JC聖女とおっさん勇者(?)

景空

文字の大きさ
1 / 155
異世界へ

第1話 ここはどこ?

しおりを挟む
「え?何これ?」

あたしは今絶賛混乱中だ。なぜか見知らぬおじさんに抱きしめられて身動きが取れない。おじさんは気を失っているようだ。しかもそのおじさんの肩越しに見えるのは木々に囲まれた森。さっきまでは中学校からの帰り道で信号待ちをしていたはず。しかもあたしの住んでいる街は、そこそこ都会でこんな森は近くでは見たことも無い。

「ここ、どこ?」

あたしは、思わずつぶやいた。
まるでそれを待っていたかのように、あたしを抱きしめていたおじさんが身じろぎをした。

「う、つぅ」

どうやら目を覚ますようだ。はやいところ目を覚ましてさっさと開放して欲しい。そして、出来たらこの状況を説明して、お願い。そんなあたしの想いが通じたのかおじさんはそれほど時間をかけずに目を覚ました。
そして、今あたしと目が合ったおじさんが固まっている。いや、そこ固まらないで。せめて先にあたしを開放して。仕方がないのであたしから話しかけよう。

「あ、あの。離してもらえますか」

おじさんは、ハッとしたようにあたしを離して飛び下がった。そんなに慌てなくても良いのに。あたしはそう思ってクスリと笑ってしまった。それにしても不思議なおじさんだと思った。最近ではお父さんでさえ触られると気持ち悪く感じていたのに、あんなふうに抱きしめられても嫌な感じが無いんだもの。ひょっとしたら今の状況がそんな風に感じさせてるのかしら。

「あ、あの。ごめんね。とっさの事だったから。こんなおじさんに抱えられるなんて嫌だったよね」

とっさの事?。という事はこのおじさん何か知ってる?

「あ、あの。あたし、何が起きたのか何もわかってなくて。何が起きたのか知っていたら教えてもらえますか?」
あたしが聞くと、おじさんは少し驚いたような顔をした。そして改まった顔で話してくれた。
「まず最初に、私達は辻堂の交差点で信号待ちをしていたはずなんだけど。そこは覚えているかい」
「ええ、そろそろ3月なのに寒いなって思いながら待ってました」

あたしが答えると、おじさんは頷きながら

「そこで君の後ろに居た高校生くらいの子たち3人を中心にいきなり何かが光って広がっていったんだ。私は咄嗟に君だけでもと抱き寄せてその光から離れようとしたんだよ。で、その後は何も分からなくなって気付いたらさっきの通り」

そこまで話すとおじさんは肩をすくめてみせた。それを見てあたしは、ちょっとカッコイイと思ってしまった。変なの。でも、そうするとおじさんも、ここがどこなのかは分からないのよね。それでも一応聞いてみようかしら。

「それで、その、ここがどこなのか心当たりありますか?」

あたしが一番知りたい事だったのだけど、おじさんは首を横に振ってしまった。

「ごめんな、私にもここがどこか分からない。さんざん世界中を回って色々なものを見てきたけれども、このあたりの風景も植物もどれも見たことが無いんだよ」

そこまで聞いて、あたしはあきらめにも似た気持ちと共に目をそむけていた可能性と向き合うしかないと溜息を吐いた。

「あのですね。おじさんから聞いた内容に、そのあたしの読んだことのある小説の中のお話がすごく似た状況なの。とっても非常識な内容なので、そういうお話だって分かったうえで聞いてもらえますか?」

あたしが、そんな風にいったからかな、おじさんはニコニコしながらそれでも真剣に聞いてくれる姿勢になった。

「ああ、もちろんだよ。そもそも辻堂からこんな訳の分からない場所に来てる段階で常識なんてくそくらえだからね」

おじさんの言葉にあたしは、少し安心して話す気になれる。

「その、ここって実は日本どころか地球じゃない、ひょっとしたら異世界と呼ばれる場所じゃないかって……」

あたしが、ここまで話したところで、おじさんが難しい顔をしちゃった。やっぱり真面目に受け取ってもらえないのかな。なんかブツブツ呟き始めちゃったし。あきれられた?現実逃避って思われちゃったかな?そんな風に考えてたら”パン”おじさんが自分の頬っぺた叩いてた。
そして

「なるほど。一見突飛な考えだけど、そもそも現状があまりに突飛だ。むしろその考え方の方が現実的か」
「え?」

思わず声が出ちゃった。

「あ、ごめんね。うん。とりあえず、何故ここに私達がこんな場所に来たかって理由・原因は分からないけど、それをすっ飛ばせば全部つじつまが合うね。じゃ、これからは私達は、原因は分からないけれど、異世界に来てしまった。それを前提で考え行動しよう」
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

【完結】おじいちゃんは元勇者

三園 七詩
ファンタジー
元勇者のおじいさんに拾われた子供の話… 親に捨てられ、周りからも見放され生きる事をあきらめた子供の前に国から追放された元勇者のおじいさんが現れる。 エイトを息子のように可愛がり…いつしか子供は強くなり過ぎてしまっていた…

僕の秘密を知った自称勇者が聖剣を寄越せと言ってきたので渡してみた

黒木メイ
ファンタジー
世界に一人しかいないと言われている『勇者』。 その『勇者』は今、ワグナー王国にいるらしい。 曖昧なのには理由があった。 『勇者』だと思わしき少年、レンが頑なに「僕は勇者じゃない」と言っているからだ。 どんなに周りが勇者だと持て囃してもレンは認めようとしない。 ※小説家になろうにも随時転載中。 レンはただ、ある目的のついでに人々を助けただけだと言う。 それでも皆はレンが勇者だと思っていた。 突如日本という国から彼らが転移してくるまでは。 はたして、レンは本当に勇者ではないのか……。 ざまぁあり・友情あり・謎ありな作品です。 ※小説家になろう、カクヨム、ネオページにも掲載。

神々の間では異世界転移がブームらしいです。

はぐれメタボ
ファンタジー
第1部《漆黒の少女》 楠木 優香は神様によって異世界に送られる事になった。 理由は『最近流行ってるから』 数々のチートを手にした優香は、ユウと名を変えて、薬師兼冒険者として異世界で生きる事を決める。 優しくて単純な少女の異世界冒険譚。 第2部 《精霊の紋章》 ユウの冒険の裏で、田舎の少年エリオは多くの仲間と共に、世界の命運を掛けた戦いに身を投じて行く事になる。 それは、英雄に憧れた少年の英雄譚。 第3部 《交錯する戦場》 各国が手を結び結成された人類連合と邪神を奉じる魔王に率いられた魔族軍による戦争が始まった。 人間と魔族、様々な意思と策謀が交錯する群像劇。 第4部 《新たなる神話》 戦争が終結し、邪神の討伐を残すのみとなった。 連合からの依頼を受けたユウは、援軍を率いて勇者の後を追い邪神の神殿を目指す。 それは、この世界で最も新しい神話。

召喚聖女に嫌われた召喚娘

ざっく
恋愛
闇に引きずり込まれてやってきた異世界。しかし、一緒に来た見覚えのない女の子が聖女だと言われ、亜優は放置される。それに文句を言えば、聖女に悲しげにされて、その場の全員に嫌われてしまう。 どうにか、仕事を探し出したものの、聖女に嫌われた娘として、亜優は魔物が闊歩するという森に捨てられてしまった。そこで出会った人に助けられて、亜優は安全な場所に帰る。

石塔に幽閉って、私、石の聖女ですけど

ハツカ
恋愛
私はある日、王子から役立たずだからと、石塔に閉じ込められた。 でも私は石の聖女。 石でできた塔に閉じ込められても何も困らない。 幼馴染の従者も一緒だし。

どうも、命中率0%の最弱村人です 〜隠しダンジョンを周回してたらレベル∞になったので、種族進化して『半神』目指そうと思います〜

サイダーボウイ
ファンタジー
この世界では15歳になって成人を迎えると『天恵の儀式』でジョブを授かる。 〈村人〉のジョブを授かったティムは、勇者一行が訪れるのを待つ村で妹とともに仲良く暮らしていた。 だがちょっとした出来事をきっかけにティムは村から追放を言い渡され、モンスターが棲息する森へと放り出されてしまう。 〈村人〉の固有スキルは【命中率0%】というデメリットしかない最弱スキルのため、ティムはスライムすらまともに倒せない。 危うく死にかけたティムは森の中をさまよっているうちにある隠しダンジョンを発見する。 『【煌世主の意志】を感知しました。EXスキル【オートスキップ】が覚醒します』 いきなり現れたウィンドウに驚きつつもティムは試しに【オートスキップ】を使ってみることに。 すると、いつの間にか自分のレベルが∞になって……。 これは、やがて【種族の支配者(キング・オブ・オーバーロード)】と呼ばれる男が、最弱の村人から最強種族の『半神』へと至り、世界を救ってしまうお話である。

処理中です...