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88,遊びにおいで。
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王城内へは、地下の隠し通路を使って侵入。
ロクウさんが事前に調べたところでは、この時間帯、王は毎日ひとりで禁書室にいるそうだ。
この禁書室というのは、王族のみが立ち入りを許されている場所なのだとか。
しかし、毎日、決まった時間に?
ふーむ。まるで誘っているようだよね。
〈擬態幻魔ミミクリーデビル〉は、本気でこの国を支配しようとか、そんなことを考えているわけではないだろう。たんに遊びたいだけで(アーテル国民として傍迷惑な話だけど)。
ならば、私たちが戻ってくることも考慮し、『このタイミングで遊びにおいで』という状態を作っておいてもおかしくはない。
それが部外者のいない禁書室。
問題は、その誘いにのるべきか否か。少なくとも向こうが『来る』と予期しているのならば、奇襲にはならない。
ただ──そもそも、どのタイミングで襲っても、たとえば就寝中でも、相手が相手なだけに奇襲として成立する気がしない。
それに部外者を巻き込まずに済むのは、こらちとしても実に楽なのだ。
とすると、行かないという手はなし。
まず隠し通路で、城内の『絵画の間』に出る。そこから衛兵に気づかれぬよう移動し、禁書室へ向かうのだ。
さてと。私の〈スーパーコンボ〉は武装Lv.4123。目標のLv.5000には達しなかったが、まずまずとしよう。
では皆さんはどうか。
地下迷宮〈死の舞踏〉に行く前は、少なくともLv.1000超え、四桁台を求めたわけだけど。
まずはベロニカさんの〈魔統武器〉である、デスサイズ〈死神のそよ風〉。〈死の楽園〉に入る前は武装Lv.126だった。これが42日後、〈死の楽園〉を出るときには武装Lv.898まで上がっていた。
ただ残念ながら、このベロニカさんの数値が、パーティ仲間内での最上値。
ロクウさんの刀〈時雨晩〉は武装Lv.187から、Lv.752まで上昇。
ライオネルさんのカトラス〈略奪者〉は武装Lv.125から、Lv.656まで上昇。
サンディさんの聖杖〈愛と抱擁〉は武装Lv.5から、Lv.825まで上昇。
なぜ、もっと上昇しなかったのか?
どうやら、『私が標的の魔物を追い詰めてから、強化素材を得る人がトドメを差す』という戦法で得られる強化素材は、通常戦闘で得るものよりも質が落ちるようなのだ。
【覇王魔窟】の古代神からしたら、『ズルとまではいわないが、そうそう美味い話があると思うなよ』ということだろう。
かといってこの武装Lv.では、単独で『ヤバ強』以上を撃破するのは難しい。実際、サンディさんは試してみたところ、右腕を失ったわけだし。
こうしてみると、私含めて武装Lv.を爆上げできたけども、目標数値には届かなかったというところか。
まぁ目標数値というものは、とりあえず設定しただけなので、そこまで重くみなくてもいいのかもしけないけど。
ところでスキルツリー開拓については、それぞれが己の特性を生かした開拓を成した。ロクウさんとベロニカさんは攻撃重視で攻め、ライオネルさんは探索系スキルを多く解放、当然サンディさんは逃走と回避にスキルポイントをつぎ込んだ。
うーん。別にいいけどさ。パーティとして、なんかまとまりがなさそうだなぁ。というか、パーティ全員で一体の強敵に挑むのって、これが初めてなんだけど。ぶっつけ本番。
「さぁ、いきましょう」
私はみんなを見てから、禁書室の扉を開けようとした。
だがライオネルさんが止めてくる。
「待ちな嬢ちゃん。俺の探索スキルによると、いま禁書室内には一人じゃない、二人いるようだぞ」
ベロニカさんが小首を傾げる。
「護衛かしらねアリア? 王という建前上、護衛の一人くらいは常に張り付いているのかも」
「ライオネルさん。部屋の外から、どのような人物なのか分かりませんか?」
「あー、まってくれ。性別までなら分かる。男と女だ」
サンディさんが、なぜか顔を真っ赤にした。
「男と女、密会──エッチ中!!!!!」
さすが修道女さん、妄想がたくましい。
だがライオネルさんは否定。
「二人は適度な距離は離れているぜ。残念だったな、シスターの嬢ちゃん」
男と女。ふむ。胸騒ぎがする、が。
扉を開けたとたん攻撃されるのに備えて、私以外には下がってもらう。
単身で《鎧装甲:地獄》を発動しつつ、禁書室内へ。
なるほど。ライオネルさんの言う通りだ。室内には男と女が、適度な距離をあけて立っていた。国王と、ミリカさんが。
ミリカさんは、私を見ると驚いた様子で、
「アリアさん? なぜ、ここに?」
「ミリカさん? 元気そうですね、ミリカさん。自領に戻っているとばかり思っていましたが。さてさて、さーて」
困った。
〈魔物図鑑:視覚版〉を使うと、王とミリカさん双方に〈擬態幻魔ミミクリーデビル〉という表示が出る。
では二体とも、〈擬態幻魔ミミクリーデビル〉が擬態した姿なのか。
しかし──明滅しているのだ。
〈擬態幻魔ミミクリーデビル〉の表示が明滅しているのだが、魔物名の明滅なんて、これは初めてのこと。どういう意味だろう?
〈魔物図鑑:視覚版〉のただのバグ? それとも『〈擬態幻魔ミミクリーデビル〉であって〈擬態幻魔ミミクリーデビル〉ではない』という哲学的な問答とか?
困ったというのは、これだ。あれがミリカさんの偽者だと、言いきれない。
ベロニカさんが、私のそばを駆け抜けて、ミリカ(?)へと〈死神のそよ風〉で斬りかかる。
「ミリカに擬態するなんて、いい度胸ねぇっっ!」
あれは擬態なのか? または違うのか。
迷っていると、王が動いた。といっても攻撃してきたわけではなく、読んでいた書物を閉じる。そして、にかっと笑い──破裂した。跡形もなく。
私は唖然として、王が消滅した空間を見つめる。いや、まった。いま何か動いたような。神速で、〈擬態幻魔ミミクリーデビル〉の核のようなものが、だからつまり──
隣にきたロクウさんが言う。
「あのミリカ殿は擬態による偽物。ということでいいのですか、先生?」
「ふむ、それが問題で──はい?」
見やると、ロクウさんにも重なるようにして、〈擬態幻魔ミミクリーデビル〉が表示されている。そして明滅しているのだ。
「どうしたのですか、先生??」
分かりそうで、分からないぞ、このスキル攻撃の全容が。
ロクウさんが事前に調べたところでは、この時間帯、王は毎日ひとりで禁書室にいるそうだ。
この禁書室というのは、王族のみが立ち入りを許されている場所なのだとか。
しかし、毎日、決まった時間に?
ふーむ。まるで誘っているようだよね。
〈擬態幻魔ミミクリーデビル〉は、本気でこの国を支配しようとか、そんなことを考えているわけではないだろう。たんに遊びたいだけで(アーテル国民として傍迷惑な話だけど)。
ならば、私たちが戻ってくることも考慮し、『このタイミングで遊びにおいで』という状態を作っておいてもおかしくはない。
それが部外者のいない禁書室。
問題は、その誘いにのるべきか否か。少なくとも向こうが『来る』と予期しているのならば、奇襲にはならない。
ただ──そもそも、どのタイミングで襲っても、たとえば就寝中でも、相手が相手なだけに奇襲として成立する気がしない。
それに部外者を巻き込まずに済むのは、こらちとしても実に楽なのだ。
とすると、行かないという手はなし。
まず隠し通路で、城内の『絵画の間』に出る。そこから衛兵に気づかれぬよう移動し、禁書室へ向かうのだ。
さてと。私の〈スーパーコンボ〉は武装Lv.4123。目標のLv.5000には達しなかったが、まずまずとしよう。
では皆さんはどうか。
地下迷宮〈死の舞踏〉に行く前は、少なくともLv.1000超え、四桁台を求めたわけだけど。
まずはベロニカさんの〈魔統武器〉である、デスサイズ〈死神のそよ風〉。〈死の楽園〉に入る前は武装Lv.126だった。これが42日後、〈死の楽園〉を出るときには武装Lv.898まで上がっていた。
ただ残念ながら、このベロニカさんの数値が、パーティ仲間内での最上値。
ロクウさんの刀〈時雨晩〉は武装Lv.187から、Lv.752まで上昇。
ライオネルさんのカトラス〈略奪者〉は武装Lv.125から、Lv.656まで上昇。
サンディさんの聖杖〈愛と抱擁〉は武装Lv.5から、Lv.825まで上昇。
なぜ、もっと上昇しなかったのか?
どうやら、『私が標的の魔物を追い詰めてから、強化素材を得る人がトドメを差す』という戦法で得られる強化素材は、通常戦闘で得るものよりも質が落ちるようなのだ。
【覇王魔窟】の古代神からしたら、『ズルとまではいわないが、そうそう美味い話があると思うなよ』ということだろう。
かといってこの武装Lv.では、単独で『ヤバ強』以上を撃破するのは難しい。実際、サンディさんは試してみたところ、右腕を失ったわけだし。
こうしてみると、私含めて武装Lv.を爆上げできたけども、目標数値には届かなかったというところか。
まぁ目標数値というものは、とりあえず設定しただけなので、そこまで重くみなくてもいいのかもしけないけど。
ところでスキルツリー開拓については、それぞれが己の特性を生かした開拓を成した。ロクウさんとベロニカさんは攻撃重視で攻め、ライオネルさんは探索系スキルを多く解放、当然サンディさんは逃走と回避にスキルポイントをつぎ込んだ。
うーん。別にいいけどさ。パーティとして、なんかまとまりがなさそうだなぁ。というか、パーティ全員で一体の強敵に挑むのって、これが初めてなんだけど。ぶっつけ本番。
「さぁ、いきましょう」
私はみんなを見てから、禁書室の扉を開けようとした。
だがライオネルさんが止めてくる。
「待ちな嬢ちゃん。俺の探索スキルによると、いま禁書室内には一人じゃない、二人いるようだぞ」
ベロニカさんが小首を傾げる。
「護衛かしらねアリア? 王という建前上、護衛の一人くらいは常に張り付いているのかも」
「ライオネルさん。部屋の外から、どのような人物なのか分かりませんか?」
「あー、まってくれ。性別までなら分かる。男と女だ」
サンディさんが、なぜか顔を真っ赤にした。
「男と女、密会──エッチ中!!!!!」
さすが修道女さん、妄想がたくましい。
だがライオネルさんは否定。
「二人は適度な距離は離れているぜ。残念だったな、シスターの嬢ちゃん」
男と女。ふむ。胸騒ぎがする、が。
扉を開けたとたん攻撃されるのに備えて、私以外には下がってもらう。
単身で《鎧装甲:地獄》を発動しつつ、禁書室内へ。
なるほど。ライオネルさんの言う通りだ。室内には男と女が、適度な距離をあけて立っていた。国王と、ミリカさんが。
ミリカさんは、私を見ると驚いた様子で、
「アリアさん? なぜ、ここに?」
「ミリカさん? 元気そうですね、ミリカさん。自領に戻っているとばかり思っていましたが。さてさて、さーて」
困った。
〈魔物図鑑:視覚版〉を使うと、王とミリカさん双方に〈擬態幻魔ミミクリーデビル〉という表示が出る。
では二体とも、〈擬態幻魔ミミクリーデビル〉が擬態した姿なのか。
しかし──明滅しているのだ。
〈擬態幻魔ミミクリーデビル〉の表示が明滅しているのだが、魔物名の明滅なんて、これは初めてのこと。どういう意味だろう?
〈魔物図鑑:視覚版〉のただのバグ? それとも『〈擬態幻魔ミミクリーデビル〉であって〈擬態幻魔ミミクリーデビル〉ではない』という哲学的な問答とか?
困ったというのは、これだ。あれがミリカさんの偽者だと、言いきれない。
ベロニカさんが、私のそばを駆け抜けて、ミリカ(?)へと〈死神のそよ風〉で斬りかかる。
「ミリカに擬態するなんて、いい度胸ねぇっっ!」
あれは擬態なのか? または違うのか。
迷っていると、王が動いた。といっても攻撃してきたわけではなく、読んでいた書物を閉じる。そして、にかっと笑い──破裂した。跡形もなく。
私は唖然として、王が消滅した空間を見つめる。いや、まった。いま何か動いたような。神速で、〈擬態幻魔ミミクリーデビル〉の核のようなものが、だからつまり──
隣にきたロクウさんが言う。
「あのミリカ殿は擬態による偽物。ということでいいのですか、先生?」
「ふむ、それが問題で──はい?」
見やると、ロクウさんにも重なるようにして、〈擬態幻魔ミミクリーデビル〉が表示されている。そして明滅しているのだ。
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