Blue Flame Little Girl 〜現代ダンジョンで地獄を見た幼女は、幸せに成り上がる〜

ももるる。

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大人気のナイト。

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「…………なるほど、マスコミかぁ」

「はい。あの人達、迷惑も考えないで馬鹿みたいに押し掛けてくるんで、これ以上家族に迷惑を掛けられると、殺しちゃいそうで……」

「……………まぁそうだよね。アイツらに追いかけ回されて壊れた家族なんて、たくさん居るもんね」

「はい。なので、ここでハッキリと私のことを説明して、止めて貰えないかなと……。私のお願いは要するに、『私を暴走させないで欲しい』ってことですね」

「でも、それはそれで『とくダネ! ダンジョン攻略者が起こした惨劇!』とか言って盛り上がるかもよ? アイツら馬鹿だもん」

 おおぅ、正田さんの毒舌が復活してきた。

 なるほど、これかぁ。確かにテレビでマスゴミをはっきりと「アイツら馬鹿だもん」とか言ってくれるのは気持ちいい。人気も頷ける。

「……もしそうなったら、大元ごと消し炭にします。建物ごと、一人残らず殺し尽くします。もしくはインベントリの中身を吐き出して、権力者に潰して貰います」

「……おぉ! そう、インベントリ!」

 言いたい事は大体言った。これはなるべく早く伝えたかった。そしてその後にインベントリの中身っていう私が握る一番の特ダネを晒す事で、一度印象を薄めたかったのだ。

 すぐに食い付いてくれる正田さんマジありがとうございます。もうなんか、助かりすぎて助かる。

 あの、もう、何かインベントリの中身でもプレゼントしましょうか?

「そうそうそう! みんなが気になってるフラムちゃんのインベントリ! ぶっちゃけ何が入って--……」

「--はーいストーップ! 正田さんもう質問権終わりでーす! 喋りすぎでーす! 僕より喋るの禁止でーす!」

「おいおいおいそりゃ無いでしょ! みんなも気になるでしょっ!?」

「はい気になるので他の質問者さんに託しましょーう! 次はじゃぁ、…………僕で!」

「だからお前は真ん中だろがぃ!」

 おおう、凄い。綺麗に番組の進行が元の流れに戻った。ボケと突っ込みで番組が安定した流れになった。うわぁ、凄いなぁ、これがプロかぁ。テレビ番組ってこうやって出来るんだねぇ。

 まぁべしゃりステージは十割アドリブ進行の番組なんだけどさ。

「じゃぁ次は俺かな。そのアホに任せるとあと十分はボケ倒すだろうから勝手に質問するよ」

「へい大正くんそりゃダメだよ! 僕からボケを取ったらパンツしか残らないじゃん!」

「お前は下着以外の服もボケで出来てんのかぃっ!」

「あーはいはい、お茶の間はアホのボケよりフラムさんが気になるってよ。それじゃぁ質問良いかな?」

「あ、はい。どうぞー!」

 大正と呼ばれた若い人、たぶんジョニーズかなんかの人かな? その男性に聞かれたので、司会さんをすっ飛ばして許可を出した。

「正田さんには悪いけど、インベントリについては他の人に任せるよ。これ聞いとかないとむしろ、フラムさんが可哀想だから。フラムさん、さっき殺したくないけど殺しちゃうって言ってたけどさ、それはもうどうしても止められないの? 気合いで我慢出来ない?」

「あっ、無理ですね。確実に無理です。頭の中では人殺しが悪いことだって分かってるんですけど、理性も本能も、もう家族を害する存在をモンスター扱いしちゃうんです。モンスターは殺さないとダメだって染み付いてるので」

「つまり、フラムさんはダンジョンで過ごしたトラウマで、生きるためにモンスターを殺すのと、家族の所に帰る邪魔をする存在を殺していい相手、モンスターだと認識する。それがごっちゃになっちゃうんだね?」

 言われて、ハッとした。そっか、私のこれってトラウマなのか。

「…………あ、はい。…………そっか、私のこれって、トラウマだったんですね?」

「え、気付いてなかったの?」

「……ダンジョンの中が過酷過ぎたので、殺すのが当たり前になってまして。…………あ、テレビをご覧の皆さん! 危ないのは私だけですからね! 普通のダンジョンアタッカーさん達がみんな危ない訳じゃないですからね! 変なトラウマ抱えちゃった私が危ないだけです!」

 危うく会話の運び方をミスりかけた私は、急いでランプが光ってるカメラに向かって手を振った。

 たしかレンズの上のランプが光ってるカメラが今撮影に使ってるカメラだったよね。

「はいはい、お茶の間の皆さんちゃんと覚えてね~。フラムさんは家族を守りたいだけで、普通の女の子だからね~」

「はい! 私は普通の女の子です! ただちょっと蒼く燃えちゃうだけです!」

 大正さんがフォローしてくれた。ジョニーズ所属の人がキラキラ笑顔でカメラに手を降れば、ジョニオタの皆さんは味方になってくれるんじゃないかな。

 …………いや、「大正くんと近すぎ! 何様よ!」ってキレ散らかされるかもしれない。確率は五分か。

「とまぁ、本人も事件を起こさないように手を打ってて、こうやってテレビで全部話して、最悪は悪者になる覚悟までしてるのに、これでフラムさんの家族に手を出したらもう自業自得だと思うんだよね。テレビを見てるみんな、フラムさんを嫌いにならないであげてね」

「これでフラムちゃんが叩かれて、メディアに出て来なくなったら嫌だもんな。ナイト君がもう見れなくなるくらいならマスコミが死ぬくらい気にしないよ」

「え、正田さんってナイト君のファンなんですか? …………俺もなんですよ」

「大正くん!」

「正田さん!」

 なんかヤケにフォローしてくれるなぁって思ったら、お二人はナイトのファンだったらしい。正田さんと大正さんがガシッと熱い握手を交わした。

「あ、じゃぁえっと、ナイトに会います? 今もここに居ますよ?」

「「えっ!?」」

「ナーくん、おいで」

 私はナイトに呼び掛ける。

 するとすぐに、私の体からステージの上に方に向かって蒼炎を吹き出して、私はその蒼炎の権限を半分ナイトに譲渡する。

 手網を渡されたナイトは炎を操り、そうして蒼炎が収束して、空中で私の最愛の家族を象った。

 そして形を得たナイトがシュタッとステージの真ん中へ着地して、犬として精一杯のポージングを決める。ピーンとしたちょっと海老反りポーズ。……それがナイトにとっての精一杯かっこいいポーズなんだね。可愛い。

「わんっ!」

「「ナイト君だぁぁぁぁぁああッッ!?」」

 隣に着地された司会さんはビックリして飛び退いて、私の向かい側のセットに座っていた正田さんと大正さん、それとマナちゃんに吉田さんに、名前も知らない芸人さんが三人、さらに私の隣に座ってた司会さんの相方さんも席から立ち上がってナイトにワーッと群がる。

「本物のナイト君だぁっ!」

「すごい、燃えてる! 本当に透けてて……、死んでて……」

「かわいい!」

「わんっ! わんわん!」

「待って待って泣く無理これは無理尊いっいうかマジ無理」

「ナイトちゃん!」

「わん!」

 ナイト、大人気。

 正田さんはもうボロボロ泣いてて、大正さんも涙ぐんでて、マナちゃんはとにかく可愛い可愛いと連呼しながらナイトを撫でてた。

「無理だよマジでこういうの本当に泣いちゃうんだよ動物が健気で命懸けで主人助けるとかしかもナイト君なんて本当に死んでもずっと健気でそばにいて助けてて無理無理泣くってうぐぅぅううっ」

「うっわ、正田さんがギャン泣きしてる……」

「貴重な正田の号泣シーン」

「いやでも、ほんと、動画思い出すと泣いちゃいますよねっ。私もこれはちょっと無理です。メイクが……」

 わちゃわちゃと人に揉まれながらも、嬉しそうにキャンキャン鳴いているナイトが可愛い。

 吉田さんもぐすぐすと鼻をすすって目元を指で拭う。スタイリストさんがしてくれたメイクはウォータープルーフ? っていう水に強いものらしいので、ちょっとくらい泣いても大丈夫なはずだ。 

 途中、ナイトがみんなの隙間をすり抜けて、私の元まで帰って来た。なので私はナイトを抱っこしながらステージの真ん中まで移動する。

「ナイトは人の笑ってる顔が好きなので、どうか笑ってください。ねぇナーくん?」

「わんっ!」

「あ、もしかしてナイト君って言葉とかわかる系なの?」

「はい。私のナイトはとても頭が良いんです」

「ナイト君、初めまして。大正です」

「わんっ!」

「わぁ返事してくれるぅ! 嬉しい! もう五年はテレビ出てるけど、収録してて今日が一番嬉しい日かも!」

 最終的に椅子に座る人が居なくなり、みんながステージの真ん中でわちゃわちゃしながらナイトを甘やかす事態になった。ひょっとしなくても放送事故なのでは?

 それから調子を取り戻した司会さんの進行で、ナイトも一緒に遊べるゲームが用意されてみんなで遊ぶ。

 バラエティ番組べしゃりステージ。本日の放送はこの瞬間から、ナイトに全部持って行かれた。だけど、後でお偉いさんに聞いたら、視聴率40%超えで大成功だったと喜ばれた。

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