JC聖女とおっさん勇者(?)

景空

文字の大きさ
84 / 155
新天地へ

第84話 ????

しおりを挟む
相手の剣が振り下ろされる。
それを自分の長剣で弾き、そのまま切り降ろす。
そんな私の後ろから、別の騎士が切りかかる。身をひるがえし躱しつつ剣で切り上げる。
更に流れのまま右から来た相手を切り飛ばす。
私の使う長剣は、相手の持つ一般的な長剣と比べても数十センチは長いので常に相手の先手をとれる。
今やっているような10人程度相手の模擬戦で相手の剣を受けるような事はない。

召喚されて約半年。私達は戦闘訓練に明け暮れていた。国としては私達をすぐにでもどこかの戦場に向かわせたかったようだけれど、戦いなんて無縁な世界から召喚された私達ではとても即戦力にはならないという判断くらいは出来たみたい。

向こうでは大地が盾で相手を吹き飛ばしている。そのまま片手剣を首に突き付けるとその相手は死亡扱い。後ろから切りかかってきた相手は後ろ蹴りで吹っ飛ばして、その勢いのまま体制を整えてる。決してキレイじゃないけど大地のフィジカルを生かした実戦的な戦い方ね。

もう10人相手程度の模擬戦では私達の訓練にならなくなってきている。かと言って単純に相手の人数を増やしても意味がない。となればそろそろ実戦に投入されそうね。

「ドカン!!」

模擬戦に切りをつけた私が、そんなことを考えていると、大きな爆発音が響いた。

「小雪の魔法も凄いよな」

いつの間にか模擬戦を終えた大地が私の横でそんなことを言っている。

「ふふ、聖女のイメージじゃないけどね」

小雪は召喚されてすぐに回復魔法が使えたことから聖女と呼ばれている。大地は聖剣を振るう事が出来たということで勇者と、そして私は自分の背丈ほどもある長剣を振るいこの世界の騎士たちを寄せ付けない強さを身に着けたことで剣聖なんて呼ばれるようになった。

「結構高レベルな攻撃魔法に回復魔法、そのうえ補助魔法で俺たちの戦力を底上げできるんだからな。もう戦力的には俺達3人だけでちょっとした軍隊並じゃないか。そうは思わないか剣聖様?」
「はあ、まったく大地は能天気なんだから。勇者なんて言われてるけど聖剣はちゃんと使えるの?」
「まあ、普通の剣使うよりは威力あるのは確かだな。でもあれって単なる重たくて普通の人間には持てない剣なだけに思えるんだけどな。重いから当たると威力はあるけど。でも伝説にあるようなトンデモ性能があるようには思えないんだよな」

「”勇者の振るう聖剣は巨大なドラゴンを切り裂き、魔王を屠った”ってあれね。多分大げさにすることで勇者への信仰のようなものを作り上げてきたんじゃないかしら」
「ふーん、そんなことして何か良い事でもあんのかね」
「色々とあるわよ。ピンチになった時の勇者召還に説得力持たせるとか。勇者召還に成功した時の威圧感が増すとかね。更に言えば戦いの最前線に召喚した勇者を放りこむのも簡単ね」

召喚した側からすれば使い捨てにしても構わない、いえ、はっきり言ってしまえば使い捨ての武器扱いなのは間違いない。これは大地も小雪も気付いて無さそうだし、私も口にのせると下手すれば首が飛びそうだから言えないけど。

それ以上は触れず、あとは雑談をしながら大地と並んで城に向かって歩いていると、魔法の訓練を終えたのだろう小雪が合流してきた。

「お疲れ様。聖女様の魔法も随分と強力になってきたみたいね」
「真奈美、聖女呼びはやめてって言ったわよね。やめないなら真奈美のこと剣聖様って呼ぶわよ。……魔法はね、大分よくなったわね。最初は詠唱とか恥ずかしかったけど、魔力も大分増えたから最初の頃みたいに1発撃っておしまいなんてこともないわ。その代わり体力はほとんど一般人だけどね」




「勇者様方、訓練も順調との報告を受けております。すでに実力としては十分で、あとは実戦で慣れていただくばかりだとか」

城に入ったとたんにフィアン・ビダルさんが声を掛けてきた。おそらく私達が実戦を少しでも後にしようとしているのに気付いているのだろうけど、そうと感じさせず、それでいて実戦に出るように圧力をかけてくるのは宗教家というより政治家ね。かと言って、いつまでも引き延ばせるわけでは無いのも確か。ここで下手に大地にしゃべらせると明日にでも出征させられかねない。

「司祭長様、私達はこのような戦闘の無い世界から召喚されました。力こそ付いたとは思いますが、まだまだ付け焼刃の域を出るものではありません。実戦において多少のパニックに陥っても身体が動くように十分な訓練をしなければ逆にあなた方の足を引っ張るだけになるでしょうし、悪くすれば味方を傷つけることさえ考えられます。今しばらく訓練期間を頂きたいと考えております」
「な、し、慎重な剣聖様のお考えは分からないではありませんが、そこまでの事は……」
「なら、例えば私がパニックに陥って見境なく剣を振るったならどうやって止めてくれるのですか?」
「そ、それは……」

今回の模擬戦を鑑みても私や大地を止められるものでは無いのは間違いない。フィアン・ビダルさんがが口ごもる中、さらに追撃をしておくのが良いでしょうね。

「それだけではありませんよ。小雪がパニックになって高火力の魔法を敵味方見境なくばら撒いたら?あれを防ぐ障壁を貼れる魔法使いいます?私だって多分逃げるので精いっぱいです。とても味方を助ける余裕はありません。敵味方全滅した荒れ地に私達3人だけ立っている状況をお望みですか?」
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

【完結】おじいちゃんは元勇者

三園 七詩
ファンタジー
元勇者のおじいさんに拾われた子供の話… 親に捨てられ、周りからも見放され生きる事をあきらめた子供の前に国から追放された元勇者のおじいさんが現れる。 エイトを息子のように可愛がり…いつしか子供は強くなり過ぎてしまっていた…

僕の秘密を知った自称勇者が聖剣を寄越せと言ってきたので渡してみた

黒木メイ
ファンタジー
世界に一人しかいないと言われている『勇者』。 その『勇者』は今、ワグナー王国にいるらしい。 曖昧なのには理由があった。 『勇者』だと思わしき少年、レンが頑なに「僕は勇者じゃない」と言っているからだ。 どんなに周りが勇者だと持て囃してもレンは認めようとしない。 ※小説家になろうにも随時転載中。 レンはただ、ある目的のついでに人々を助けただけだと言う。 それでも皆はレンが勇者だと思っていた。 突如日本という国から彼らが転移してくるまでは。 はたして、レンは本当に勇者ではないのか……。 ざまぁあり・友情あり・謎ありな作品です。 ※小説家になろう、カクヨム、ネオページにも掲載。

神々の間では異世界転移がブームらしいです。

はぐれメタボ
ファンタジー
第1部《漆黒の少女》 楠木 優香は神様によって異世界に送られる事になった。 理由は『最近流行ってるから』 数々のチートを手にした優香は、ユウと名を変えて、薬師兼冒険者として異世界で生きる事を決める。 優しくて単純な少女の異世界冒険譚。 第2部 《精霊の紋章》 ユウの冒険の裏で、田舎の少年エリオは多くの仲間と共に、世界の命運を掛けた戦いに身を投じて行く事になる。 それは、英雄に憧れた少年の英雄譚。 第3部 《交錯する戦場》 各国が手を結び結成された人類連合と邪神を奉じる魔王に率いられた魔族軍による戦争が始まった。 人間と魔族、様々な意思と策謀が交錯する群像劇。 第4部 《新たなる神話》 戦争が終結し、邪神の討伐を残すのみとなった。 連合からの依頼を受けたユウは、援軍を率いて勇者の後を追い邪神の神殿を目指す。 それは、この世界で最も新しい神話。

召喚聖女に嫌われた召喚娘

ざっく
恋愛
闇に引きずり込まれてやってきた異世界。しかし、一緒に来た見覚えのない女の子が聖女だと言われ、亜優は放置される。それに文句を言えば、聖女に悲しげにされて、その場の全員に嫌われてしまう。 どうにか、仕事を探し出したものの、聖女に嫌われた娘として、亜優は魔物が闊歩するという森に捨てられてしまった。そこで出会った人に助けられて、亜優は安全な場所に帰る。

石塔に幽閉って、私、石の聖女ですけど

ハツカ
恋愛
私はある日、王子から役立たずだからと、石塔に閉じ込められた。 でも私は石の聖女。 石でできた塔に閉じ込められても何も困らない。 幼馴染の従者も一緒だし。

どうも、命中率0%の最弱村人です 〜隠しダンジョンを周回してたらレベル∞になったので、種族進化して『半神』目指そうと思います〜

サイダーボウイ
ファンタジー
この世界では15歳になって成人を迎えると『天恵の儀式』でジョブを授かる。 〈村人〉のジョブを授かったティムは、勇者一行が訪れるのを待つ村で妹とともに仲良く暮らしていた。 だがちょっとした出来事をきっかけにティムは村から追放を言い渡され、モンスターが棲息する森へと放り出されてしまう。 〈村人〉の固有スキルは【命中率0%】というデメリットしかない最弱スキルのため、ティムはスライムすらまともに倒せない。 危うく死にかけたティムは森の中をさまよっているうちにある隠しダンジョンを発見する。 『【煌世主の意志】を感知しました。EXスキル【オートスキップ】が覚醒します』 いきなり現れたウィンドウに驚きつつもティムは試しに【オートスキップ】を使ってみることに。 すると、いつの間にか自分のレベルが∞になって……。 これは、やがて【種族の支配者(キング・オブ・オーバーロード)】と呼ばれる男が、最弱の村人から最強種族の『半神』へと至り、世界を救ってしまうお話である。

処理中です...