JC聖女とおっさん勇者(?)

景空

文字の大きさ
19 / 155
異世界文明との接触

第19話 馬車

しおりを挟む
 お昼には丘の上に着くことが出来たわ。この1月の間、日本にいた頃とは比べ物にならないくらい歩いたり木に登ったり戦闘したりして体力がついたってことかしらね。これだけの丘に登っても息も切れないのだもの。この丘って感じとして多分200メートルくらいの高さあるわよね。それをこんな軽々登れるなんて、不思議な気持ちだわ。

 でもそれより、今はこの先のことね。瑶さんが手をかざして遠くを見ているわね。せっかくだからあたしも自分なりに見て見ようかしら。

「ふむ。朝未、あれが見えるかな?」

瑶さんが指さす先地平線ちょっと手前の当たりに右から左に線が見えるわね。瑶さんが言っているのはあれの事かしら。

「地平線のちょっと手前の線のことですか?」
「そう、朝未にも見えるってことは見間違いじゃなさそうだね。希望的観測ではあるけど、あれは道ではないかと思ってるんだ」
「え、道?ってことは文明があるって事ですか?」
「まだ可能性の段階だけどね。とりあえず、あれが道だと仮定したときに問題なのは見える範囲に町や村といったものが見えない点だね」

どういうことかしら?あたしが首を傾げていると瑶さんが”ふふ”と笑って教えてくれたわ。

「文明が発達しているほど人の居住地同士が近づく傾向があるんだよ。地球でも中世以前だと隣の町や村まで歩いたら1週間以上かかるなんてのはザラだったみたいだからね」
「つまり、ここの文明レベルは地球の中世以前並だということですか?」

中世以前って公衆衛生って概念がなくてペストが黒死病って名前で流行って人口の半分が亡くなったなんて時代じゃないの?ちょっと不安なんですけど、大丈夫かしら。

「可能性の話だけどね。たまたまそういう地域だったって可能性もあるし、ほら地球にもアフリカのサバンナとかそんな感じだよね」

それでも、とりあえず朝焼いておいた鹿肉でお昼ご飯を済ませて川に沿って道らしきものに向かう事になったの。
道だといいなあ。

「ねえ、瑶さん。あの道までどのくらいあるかしら」
「そうだね、この地面が地球と同じくらいの球体だと仮定して、この丘の高さを200メートルと仮定すれば……。地平線までが40から50キロくらいかな。その少し手前だから私達の歩く速さからすると明日のお昼くらいには着くと思うよ」


 瑶さんの言葉通り、あたし達は翌日のお昼前に道にたどり着いたわ。道よねこれ。あたしはなんとなく自信がなくて瑶さんの様子をそっと窺ったわ。瑶さんは道の幅を確認したり、片膝をついて路面を調べたりしているのだけどどうなのかしら。

「あ、あの瑶さん。どうかしら?」

あたしがそっと声を掛けると、瑶さんはハッとしたように立ちあがってニッコリと笑顔を見せたわ。

「うん、道、それも馬車かそれに類するものがある程度行き来している街道だと思うよ」

そう言うと、街道だと判断した理由を色々と説明してくれたわ。

細かい石が敷き詰められていること、轍と思われる窪みがあること、その幅からすればゆっくりであればすれ違える程度のサイズであること、轍の中央に動物の蹄の跡があること。そういった事から文明レベルによるけれどある程度大きな町どうしを繋ぐ街道だろうってことを丁寧に説明してくれたの。

「これが街道である可能性が高い事はわかりました。あとはどっちに向かうかですね」

あたしがそう言うと瑶さんは少し迷いながら、日が昇るからということであたし達が便宜的に東としている方向を指したのよね。

「それは何か理由があるの?」
「こっちにきてごらん。これが馬車らしきものを引く動物の足跡、もう面倒だからはっきりするまでは馬車と馬ってことにするけど、ほら、こっち側が深くて反対側に少し削れているだろう。これはこの馬が東に向かっていることを示すんだよ。そしてこの轍の深さを向こうとこっちで比べると、東に向かう方が深いだろう。つまり東に荷物を沢山運んでいるって事なんだよ。つまり東の街の方が恐らく大きいってことだね。大きめの街に向かった方が恐らく色々と分かるんじゃないかってのが理由だね。まあ危険もありうるけど。それは慎重に行動していくということで、ね」

そう決め、あたし達は東に向かうことにしたのだけど、2時間くらいかしら歩いたところで瑶さんが足を止めたのよね。

「瑶さん?」

何があったのかと瑶さんの様子をうかがうと。瑶さんが、道の向こうを指さしたの。

「馬車が止まっている。その周りを動物が動き回っているみたいだ」

あたしもじっと見ると、

「あ、本当ですね。あの馬車は動物の群れに襲われている感じですかね?」

そこまで言って自分の言葉に違和感を感じたの。ここから馬車まで見通しは良いけれど、どう見ても2キロ近くあるわよ。なんであたしは、いえあたしだけじゃないわ瑶さんも、そんな細かいところまで見えるの?

「ねえ、瑶さん。あたしこんな遠くの馬車はともかく動物の動きとか見えるって疑問なんですけど」
「う、うん。そうだね。それについては特に不利な要素じゃないから、あとで考えよう。それより今はあれをどうするかだね」
「どうするか、ですか?それは助けるか見捨てるかって事ですよね?」
「うん、どちらにもメリット・デメリットがある。助けた場合、恩を売ることになってこの世界の情報を手に入れることが出来るかもしれない。そのかわり接触することにのる危険が準備無しで発生するよね。逆に見捨てた場合は情報は手に入らない、その代わり文明との接触を計画的に準備したうえでできる」

瑶さんの説明にあたしは迷うことなく返事をしたわ。

「助けましょう。あの感じなら、あの動物はあたし達の敵ではないと思いますし、その動物にまともに対応できていない馬車の人たちはあたし達には脅威ではないと思います。なによりここで見捨てたらきっと後々まで後悔すると思います」

あたしの返事を聞くと瑶さんはあたしの頭をポンポンと叩いたの。

「私としてはどちらでも良いから。朝未の気持ちを優先するよ。じゃあ急ごう」

そう決めるとあたしは弓を手に持ち直し、瑶さんは石を割って作った手斧を手にして、馬車に向かって走り始めたわ。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

【完結】おじいちゃんは元勇者

三園 七詩
ファンタジー
元勇者のおじいさんに拾われた子供の話… 親に捨てられ、周りからも見放され生きる事をあきらめた子供の前に国から追放された元勇者のおじいさんが現れる。 エイトを息子のように可愛がり…いつしか子供は強くなり過ぎてしまっていた…

僕の秘密を知った自称勇者が聖剣を寄越せと言ってきたので渡してみた

黒木メイ
ファンタジー
世界に一人しかいないと言われている『勇者』。 その『勇者』は今、ワグナー王国にいるらしい。 曖昧なのには理由があった。 『勇者』だと思わしき少年、レンが頑なに「僕は勇者じゃない」と言っているからだ。 どんなに周りが勇者だと持て囃してもレンは認めようとしない。 ※小説家になろうにも随時転載中。 レンはただ、ある目的のついでに人々を助けただけだと言う。 それでも皆はレンが勇者だと思っていた。 突如日本という国から彼らが転移してくるまでは。 はたして、レンは本当に勇者ではないのか……。 ざまぁあり・友情あり・謎ありな作品です。 ※小説家になろう、カクヨム、ネオページにも掲載。

神々の間では異世界転移がブームらしいです。

はぐれメタボ
ファンタジー
第1部《漆黒の少女》 楠木 優香は神様によって異世界に送られる事になった。 理由は『最近流行ってるから』 数々のチートを手にした優香は、ユウと名を変えて、薬師兼冒険者として異世界で生きる事を決める。 優しくて単純な少女の異世界冒険譚。 第2部 《精霊の紋章》 ユウの冒険の裏で、田舎の少年エリオは多くの仲間と共に、世界の命運を掛けた戦いに身を投じて行く事になる。 それは、英雄に憧れた少年の英雄譚。 第3部 《交錯する戦場》 各国が手を結び結成された人類連合と邪神を奉じる魔王に率いられた魔族軍による戦争が始まった。 人間と魔族、様々な意思と策謀が交錯する群像劇。 第4部 《新たなる神話》 戦争が終結し、邪神の討伐を残すのみとなった。 連合からの依頼を受けたユウは、援軍を率いて勇者の後を追い邪神の神殿を目指す。 それは、この世界で最も新しい神話。

召喚聖女に嫌われた召喚娘

ざっく
恋愛
闇に引きずり込まれてやってきた異世界。しかし、一緒に来た見覚えのない女の子が聖女だと言われ、亜優は放置される。それに文句を言えば、聖女に悲しげにされて、その場の全員に嫌われてしまう。 どうにか、仕事を探し出したものの、聖女に嫌われた娘として、亜優は魔物が闊歩するという森に捨てられてしまった。そこで出会った人に助けられて、亜優は安全な場所に帰る。

石塔に幽閉って、私、石の聖女ですけど

ハツカ
恋愛
私はある日、王子から役立たずだからと、石塔に閉じ込められた。 でも私は石の聖女。 石でできた塔に閉じ込められても何も困らない。 幼馴染の従者も一緒だし。

どうも、命中率0%の最弱村人です 〜隠しダンジョンを周回してたらレベル∞になったので、種族進化して『半神』目指そうと思います〜

サイダーボウイ
ファンタジー
この世界では15歳になって成人を迎えると『天恵の儀式』でジョブを授かる。 〈村人〉のジョブを授かったティムは、勇者一行が訪れるのを待つ村で妹とともに仲良く暮らしていた。 だがちょっとした出来事をきっかけにティムは村から追放を言い渡され、モンスターが棲息する森へと放り出されてしまう。 〈村人〉の固有スキルは【命中率0%】というデメリットしかない最弱スキルのため、ティムはスライムすらまともに倒せない。 危うく死にかけたティムは森の中をさまよっているうちにある隠しダンジョンを発見する。 『【煌世主の意志】を感知しました。EXスキル【オートスキップ】が覚醒します』 いきなり現れたウィンドウに驚きつつもティムは試しに【オートスキップ】を使ってみることに。 すると、いつの間にか自分のレベルが∞になって……。 これは、やがて【種族の支配者(キング・オブ・オーバーロード)】と呼ばれる男が、最弱の村人から最強種族の『半神』へと至り、世界を救ってしまうお話である。

処理中です...