はまた信仰によって神へと力を運びやすいので、死した場合は加工して再利用するのが通例である。

 ただひたすらに白い空間。白だけが無限に広がる神域、一つの無垢魂が降って来た。

「しかもなんだ、海で溺死? よりによって海神おれの時にそれが来るかよ」

 なんの因果か、海神である俺が留守番をしてる時に海で死んだ者がやって来た。

 俺は無垢魂に力を与えて、一時的に人に戻す。死ぬ寸前までの記憶を有した精神体だ。

「…………あれ、えっ? ここは?」

「お前は死んだ」

 無垢魂の管理は不人気な仕事である。

 神への信仰を集めるために加工するのだが、その際に使う力は担当した神の持ち出し。最高神ならばいくらでも消費出来るだろうが、少なくとも自分はやりたくない。

 なぜなら力を与えた魂から得られるエネルギーは結局神々で分けられるからだ。基本的に損しかない。

 なので率直に言ってやる気がない。

「あ、あなたは……?」

 魂はどうやら日本人のようだ。自分は第■■■世界における惑星地球を担当する神なので、その点も奇遇だと言えるだろう。

 日本人特有の濃い茶色髪くろかみ濃い茶色の目くろめをした若者だ。ハイスクール、いや高校生くらいの若い魂だ。

「私は海神。お前に分かりやすく伝えるならネプチューンやポセイドンなんて言った方が良いか?」

 地球の海に関わる神への信仰は全て自分の物だから、ネプチューンやポセイドン、その他諸々の神を名乗っても間違いでは無いし、何より日本人にはこれですぐ伝わるだろう。

「神様!? え、しかも海の神様ですか!?」

 すると少年は信じられないくらいに目をキラキラさせて祈り始めた。今どきの日本人にしては珍しいくらいに敬虔な若者だ。

 正直やる気が無かったが、ここまで熱心に神へと祈るなら少しくらいは気を使ってやろうではないか。

「最高神は今、留守なのでな。お前を死に追いやった海に関する神で悪いが────」

「い、いえ! アナタで良かったです! 俺、海の神様が一番好きなので!」

 神全般に対する信仰かと思えば、なんとまさか俺に対して祈っていた。

 この空間では魂の全てが暴かれる。隠し事など出来ない。この少年はどうやら、本当に海の神を信仰してるらしい。

「そ、そうか……?」

「はい!」

 キラキラした目で見られて、正直ちょっと気分が良い。

 今どきの地球人はやれオーディンだロキだとかっこいい神ばかりを崇めたり、クトゥルフがどうとか新しい神話を紡いで信仰の系統を混乱させたりするが、俺を信仰する者は正直に言ってかなり珍しい。

 船乗りや島暮らしの漁民などからは多少の信仰を得られるが、それも習慣として祈る場合が殆ど。それでも海は規模が規模なので高位の神格を保てるが、ここまで熱心な信仰を受けるのは久しい。

「そうか、海の神が好きなのか」

「はい! アナタが推しです!」

 正直に言おう。嬉しい。

 神が神のまま対応すると人間の魂は耐えられないから、人の魂と会話出来るところまで精神レベルを下げて対応する必要があるのだが、その精神レベルで真っ直ぐに褒められると照れてしまう。

 海は命を司る。しかし基本的に残酷な場所だ。命が軽く、素早く巡るのが海である。

 人は海を愛すると同時に恐れてる。実際に海は陸生の生き物にとって恐ろしい場所であり、こんなにも真っ直ぐな好意を向けられるのは本当に珍しいのだ。

「お前は今から異世界に転生してもらう事になるが、日本人なら流れは分かるな?」

「……えと、なんかスキルとか貰えたりするんですか?」

「その通り」

 無垢魂は神にとって共有財産だ。そして無垢魂はずっと無垢魂である訳じゃない。一時的な突然変異なのである。

 だから無垢魂が無垢魂である内に更なるエネルギーを得るためには、能力を与えて加工してから転生させるのだ。

 そうする事で与えた能力で恩を売って信仰を得易く、無垢魂が無垢魂である間に最高効率でエネルギーを産める。

 その信仰の種になる力は担当者の持ち出しだからやる気が出なかったが、ここまで俺に祈ってる者を適当な能力を与えて送り出しては神の名が廃るだろう。

「お前は何故、海に祈る」

「俺は釣りが好きです。魚も好きで、見るのも食べるのも好きです」

 なるほど。こやつは釣り人なのか。だから海で事故にでもあって溺死したのか。

「陸の神には祈らんか」

「俺は海に居る方が楽しかったです。そりゃ川も湖も好きですけど、やっぱり海が好きです」

「海に殺されてもか」

「あれは運が悪かっただけです! 俺だって海で魚を釣ってるんですから、たまには逆にもなりますよ! 海は平等ですから!」

 ふむ。こやつの死因は…………、は? 小舟で釣りをしてたらクジラにぶつけられて転覆? その後サメに食われた? いやこれを溺死とは言わんだろう。資料に誤りがあるぞ。

 場所は、東京湾……? あそこ、クジラが入れるような場所だったか?

 …………あぁ、子供の迷いクジラか。なるほど、確かにこれは運が悪い。

 権能で因果を参照すると、本当に運が悪かったのだと理解した。東京湾でクジラに船をひっくり返されるってなんなのだ。悪運のジャックポットか?

 まぁ良い、よく分かった。そんな目に遭ってもまだ海を愛すると言うなら、俺も愛してやらねばならんだろう。

「決めた。お前に与えるスキルは三つ」

 一つ。海神を信仰する若者に五つの神器と二つの権能を道具として与える。

 銘は海神の七つ道具オーシャン・ギフト

 一つ。釣り上げて食し、己の血肉とした生物を精霊化して使役する力を俺の権能から作って与える。

 銘は海神の強襲オーシャン・レイド

 一つ。海神おれの術を人に扱えるレベルにまで落として与える。

 銘は海神の神術オーシャン・レア

「簡単な知識は与えておいた。さぁ行ってこい日本人、異なる世界でも海に生きてみせよ」

「はい! ありがとうございます!」

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