1 / 1
おばあちゃんの梅干し
しおりを挟む
お婆ちゃんはこれくらいの時期になると梅をたくさん収穫してくる。
竹籠一杯に入った梅はどれも青く甘酸っぱい匂いがした。
「美代ちゃん、茶をいっぱいくれんか?」
「分かった……冷たいやつ?」
「そうじゃ、氷も入れておくれよ」
ギィギィと軋む木目調の廊下をドダドタと大股で歩く。台所はここからさほど離れていない。透明なガラスコップに麦茶と氷をふんだんに入れた。これだけでは少し味気ない……。
「確かこの辺に……」
昨日買っておいた醤油せんべいを茶碗にいくつか盛り、お婆ちゃんに持っていった。
「おや? この匂いはせんべいか?」
「よく分かったね。見てもないのに、正解だよ」
ベランダに腰掛けお婆ちゃんは冷たいお茶を啜る。
「美味しいね~せんべいもありがとうね。少し小腹が空いていたところなんだよ」
竹籠は砂利に置かれていた。
「それにしても今年はたくさん採れたもんだね。去年より多くない?」
「んーたしかに今年は雨も少なかったし天気も良かったからね~梅の木も元気だったんだろうね」
梅のみを一つ手に取っていた。
「美代も休み……一緒にせんべいでも食べよう」
「分かったよお婆ちゃん。少し待っててね」
ゆっくりと縦に頷きお婆ちゃんは食べたくなさそうにせんべいをちまちまと齧っていた。
ギィギィ
おじいちゃんが最近直したばかりだと息巻いていたがどうやらまだ欠陥があるようだ。
冷蔵庫を開け何か甘味がないかを探す。お婆ちゃん食べにくそうだったな……。申し訳ないなと少し気分が落ち込んだ。冷蔵庫を少し漁ると羊羹があった。
「あるじゃんいいの♫」
つぶあんの羊羹をいくつか切り分け、お婆ちゃんのと私のを用意した。笹を軒先からとって皿に盛りつけ、つまようじを添えれば完成。
急須には少し緩くなった緑茶が入っている。
やはり羊羹には緑茶があう。だけど、このままでは体が熱くなってしまうかもしれない。
冷凍庫から氷をいくつか見繕いガラスコップに入れた。
急須に入っている少しぬるめの緑茶をガラスコップに注ぐ。パキパキと氷が緩やかに弾け、カランカランと夏らしい音が鳴る。
雨季に入る前だと言うのに蒸し暑いこの日にはちょうどいいくらいの音だろう。
「できた!」
お盆に羊羹と緑茶、お茶が足りなくなるといけないので急須も持ってきた。
「おや、羊羹持ってきたのかい?」
「あ、だめだった?」
「いいや、ばあちゃんもそれ出そうとしてたの」
「そうだったんだ~それなら良かった」
空になったコップを私に差し出した。
「はいはい、緑茶だけどいい?」
縦に首を振った。ゆっくりとガラスコップに緑茶を淹れてあげた。
「ありがとう」
「どういたしまして!」
お茶を啜り、羊羹を口にする。柔らかな甘みが口いっぱいに広がって美味しい。
しばらくの間二人で羊羹で舌つづみし、おやつを楽しんだ。
梅……と、つくものにはもう一つあり、梅雨かというものがある。
三時を過ぎ、雲が黒くなり始めた。
お婆ちゃんは急いで梅を家の中に隠した。
塩を振り、水気を出しつける準備を始めたのだ。
したしたと小雨が瓦を伝い雨どいに落ちる。
紫陽花が雨に濡れてその上をカタツムリが這う。
小雨が続き私はベランダで目の前にある小山をぼんやりと眺めている。
青々と茂る松枝が風に揺られて花粉を飛ばす。花粉症の人たちが見たら発狂しかねない光景だが私からしたら日常の一コマでしかない。
この年冬生まれたばかりの猫がゴロゴロと私の足元に来て頭を擦り付ける。優しく背を撫でてやれば気持ちよさそうに目を細めた。
毛が生え変わる時期ということもあり撫でた手には小さな毛がまとわりつく。手を払い毛を落とす。
台所からは紫蘇の香りがする。
去年の付け回しの汁だろうか?
「美代ちゃんばあちゃん腰痛いから手伝ってくれない?」
台所からお婆ちゃんの声が聞こえた。
「ん、分かった。今行くね」
若いバッタか青々と茂る雑草を齧っている。
重い腰を上げ、グイッと麦茶を飲み干した。
「いくか、」
台所に行くと、辛そうに梅をかき回しているお婆ちゃんがいた。
腰をさすると苦笑いして、「この腰がね~」と嘆いていた。
仕方なく、子椅子を足元に置いてあげ座るように手を差し出した。
おばあちゃんは「ありがとうね~」といい子椅子に腰を下ろすのだった。
袖をめくり、古ぼけた白いエプロンを身につける。
「まずは何をすればいいの?」
「そうだね~梅を塩漬けしたいから梅を適度に混ぜながら塩を加えてくれないかな?」
「わかった」
『伯方の塩』を取り出し、手で混ぜながら適度に塩を加える。一見簡単そうに見えるがかなりの重労働……これはお年寄りには少しきついか?
数回に分けで塩を揉み込み、適度に塩が回った。
「出来たよ?」
重い腰を上げどれどれとお婆ちゃんが桶を覗く。
「うん、これだけ混ざればいいだろうね」
いつの間にか用意されていた麦茶を半分くらいまで飲み干た。
「次は何するの?」
「次はね、紫蘇の葉をつぶしたものがあるからそれを加えてまた混ぜてくれるかな?」
「わかった」
ざるにとられた赤紫色の紫蘇の葉をちらし寿司の要領で満遍なく撒き再度腰を入れて混ぜる。
独特な紫蘇の香りが鼻腔を突き上げ変なくしゃみが出そうになった。
「おやおや? 初めはみんなそうなるよ。どれ、鼻をかんでらっしゃい」
「ご、ごめんなさい~」
手渡されたティッシュを一枚取り、つーんと鼻をかんだ。
「うげ、結構匂いきついんだね」
「だろうね、長いこと梅干しを作ってはいるけどなかなかこの匂いは慣れないよ」
優しげにお婆ちゃんは微笑み、手元に置いてあるせんべいをバリバリと食べていた。
「ねぇ、お婆ちゃん。お婆ちゃんは誰から梅干しの作り方を教えてもらったの?」
「ん~美代のひいお婆ちゃんに教えてもらったよ」
「へーそうなんだ。ひいお婆ちゃんってどんな人だったの?」
「そうかい、美代はまだ生まれてなかったものね~。ひいお婆ちゃんは強い人だったよ。たまに|蝮(まむし)何かを捕まえてきて私によく食べさせてくれたもんだよ。いやいや食べされられるものだからみんな嫌がってね~」
懐かしむようにお婆ちゃんは天井を見上げだ。
「今頃またどこかで誰かに料理を教えてるよ。多分ね」
「面倒見のいい人なんだね」
「おや? そういう解釈も出来るね~」
呆気にとられたような表情でお婆ちゃんは微笑みながら優しく笑った。
コップ一杯に注いであった麦茶を飲み干した頃。紫蘇の葉が梅全体に散らばった。
「こんなもんかな?」
少し汗ばんだ額をエプロンの裾で拭い、小さく息を吐いた。
「もう出来たのかい? 若いっていいね~」
漬物桶を覗き込み、満足げにお婆ちゃんは首を縦に振った。
「美代。ちょっとこれをこの中に入れてくれないかな?」
お婆ちゃんが蔵の中戸を開け中から何かを持ってきた。
「それ何?」
「去年つけた梅干しの残り汁みたいなもんだよ。この汁をそのつけたばかりの梅の中に入れてやるんだ。そうするといい味が出て美味しくなるんだよ」
あー、蒲焼と同じ要領かな? と私は何気なく想像していた。
「結構重いからね~気をつけるんだよ」
蔵の中からそれを取り出してきたお婆ちゃんは凄すぎるけどね。
ガラス瓶と言ってもかなり大きい物で、重さ約5キロ程度。それに中身も入れてしまうと15キロはくだらない。
それを軽々持ち上げて持ってくるお婆ちゃんは凄いよ。
「よっこらせっと」
重たすぎるガラス瓶を持ち上げ、漬物桶に汁を注ぐ。
鼻にくるつーんっとした酸っぱい匂いに顔を縮こませ、自身が梅干しになったような気分になった。
「ふぅ……」
一息つき、空になったコップに麦茶を注いだ。
せんべいを食べ終えたお婆ちゃんは晩御飯の準備をしていた。
ガスコンロに火をつけジャァジャァと何かを炒めている。
「今日の晩御飯なーに?」
「何がいいよ?」
「んー肉!」
「美代はお肉が好きなんやね」
冷蔵庫から豚バラ肉を取り出し解凍した。
チィンと景気の良い音がし少し柔らかくなった豚バラ肉をフライパンに豪快にぶち込み、大きめに切った玉ねぎ、人参、などを炒める。
「にくじゃが?」
「いいや」
醤油、だしの素を味付けにいれ、簡素ではあるが野菜炒めの完成だ。
私は紫色になりつつある手を水道で洗い流し、お茶碗にご飯をよそった。
日も沈み出し、カラスが鳴き出す頃。
お爺ちゃんが畑から戻ってきた。
4年前に定年退職し、今はお婆ちゃんとしがない生活を営んでいる。去年から始めた野菜作りはどうやら好調なようで、手には季節外れのキャベツが二、三個うずくまっている。
葉についている青虫を跳ね除け、お婆ちゃんに渡していた。
二つを冷蔵庫へ、余った一つは千切りにしマヨネーズを和えてサラダにした。
今朝の残りの味噌汁と、さっき作っていた野菜炒め、
キャベツのサラダ、それと梅干し。
来年の食卓には私の手伝った梅干しが並ぶ。
そう思うと、来年が少し楽しみになった。
竹籠一杯に入った梅はどれも青く甘酸っぱい匂いがした。
「美代ちゃん、茶をいっぱいくれんか?」
「分かった……冷たいやつ?」
「そうじゃ、氷も入れておくれよ」
ギィギィと軋む木目調の廊下をドダドタと大股で歩く。台所はここからさほど離れていない。透明なガラスコップに麦茶と氷をふんだんに入れた。これだけでは少し味気ない……。
「確かこの辺に……」
昨日買っておいた醤油せんべいを茶碗にいくつか盛り、お婆ちゃんに持っていった。
「おや? この匂いはせんべいか?」
「よく分かったね。見てもないのに、正解だよ」
ベランダに腰掛けお婆ちゃんは冷たいお茶を啜る。
「美味しいね~せんべいもありがとうね。少し小腹が空いていたところなんだよ」
竹籠は砂利に置かれていた。
「それにしても今年はたくさん採れたもんだね。去年より多くない?」
「んーたしかに今年は雨も少なかったし天気も良かったからね~梅の木も元気だったんだろうね」
梅のみを一つ手に取っていた。
「美代も休み……一緒にせんべいでも食べよう」
「分かったよお婆ちゃん。少し待っててね」
ゆっくりと縦に頷きお婆ちゃんは食べたくなさそうにせんべいをちまちまと齧っていた。
ギィギィ
おじいちゃんが最近直したばかりだと息巻いていたがどうやらまだ欠陥があるようだ。
冷蔵庫を開け何か甘味がないかを探す。お婆ちゃん食べにくそうだったな……。申し訳ないなと少し気分が落ち込んだ。冷蔵庫を少し漁ると羊羹があった。
「あるじゃんいいの♫」
つぶあんの羊羹をいくつか切り分け、お婆ちゃんのと私のを用意した。笹を軒先からとって皿に盛りつけ、つまようじを添えれば完成。
急須には少し緩くなった緑茶が入っている。
やはり羊羹には緑茶があう。だけど、このままでは体が熱くなってしまうかもしれない。
冷凍庫から氷をいくつか見繕いガラスコップに入れた。
急須に入っている少しぬるめの緑茶をガラスコップに注ぐ。パキパキと氷が緩やかに弾け、カランカランと夏らしい音が鳴る。
雨季に入る前だと言うのに蒸し暑いこの日にはちょうどいいくらいの音だろう。
「できた!」
お盆に羊羹と緑茶、お茶が足りなくなるといけないので急須も持ってきた。
「おや、羊羹持ってきたのかい?」
「あ、だめだった?」
「いいや、ばあちゃんもそれ出そうとしてたの」
「そうだったんだ~それなら良かった」
空になったコップを私に差し出した。
「はいはい、緑茶だけどいい?」
縦に首を振った。ゆっくりとガラスコップに緑茶を淹れてあげた。
「ありがとう」
「どういたしまして!」
お茶を啜り、羊羹を口にする。柔らかな甘みが口いっぱいに広がって美味しい。
しばらくの間二人で羊羹で舌つづみし、おやつを楽しんだ。
梅……と、つくものにはもう一つあり、梅雨かというものがある。
三時を過ぎ、雲が黒くなり始めた。
お婆ちゃんは急いで梅を家の中に隠した。
塩を振り、水気を出しつける準備を始めたのだ。
したしたと小雨が瓦を伝い雨どいに落ちる。
紫陽花が雨に濡れてその上をカタツムリが這う。
小雨が続き私はベランダで目の前にある小山をぼんやりと眺めている。
青々と茂る松枝が風に揺られて花粉を飛ばす。花粉症の人たちが見たら発狂しかねない光景だが私からしたら日常の一コマでしかない。
この年冬生まれたばかりの猫がゴロゴロと私の足元に来て頭を擦り付ける。優しく背を撫でてやれば気持ちよさそうに目を細めた。
毛が生え変わる時期ということもあり撫でた手には小さな毛がまとわりつく。手を払い毛を落とす。
台所からは紫蘇の香りがする。
去年の付け回しの汁だろうか?
「美代ちゃんばあちゃん腰痛いから手伝ってくれない?」
台所からお婆ちゃんの声が聞こえた。
「ん、分かった。今行くね」
若いバッタか青々と茂る雑草を齧っている。
重い腰を上げ、グイッと麦茶を飲み干した。
「いくか、」
台所に行くと、辛そうに梅をかき回しているお婆ちゃんがいた。
腰をさすると苦笑いして、「この腰がね~」と嘆いていた。
仕方なく、子椅子を足元に置いてあげ座るように手を差し出した。
おばあちゃんは「ありがとうね~」といい子椅子に腰を下ろすのだった。
袖をめくり、古ぼけた白いエプロンを身につける。
「まずは何をすればいいの?」
「そうだね~梅を塩漬けしたいから梅を適度に混ぜながら塩を加えてくれないかな?」
「わかった」
『伯方の塩』を取り出し、手で混ぜながら適度に塩を加える。一見簡単そうに見えるがかなりの重労働……これはお年寄りには少しきついか?
数回に分けで塩を揉み込み、適度に塩が回った。
「出来たよ?」
重い腰を上げどれどれとお婆ちゃんが桶を覗く。
「うん、これだけ混ざればいいだろうね」
いつの間にか用意されていた麦茶を半分くらいまで飲み干た。
「次は何するの?」
「次はね、紫蘇の葉をつぶしたものがあるからそれを加えてまた混ぜてくれるかな?」
「わかった」
ざるにとられた赤紫色の紫蘇の葉をちらし寿司の要領で満遍なく撒き再度腰を入れて混ぜる。
独特な紫蘇の香りが鼻腔を突き上げ変なくしゃみが出そうになった。
「おやおや? 初めはみんなそうなるよ。どれ、鼻をかんでらっしゃい」
「ご、ごめんなさい~」
手渡されたティッシュを一枚取り、つーんと鼻をかんだ。
「うげ、結構匂いきついんだね」
「だろうね、長いこと梅干しを作ってはいるけどなかなかこの匂いは慣れないよ」
優しげにお婆ちゃんは微笑み、手元に置いてあるせんべいをバリバリと食べていた。
「ねぇ、お婆ちゃん。お婆ちゃんは誰から梅干しの作り方を教えてもらったの?」
「ん~美代のひいお婆ちゃんに教えてもらったよ」
「へーそうなんだ。ひいお婆ちゃんってどんな人だったの?」
「そうかい、美代はまだ生まれてなかったものね~。ひいお婆ちゃんは強い人だったよ。たまに|蝮(まむし)何かを捕まえてきて私によく食べさせてくれたもんだよ。いやいや食べされられるものだからみんな嫌がってね~」
懐かしむようにお婆ちゃんは天井を見上げだ。
「今頃またどこかで誰かに料理を教えてるよ。多分ね」
「面倒見のいい人なんだね」
「おや? そういう解釈も出来るね~」
呆気にとられたような表情でお婆ちゃんは微笑みながら優しく笑った。
コップ一杯に注いであった麦茶を飲み干した頃。紫蘇の葉が梅全体に散らばった。
「こんなもんかな?」
少し汗ばんだ額をエプロンの裾で拭い、小さく息を吐いた。
「もう出来たのかい? 若いっていいね~」
漬物桶を覗き込み、満足げにお婆ちゃんは首を縦に振った。
「美代。ちょっとこれをこの中に入れてくれないかな?」
お婆ちゃんが蔵の中戸を開け中から何かを持ってきた。
「それ何?」
「去年つけた梅干しの残り汁みたいなもんだよ。この汁をそのつけたばかりの梅の中に入れてやるんだ。そうするといい味が出て美味しくなるんだよ」
あー、蒲焼と同じ要領かな? と私は何気なく想像していた。
「結構重いからね~気をつけるんだよ」
蔵の中からそれを取り出してきたお婆ちゃんは凄すぎるけどね。
ガラス瓶と言ってもかなり大きい物で、重さ約5キロ程度。それに中身も入れてしまうと15キロはくだらない。
それを軽々持ち上げて持ってくるお婆ちゃんは凄いよ。
「よっこらせっと」
重たすぎるガラス瓶を持ち上げ、漬物桶に汁を注ぐ。
鼻にくるつーんっとした酸っぱい匂いに顔を縮こませ、自身が梅干しになったような気分になった。
「ふぅ……」
一息つき、空になったコップに麦茶を注いだ。
せんべいを食べ終えたお婆ちゃんは晩御飯の準備をしていた。
ガスコンロに火をつけジャァジャァと何かを炒めている。
「今日の晩御飯なーに?」
「何がいいよ?」
「んー肉!」
「美代はお肉が好きなんやね」
冷蔵庫から豚バラ肉を取り出し解凍した。
チィンと景気の良い音がし少し柔らかくなった豚バラ肉をフライパンに豪快にぶち込み、大きめに切った玉ねぎ、人参、などを炒める。
「にくじゃが?」
「いいや」
醤油、だしの素を味付けにいれ、簡素ではあるが野菜炒めの完成だ。
私は紫色になりつつある手を水道で洗い流し、お茶碗にご飯をよそった。
日も沈み出し、カラスが鳴き出す頃。
お爺ちゃんが畑から戻ってきた。
4年前に定年退職し、今はお婆ちゃんとしがない生活を営んでいる。去年から始めた野菜作りはどうやら好調なようで、手には季節外れのキャベツが二、三個うずくまっている。
葉についている青虫を跳ね除け、お婆ちゃんに渡していた。
二つを冷蔵庫へ、余った一つは千切りにしマヨネーズを和えてサラダにした。
今朝の残りの味噌汁と、さっき作っていた野菜炒め、
キャベツのサラダ、それと梅干し。
来年の食卓には私の手伝った梅干しが並ぶ。
そう思うと、来年が少し楽しみになった。
0
この作品の感想を投稿する
あなたにおすすめの小説
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
そのほかに外伝も綴りました。
上司、快楽に沈むまで
赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。
冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。
だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。
入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。
真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。
ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、
篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」
疲労で僅かに緩んだ榊の表情。
その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。
「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」
指先が榊のネクタイを掴む。
引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。
拒むことも、許すこともできないまま、
彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。
言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。
だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。
そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。
「俺、前から思ってたんです。
あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」
支配する側だったはずの男が、
支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。
上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。
秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。
快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。
――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。
母の下着 タンスと洗濯籠の秘密
MisakiNonagase
青春
この物語は、思春期という複雑で繊細な時期を生きる少年の内面と、彼を取り巻く家族の静かなる絆を描いた作品です。
颯真(そうま)という一人の高校生の、ある「秘密」を通して、私たちは成長の過程で誰もが抱くかもしれない戸惑い、罪悪感、そしてそれらを包み込む家族の無言の理解に触れます。
物語は、現在の颯真と恋人・彩花との関係から、中学時代にさかのぼる形で展開されます。そこで明らかになるのは、彼がかつて母親の下着に対して抱いた抑えがたい好奇心と、それに伴う一連の行為です。それは彼自身が「歪んだ」と感じる過去の断片であり、深い恥ずかしさと自己嫌悪を伴う記憶です。
しかし、この物語の核心は、単なる過去の告白にはありません。むしろ、その行為に「気づいていたはず」の母親が、なぜ一言も問い詰めず、誰にも告げず、ただ静かに見守り続けたのか——という問いにこそあります。そこには、親子という関係を超えた、深い人間理解と、言葉にされない優しさが横たわっています。
センシティブな題材を、露骨な描写や扇情的な表現に頼ることなく、あくまで颯真の内省的な視点から丁寧に紡ぎ出しています。読者は、主人公の痛みと恥ずかしさを共有しながら、同時に、彼を破綻から救った「沈黙の救済」の重みと温かさを感じ取ることでしょう。
これは、一つの過ちと、その赦しについての物語です。また、成長とは時に恥ずかしい過去を背負いながら、他者の無償の寛容さによって初めて前を向けるようになる過程であること、そして家族の愛が最も深く現れるのは、時に何も言わない瞬間であることを、静かにしかし確かに伝える物語です。
どうか、登場人物たちの静かなる心の襞に寄り添いながら、ページをめくってください。
同じアパートに住む年上未亡人美女は甘すぎる。
ピコサイクス
青春
大学生の翔太は、一人暮らしを始めたばかり。
真下の階に住むのは、落ち着いた色気と優しさを併せ持つ大人の女性・水無瀬紗夜。
引っ越しの挨拶で出会った瞬間、翔太は心を奪われてしまう。
偶然にもアルバイト先のスーパーで再会した彼女は、翔太をすぐに採用し、温かく仕事を教えてくれる存在だった。
ある日の仕事帰り、ふたりで過ごす時間が増えていき――そして気づけば紗夜の部屋でご飯をご馳走になるほど親密に。
優しくて穏やかで――その色気に触れるたび、翔太の心は揺れていく。
大人の女性と大学生、甘くちょっぴり刺激的な同居生活(?)がはじまる。
還暦の性 若い彼との恋愛模様
MisakiNonagase
恋愛
還暦を迎えた和子。保持する資格の更新講習で二十代後半の青年、健太に出会った。何気なくてLINE交換してメッセージをやりとりするうちに、胸が高鳴りはじめ、長年忘れていた恋心に花が咲く。
そんな還暦女性と二十代の青年の恋模様。
その後、結婚、そして永遠の別れまでを描いたストーリーです。
全7話
サレ妻の娘なので、母の敵にざまぁします
二階堂まりい
大衆娯楽
大衆娯楽部門最高記録1位!
※この物語はフィクションです
流行のサレ妻ものを眺めていて、私ならどうする? と思ったので、短編でしたためてみました。
当方未婚なので、妻目線ではなく娘目線で失礼します。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる