JC聖女とおっさん勇者(?)

景空

文字の大きさ
9 / 155
異世界へ

第9話 戦闘開始

しおりを挟む
「ねえ、影井さん。ウサギって人を襲うのかしら?」

あたしの勘違いでなければウサギは草食だったと思うのだけど。

「地球のウサギは草食だから基本的に人を襲うことは無いけど。ここのウサギはどうかな?」

そう言うと影井さんは、そろりそろりとその巨大ウサギから距離をとるように動き始めたわね。あたしは言われたように影井さんの後ろになるようについていくしかないわ。

影井さんは、このウサギをどうする気かしら。

そんな事を考えていたら、影井さんが突然動いたわ。見るとウサギがあたし達に飛び掛かろうとしたようね。この世界のウサギは人を襲うってことね。それを出足をくじく形で影井さんが竹やりを突き出したのね。どうも逃がしてくれる雰囲気ではないわね。となればあたしも竹やりを振り回す心の準備をしておかないといけないかしら。

影井さんは竹やりで突いたり払ったり。ちょっとこの人本当に現代日本人かしら?
影井さんの動きはびっくりするほどだけど、巨大ウサギが3羽ではちょっと止めきれなかったみたいで、1羽が影井さんの竹やりのスキをぬって後ろにきちゃった。となればこれはなんとかあたしが竹やりを振り回して追い払うしかないのよね。
あたしが覚悟を決めて深呼吸をしたところで

「ギュギュギィガァアアア」

ハッと見たら影井さんの竹やりが1羽のウサギに深く突き刺さっているのがみえた。でも、その竹やりは深く突き刺さりすぎて簡単に抜けないみたいだわ。あ、影井さんが竹やりを諦めて手を離した。チラリとこちらを見た影井さんはベルトに差してあった細くて短い竹やりのミニチュアみたいなものを両手にとったわ。

「華さん、悪い。後ろに1羽抜けさせてしまった。さっきも言ったけど、無理に戦わなくていい。竹やりを振り回して牽制だけして。どうしても危なそうならあっちに逃げてもいいから」

そう言うと影井さんはウサギに向かって駆けだしていったわね。えっと、この場合あたしは影井さんの後ろについていったほうがいいのかしら?

ああ、もう、考えてる暇もないわね。影井さんがどんどんウサギに向かって行ってしまうわ。いいわもう、どのみち影井さんと離れたらあたしは生き延びられそうもないものね。影井さんの後ろについていってあたしはいつの間にか影井さんの背中に背中を合わせていたわ。

「な、華さん。なぜ逃げない」

影井さんの責めるような言葉だけど、逃げられるわけないわ。

「あんな、ウサギからあたしが逃げられるわけないじゃないですか。守ってくださいよ」

あたしが言うと、影井さんはふっと雰囲気をやわらげたわね。

「わかった。私の後ろに張り付いていなさい。決して離れないように。あと後ろのウサギには槍を振り回して近寄らせないようにそれだけ頑張って」

そういうとたった30センチの竹やりのようなものを両手に影井さんはウサギに向かったわ。あんな短い武器ではウサギの前脚や口での攻撃をよけるのも大変なはずよね。そう考えたところで気づいたわ。あたしの背負っているリュックの横にもう1本あるじゃないの。

あたしは後ろを向く余裕もリュックを下ろす余裕もないけれど、あたしの方に向いているウサギが少し距離をとった時にならなんとか取れるんじゃないかしら。そんなことを考えていたら、ウサギが後ろを向いたわ。あたしはサッと右手をリュックの横に括り付けてある竹やりに伸ばして”エイッ”と力を入れて引ぱった。あら、わりと簡単に抜けたわ。あとは影井さんに手渡せばいいのよね。

あたしは目の前のウサギに集中して、竹やりを右に左に振り回す。でもこれ、さっきまでは両手で振り回していたのを片手にしたからちょっと辛いわ。徐々に息が上がってきているのよ。早くチャンス来ないかしら。
あ、うさぎが何かに気をとられたわ。今ならこの竹やりを影井さんに渡せる。

「か、影井さん。これを使って……。」

息切れで普段でも小さいあたしの声が更に小さい。でも影井さんには聞こえたはず。あたしが伸ばした手から竹やりを受け取ってくれたもの。あとはあたしは、この手に残ったあと1本の竹やりを振り回していれば……。
あ、視線を戻したあたしの前にウサギが……。ダメ、あたしは目を瞑ってしまった。
”ドン”衝撃にあたしは吹き飛ばされた。
「華さん」
影井さんの驚いた声が聞こえた気がしたけれど、”うう、痛い”槍を両手で抱えていたのと、影井さんの作ってくれた竹の防具のおかげでそれでもどうにか打撲くらいだけで済んだみたい。そう思って立ち上がろうとしたら

「うくぅ」

足首を捻ったみたいね。これじゃ影井さんの後ろについていくのも難しいわ。そういえばあたしに体当たりしてきたウサギはどうしたのかしら?それに影井さんは?

あたしがなんとか立ち上がって周りを見回すと竹やりが刺さったまま動かないウサギが2羽、そして短い竹やりを両手に持って最後のウサギとやり合っている影井さん。よく見ると影井さん、何か所かケガをしているじゃないの。あたしが油断したせい?それでもせめてあたしが持っていた竹やりを渡そうと思って確認したら、あたしの竹やりは見るも無残につぶれていたわ。ウサギに吹き飛ばされたときにやられたのね。となれば……

あたしは、そっと這うように少し離れたところに倒れて動かないウサギに近づいていった。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

【完結】おじいちゃんは元勇者

三園 七詩
ファンタジー
元勇者のおじいさんに拾われた子供の話… 親に捨てられ、周りからも見放され生きる事をあきらめた子供の前に国から追放された元勇者のおじいさんが現れる。 エイトを息子のように可愛がり…いつしか子供は強くなり過ぎてしまっていた…

僕の秘密を知った自称勇者が聖剣を寄越せと言ってきたので渡してみた

黒木メイ
ファンタジー
世界に一人しかいないと言われている『勇者』。 その『勇者』は今、ワグナー王国にいるらしい。 曖昧なのには理由があった。 『勇者』だと思わしき少年、レンが頑なに「僕は勇者じゃない」と言っているからだ。 どんなに周りが勇者だと持て囃してもレンは認めようとしない。 ※小説家になろうにも随時転載中。 レンはただ、ある目的のついでに人々を助けただけだと言う。 それでも皆はレンが勇者だと思っていた。 突如日本という国から彼らが転移してくるまでは。 はたして、レンは本当に勇者ではないのか……。 ざまぁあり・友情あり・謎ありな作品です。 ※小説家になろう、カクヨム、ネオページにも掲載。

神々の間では異世界転移がブームらしいです。

はぐれメタボ
ファンタジー
第1部《漆黒の少女》 楠木 優香は神様によって異世界に送られる事になった。 理由は『最近流行ってるから』 数々のチートを手にした優香は、ユウと名を変えて、薬師兼冒険者として異世界で生きる事を決める。 優しくて単純な少女の異世界冒険譚。 第2部 《精霊の紋章》 ユウの冒険の裏で、田舎の少年エリオは多くの仲間と共に、世界の命運を掛けた戦いに身を投じて行く事になる。 それは、英雄に憧れた少年の英雄譚。 第3部 《交錯する戦場》 各国が手を結び結成された人類連合と邪神を奉じる魔王に率いられた魔族軍による戦争が始まった。 人間と魔族、様々な意思と策謀が交錯する群像劇。 第4部 《新たなる神話》 戦争が終結し、邪神の討伐を残すのみとなった。 連合からの依頼を受けたユウは、援軍を率いて勇者の後を追い邪神の神殿を目指す。 それは、この世界で最も新しい神話。

召喚聖女に嫌われた召喚娘

ざっく
恋愛
闇に引きずり込まれてやってきた異世界。しかし、一緒に来た見覚えのない女の子が聖女だと言われ、亜優は放置される。それに文句を言えば、聖女に悲しげにされて、その場の全員に嫌われてしまう。 どうにか、仕事を探し出したものの、聖女に嫌われた娘として、亜優は魔物が闊歩するという森に捨てられてしまった。そこで出会った人に助けられて、亜優は安全な場所に帰る。

石塔に幽閉って、私、石の聖女ですけど

ハツカ
恋愛
私はある日、王子から役立たずだからと、石塔に閉じ込められた。 でも私は石の聖女。 石でできた塔に閉じ込められても何も困らない。 幼馴染の従者も一緒だし。

どうも、命中率0%の最弱村人です 〜隠しダンジョンを周回してたらレベル∞になったので、種族進化して『半神』目指そうと思います〜

サイダーボウイ
ファンタジー
この世界では15歳になって成人を迎えると『天恵の儀式』でジョブを授かる。 〈村人〉のジョブを授かったティムは、勇者一行が訪れるのを待つ村で妹とともに仲良く暮らしていた。 だがちょっとした出来事をきっかけにティムは村から追放を言い渡され、モンスターが棲息する森へと放り出されてしまう。 〈村人〉の固有スキルは【命中率0%】というデメリットしかない最弱スキルのため、ティムはスライムすらまともに倒せない。 危うく死にかけたティムは森の中をさまよっているうちにある隠しダンジョンを発見する。 『【煌世主の意志】を感知しました。EXスキル【オートスキップ】が覚醒します』 いきなり現れたウィンドウに驚きつつもティムは試しに【オートスキップ】を使ってみることに。 すると、いつの間にか自分のレベルが∞になって……。 これは、やがて【種族の支配者(キング・オブ・オーバーロード)】と呼ばれる男が、最弱の村人から最強種族の『半神』へと至り、世界を救ってしまうお話である。

処理中です...