Blue Flame Little Girl 〜現代ダンジョンで地獄を見た幼女は、幸せに成り上がる〜

ももるる。

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父の意地。

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 過酷だった。それが知れただけでも貰いは有る。

 獣や虫に食いちぎられた左手の中指、抉られた太腿、引き千切られた人の耳。

 五層で階段を出す為に使用した以外にはインベントリも使うつもりが無いから、回復薬も使えない。

 ジクジクと痛む体が、こんなにも娘は辛かったのだと教えてくれる。

 五層を超えてからは、独りだった。

 ああ、孤独だ。化け物の中に一人きり。右も左も、どこを見ても自分の命を狙うクソしか居ない。

 こんな場所から良くぞ、良くぞ帰って来てくれた。生きててくれた。

 そしてやはり、こんな場所で良くぞ、良くぞ娘を守り抜いてくれた。戦い続けてくれた。

 娘も息子も、自慢の子だ。俺には勿体無い良い子達だ。

「だから、お返ししてやらなきゃなぁ」

 覚悟はとうに済んでいる。気合いは充分、俺は銅色の門を押し開く。

 娘が後生大事に抱えてた息子の亡骸を爆散させやがった。

 俺の娘を足蹴にして骨を砕きやがった。

 娘が自棄やけになって生きる事を諦めた。その事で娘は大いに悩んでた。後ろめたいと泣いていた。

 末の子も姉を叩いた事を後悔してる。なんて馬鹿な事をしたのかと、心を病んで薬が増えた。

「許せねぇよなぁ……!? なぁ銅竜さんよォ!」

 コロシアム。コロセウム。コロッセオ。呼び方は何だって良い。銅級ダンジョンの最後に据えられた闘技場には、暴力の化身が居座ってる。

「多くは言わねぇ。娘と息子を傷付けた恨みだ……、死ぬまでお前を殴らせろ」

 吶喊とっかん

 俺の突撃に反応して威嚇しながらも即応する銅竜を見て、俺はその口の中に紅犬を召喚してやった。

 俺がこの階層まで戦い続け、学んだ事が一つ有る。それは、紅犬の最も効率が良い使い方だ。

 今の俺の魔力ならば十体以上も呼べる紅犬だが、そんなに呼んでも仕方ない。

 それよりも、巨大化と強化に魔力を注ぎ込んで一体か二体を召喚する方がモンスターを殺す上で最も魔力効率が良かったのだ。

 口の中で突然大質量が生まれて戸惑う銅竜は、しかしそのまま咀嚼して殺してやろうと顎を閉じようとする。

「せっかく会いに来たのに、早速余所見とは釣れねぇなぁ……?」

 その横っ面を、駆け付けた俺が全力でぶん殴った。

「グガァッ!?」

「るせぇ死ねッ!」

 憑依させた紅犬と召喚した紅犬。その注ぎ込んだ魔力は半々だ。

 巨大化は凄まじく魔力を食うので召喚紅犬は大して強化出来てない。しかし、「身体がデカい」と言うのはそれでけで重く、筋肉量が多くて力が強いと言う事だ。強化倍率が少なくても十分過ぎるくらいに強い。

 そして俺は、巨大化させた紅犬に比べたら小さく、筋肉量も足りない。だからこそ召喚体に使った魔力と変わらないレベルの量を自分に注ぎ込んで強化する。

 骨が軋んで筋肉がギチギチと千切れそうになるが、お陰で俺みたいな小さい存在でも大丈夫。銅竜を殴り・・飛ば・・せた・・から。

 俺が殴ったら衝撃で地面に転がり、その内に召喚された紅犬も竜の口をガゴ、バギッと押し開いて飛び出した。顎の骨が壊れて口が開いてる。

「グルァァアッ!? ァァアギィアアアッ!」

「なに勝手にキレんだコノヤロウ。キレてぇのは俺の方なんだよォッッ!」

 開幕から顎関節を壊され、横っ面を殴られてブチ切れた銅竜。しかしそんな些細な怒りとは比べ物にならない感情モノを俺は胸に抱いてる。

「俺の可愛い娘と殴り合いステゴロシたんだろ!? だったら俺とも闘ろうぜぇッ!」

 俺が強化の度合いを上げて獣に近付くと、腕や足がモサモサと毛皮に覆われていく。獣なら獣らしく、俺は爪を出して襲い掛かった。

 このダンジョンを超える。

 大人として。親として。なにより男として。

 娘がどれほど苦しんだのかを理解し、そして共感し、その背中をさすってやる為に。

 命懸けで娘を救って漢を見せた自慢の息子に、この背中を誇る為に。

 ただ、それだけの為に。

「オレはお前を殺ぉすッッ……!」

 いざ、勝負。

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