60 / 155
ギルドからの依頼
第60話 変異
しおりを挟む
あたしは釈然としない気持ちを抱えながらも瑶さんと一緒に魔物狩りを続けている。
「朝未。納得はしなくていい。ただ、今は目の前の戦闘に集中しなさい。まずはこの世界で生き延びること、だよ」
「は、い」
そう、あたし達は今この世界で寄る辺ない存在。ミーガンさんとの関わり合いで多少の縁は出来ているけど、基本的にこの世界では異物だものね。山の中で獲物を狩って原始人のような生活をするのなら今のままでも出来るかもしれない。でも、あたしは人間だもの他に人がいないならともかく、人がいて文明があってその中で生活できる手段があるならやっぱり人として生きていきたい。
そのために今はハンターとして立場を固めるのが近道だから。最速でせめて5級ハンターに上がるのがとりあえずの目標だもの。上級ハンターになればそれなりの立場を得られるみたいだし、貴族や神殿にもある程度は抵抗できるみたいだものね。
あたしは両手の平で頬をパチンと叩いて気持ちを切り替えた。
「瑶さん。探知魔法に反応があります。反応の大きさからオークの群れ。数はもう少し近づけば分かると思いますが、今探知範囲にいるだけで4体です。動きからすると探知範囲外にまだ連携しているオークがいそうです」
「わかった。木や茂みを使って隠れながら近づこう。朝未、群れの大きさが確定したら私の肩を叩いて知らせて。そこで止まって打合せをしよう。それと、もう昼を回って地球でいう3時に近いから、その群れと戦うにしても避けるにしても今日はこれで最後にしよう」
瑶さんの提案に頷いて、あたしは探知魔法に意識を向けたの。
あれ?探知魔法の反応が少し妙なことに気付いてあたしは瑶さんの肩を叩いて止まってもらうことにした。
「群れの規模はわかった?」
瑶さんの言葉にあたしは首を横に振る。当然瑶さんは疑問を顔に浮かべたわね。
「1体がマナセンスにおかしな反応があります」
「おかしな反応?」
「ええ、マナセンスの反応って普通は死にかけるとかでない限り一定の強度なんですが、1体だけ強度がフラフラと安定しません。弱くなるのであれば死にかけということですが、これ強くなったり弱くなったりと不安定なんです。しかも一番弱くなった時で周囲のオークと同じくらいあります」
あたしの報告に瑶さんの眉間に皺が寄ったわ。
「一番強くなった時だとオークと比べてどのくらいの大きさになる?」
「そ、そうですね。瞬間的には3,いえ4倍くらい」
「……。目視できる距離まで近づいて確認しよう」
障害物の関係で森の中では高性能になったあたし達の目でも遠くから確認は出来ないのよね。さすがに”透視”なんてことは出来ないもの
そして近づいたあたし達の目にしたのは異様なものだったわ。
「引き上げよう」
瑶さんの一言にあたしも全く同意見だったので、あたし達はそのまま風下側に撤退したの。
「瑶さん、あれはいったい何だったんでしょう?」
「ん?朝未は気付くかと思ったんだけど」
「え?」
「多分、だけど。上位種への変異ってやつじゃないかと想像するんだが」
なるほど、複数のオークがくっついて混ざりあうようにして変異して上位種にってことね。
「あれ?それじゃ、本当は完全に変異が終わる前に斃した方が良かったんじゃ?」
「斃せるなら、ね。あのバケモノがどの程度の強さなのか情報が無さ過ぎるからね。それに斃せるつもりで突っかかって、斃し切る前に変異が終了して、いきなり強くなったりしたら困るかもしれないよ。だから今回はギルドに情報を流す方が良いと思ったんだよ」
なるほど。やっぱりこの辺りの考え方は瑶さんにお任せしたほうがいいわね。
あたし達は、引き揚げながらエリアの端でギルドの係員にオークが変異している可能性があることを話したのよね。とりあえずは、これで責任は果たしたことになるのかしら。
「では、エルリックのギルドで実際の様子をお話しいただけるようお願いします」
そうだろうとは思ったわ。どのみち討伐証明部位を持ち込んで報奨金を受け取らないといけないのでギルドには行くし大した手間ではないからいいのだけどね。
「オークの変異種、ですか?」
エルリックに戻ったあたし達は、その足でギルドに向かったの。そして変異種について報告したのだけど、そのときのアレッシアさんの反応がこれなのよね。ちょっと顔色が悪いわね。
「ええ、朝未の魔法で変な反応があったので様子を見たら見つけた感じです」
瑶さんが小声で周囲を伺いながら話しているわね。もうあたしが探知魔法を使えること自体はアレッシアさんにはバレてるみたいだから良いんだけど。
「どのくらいの規模の群れで、どんな変異状態でしたか?」
瑶さんがあたしに視線を向けたわね。はいはい、そこはあたしの出番よね。
「群れの規模は、おおよそ30体といったところでした。変異状態ってあれですよね」
ちょっとあれは口にしたくないわ。なので今度はあたしが瑶さんに視線を向けるの。あ、瑶さんが苦笑してるわね。
「何と言いますか、4体くらいのオークが溶け合っているような感じでした」
「4体ですか。そうなると……おそらくハイオークでしょう」
「ハイオーク?」
「ええ、強さは、そうですね。先日おふたりが斃された尻尾が6本のナインテールフォックス。あれと同じくらいでしょうか。少し遅い代わりに力が強い感じだと思ってください。ただ……」
「ただ?」
「ナインテールフォックスは単体で活動しますが、ハイオークはオークの群れをある程度統率するんです。これは少々面倒ですね。5級案件かしら」
「そんなにですか?」
「ええ、統率されたオークは面倒ですからね。しかも今のお話だと30体のオークを統率することになるでしょうから。今回は情報ありがとうございました。おふたりは8級ですから、これには関わらない方が安全だと思います」
そんなにやばいヤツだったのね。突撃しなくてよかったわ。
「朝未。納得はしなくていい。ただ、今は目の前の戦闘に集中しなさい。まずはこの世界で生き延びること、だよ」
「は、い」
そう、あたし達は今この世界で寄る辺ない存在。ミーガンさんとの関わり合いで多少の縁は出来ているけど、基本的にこの世界では異物だものね。山の中で獲物を狩って原始人のような生活をするのなら今のままでも出来るかもしれない。でも、あたしは人間だもの他に人がいないならともかく、人がいて文明があってその中で生活できる手段があるならやっぱり人として生きていきたい。
そのために今はハンターとして立場を固めるのが近道だから。最速でせめて5級ハンターに上がるのがとりあえずの目標だもの。上級ハンターになればそれなりの立場を得られるみたいだし、貴族や神殿にもある程度は抵抗できるみたいだものね。
あたしは両手の平で頬をパチンと叩いて気持ちを切り替えた。
「瑶さん。探知魔法に反応があります。反応の大きさからオークの群れ。数はもう少し近づけば分かると思いますが、今探知範囲にいるだけで4体です。動きからすると探知範囲外にまだ連携しているオークがいそうです」
「わかった。木や茂みを使って隠れながら近づこう。朝未、群れの大きさが確定したら私の肩を叩いて知らせて。そこで止まって打合せをしよう。それと、もう昼を回って地球でいう3時に近いから、その群れと戦うにしても避けるにしても今日はこれで最後にしよう」
瑶さんの提案に頷いて、あたしは探知魔法に意識を向けたの。
あれ?探知魔法の反応が少し妙なことに気付いてあたしは瑶さんの肩を叩いて止まってもらうことにした。
「群れの規模はわかった?」
瑶さんの言葉にあたしは首を横に振る。当然瑶さんは疑問を顔に浮かべたわね。
「1体がマナセンスにおかしな反応があります」
「おかしな反応?」
「ええ、マナセンスの反応って普通は死にかけるとかでない限り一定の強度なんですが、1体だけ強度がフラフラと安定しません。弱くなるのであれば死にかけということですが、これ強くなったり弱くなったりと不安定なんです。しかも一番弱くなった時で周囲のオークと同じくらいあります」
あたしの報告に瑶さんの眉間に皺が寄ったわ。
「一番強くなった時だとオークと比べてどのくらいの大きさになる?」
「そ、そうですね。瞬間的には3,いえ4倍くらい」
「……。目視できる距離まで近づいて確認しよう」
障害物の関係で森の中では高性能になったあたし達の目でも遠くから確認は出来ないのよね。さすがに”透視”なんてことは出来ないもの
そして近づいたあたし達の目にしたのは異様なものだったわ。
「引き上げよう」
瑶さんの一言にあたしも全く同意見だったので、あたし達はそのまま風下側に撤退したの。
「瑶さん、あれはいったい何だったんでしょう?」
「ん?朝未は気付くかと思ったんだけど」
「え?」
「多分、だけど。上位種への変異ってやつじゃないかと想像するんだが」
なるほど、複数のオークがくっついて混ざりあうようにして変異して上位種にってことね。
「あれ?それじゃ、本当は完全に変異が終わる前に斃した方が良かったんじゃ?」
「斃せるなら、ね。あのバケモノがどの程度の強さなのか情報が無さ過ぎるからね。それに斃せるつもりで突っかかって、斃し切る前に変異が終了して、いきなり強くなったりしたら困るかもしれないよ。だから今回はギルドに情報を流す方が良いと思ったんだよ」
なるほど。やっぱりこの辺りの考え方は瑶さんにお任せしたほうがいいわね。
あたし達は、引き揚げながらエリアの端でギルドの係員にオークが変異している可能性があることを話したのよね。とりあえずは、これで責任は果たしたことになるのかしら。
「では、エルリックのギルドで実際の様子をお話しいただけるようお願いします」
そうだろうとは思ったわ。どのみち討伐証明部位を持ち込んで報奨金を受け取らないといけないのでギルドには行くし大した手間ではないからいいのだけどね。
「オークの変異種、ですか?」
エルリックに戻ったあたし達は、その足でギルドに向かったの。そして変異種について報告したのだけど、そのときのアレッシアさんの反応がこれなのよね。ちょっと顔色が悪いわね。
「ええ、朝未の魔法で変な反応があったので様子を見たら見つけた感じです」
瑶さんが小声で周囲を伺いながら話しているわね。もうあたしが探知魔法を使えること自体はアレッシアさんにはバレてるみたいだから良いんだけど。
「どのくらいの規模の群れで、どんな変異状態でしたか?」
瑶さんがあたしに視線を向けたわね。はいはい、そこはあたしの出番よね。
「群れの規模は、おおよそ30体といったところでした。変異状態ってあれですよね」
ちょっとあれは口にしたくないわ。なので今度はあたしが瑶さんに視線を向けるの。あ、瑶さんが苦笑してるわね。
「何と言いますか、4体くらいのオークが溶け合っているような感じでした」
「4体ですか。そうなると……おそらくハイオークでしょう」
「ハイオーク?」
「ええ、強さは、そうですね。先日おふたりが斃された尻尾が6本のナインテールフォックス。あれと同じくらいでしょうか。少し遅い代わりに力が強い感じだと思ってください。ただ……」
「ただ?」
「ナインテールフォックスは単体で活動しますが、ハイオークはオークの群れをある程度統率するんです。これは少々面倒ですね。5級案件かしら」
「そんなにですか?」
「ええ、統率されたオークは面倒ですからね。しかも今のお話だと30体のオークを統率することになるでしょうから。今回は情報ありがとうございました。おふたりは8級ですから、これには関わらない方が安全だと思います」
そんなにやばいヤツだったのね。突撃しなくてよかったわ。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています
藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。
結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。
聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。
侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。
※全11話 2万字程度の話です。
【完結】おじいちゃんは元勇者
三園 七詩
ファンタジー
元勇者のおじいさんに拾われた子供の話…
親に捨てられ、周りからも見放され生きる事をあきらめた子供の前に国から追放された元勇者のおじいさんが現れる。
エイトを息子のように可愛がり…いつしか子供は強くなり過ぎてしまっていた…
僕の秘密を知った自称勇者が聖剣を寄越せと言ってきたので渡してみた
黒木メイ
ファンタジー
世界に一人しかいないと言われている『勇者』。
その『勇者』は今、ワグナー王国にいるらしい。
曖昧なのには理由があった。
『勇者』だと思わしき少年、レンが頑なに「僕は勇者じゃない」と言っているからだ。
どんなに周りが勇者だと持て囃してもレンは認めようとしない。
※小説家になろうにも随時転載中。
レンはただ、ある目的のついでに人々を助けただけだと言う。
それでも皆はレンが勇者だと思っていた。
突如日本という国から彼らが転移してくるまでは。
はたして、レンは本当に勇者ではないのか……。
ざまぁあり・友情あり・謎ありな作品です。
※小説家になろう、カクヨム、ネオページにも掲載。
神々の間では異世界転移がブームらしいです。
はぐれメタボ
ファンタジー
第1部《漆黒の少女》
楠木 優香は神様によって異世界に送られる事になった。
理由は『最近流行ってるから』
数々のチートを手にした優香は、ユウと名を変えて、薬師兼冒険者として異世界で生きる事を決める。
優しくて単純な少女の異世界冒険譚。
第2部 《精霊の紋章》
ユウの冒険の裏で、田舎の少年エリオは多くの仲間と共に、世界の命運を掛けた戦いに身を投じて行く事になる。
それは、英雄に憧れた少年の英雄譚。
第3部 《交錯する戦場》
各国が手を結び結成された人類連合と邪神を奉じる魔王に率いられた魔族軍による戦争が始まった。
人間と魔族、様々な意思と策謀が交錯する群像劇。
第4部 《新たなる神話》
戦争が終結し、邪神の討伐を残すのみとなった。
連合からの依頼を受けたユウは、援軍を率いて勇者の後を追い邪神の神殿を目指す。
それは、この世界で最も新しい神話。
召喚聖女に嫌われた召喚娘
ざっく
恋愛
闇に引きずり込まれてやってきた異世界。しかし、一緒に来た見覚えのない女の子が聖女だと言われ、亜優は放置される。それに文句を言えば、聖女に悲しげにされて、その場の全員に嫌われてしまう。
どうにか、仕事を探し出したものの、聖女に嫌われた娘として、亜優は魔物が闊歩するという森に捨てられてしまった。そこで出会った人に助けられて、亜優は安全な場所に帰る。
石塔に幽閉って、私、石の聖女ですけど
ハツカ
恋愛
私はある日、王子から役立たずだからと、石塔に閉じ込められた。
でも私は石の聖女。
石でできた塔に閉じ込められても何も困らない。
幼馴染の従者も一緒だし。
どうも、命中率0%の最弱村人です 〜隠しダンジョンを周回してたらレベル∞になったので、種族進化して『半神』目指そうと思います〜
サイダーボウイ
ファンタジー
この世界では15歳になって成人を迎えると『天恵の儀式』でジョブを授かる。
〈村人〉のジョブを授かったティムは、勇者一行が訪れるのを待つ村で妹とともに仲良く暮らしていた。
だがちょっとした出来事をきっかけにティムは村から追放を言い渡され、モンスターが棲息する森へと放り出されてしまう。
〈村人〉の固有スキルは【命中率0%】というデメリットしかない最弱スキルのため、ティムはスライムすらまともに倒せない。
危うく死にかけたティムは森の中をさまよっているうちにある隠しダンジョンを発見する。
『【煌世主の意志】を感知しました。EXスキル【オートスキップ】が覚醒します』
いきなり現れたウィンドウに驚きつつもティムは試しに【オートスキップ】を使ってみることに。
すると、いつの間にか自分のレベルが∞になって……。
これは、やがて【種族の支配者(キング・オブ・オーバーロード)】と呼ばれる男が、最弱の村人から最強種族の『半神』へと至り、世界を救ってしまうお話である。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる