農家の娘さん、〖百合結婚できないバグ〗解消のためコツコツ努力していたら、人類最強になっていた。

狭間こやた

文字の大きさ
92 / 119

92,新方針。

しおりを挟む
〈擬態幻魔ミミクリーデビル〉の素材とは、脳味噌(視神経と目玉つき)だった。

 というか、まだ目玉がきょろきょろしている。意識はまだ残っている? 

 しかし、私の声は届くまい(耳がないし)。



 というわけで、魔改造鍬〈スーパーコンボ〉の糧とさせていただく。さらばです、〈擬態幻魔ミミクリーデビル〉さん。私のはじめての〈攻略不可能体〉でした。



 こうして〈攻略不可能体〉の完全なる素材を得たことで、〈スーパーコンボ〉の武装Lv.が4123から、Lv.5653へと上がる。

 ふむ。スキルツリー開拓は、ひとまず後回しにしておこうか。



 私物の入った箱を見つけた。私物といっても限られているけども、その中に〈緊急脱出トンカチ〉もあったので、試しに使ってみる。

 すると、ちゃんと【覇王魔窟】の外に出られた。ふむ。これはどういうことだろう。【覇王魔窟】内(つまり1階)へと引き返してみると、脳内に怠そうな男の声がしてきた。



〔あーー、なんだこれ?〕



〔知りませんよ。アリエルさんはどうしたんですか?〕



〔アリエルさんは、あー、よく分からんな。俺はこんなところで、何をしているんだろうな〕



 長生きしていると(まだ17歳だけど)、勝手に脳内会話をしてきた男から、哲学的なことを聞かれてくる日も来るのだ。

 ところでアリエルさんと『同僚』ならば、この彼もまた神の1柱ということだろうか。



「お名前は?」



〔ジョンだ、ジョン〕



 また神様にしては、普通な名前だよ。まぁアリエルさんも、女神にしてはよくある名前だったけど。神様だからといって、ブラックサンダーボルト三世とかいう名前じゃ、親しみも持てないよね。そもそも長くて覚えにくいし。



〔私はいま、どういう状況なんですか?〕



〔まってくれ。いま確認を取っているから。あーと。あんたは、メチャクチャ複雑な立場にいるようだな。つまり、あんたはいま『〈挑戦者ディファイアンス〉でありながら〈攻略不可能体〉でもある』ということだ。うわっ、メンド臭いなぁ、あんた〕



〔私、すすんでそうなったわけじゃないですよ。〈擬態幻魔ミミクリーデビル〉さんを撃破したからでしょうかね。いえ、相打ちになったからなのかなとも思うんですが〕



 首をかしげると、まだ中枢神経がゴリゴリ言っている。困るなぁ。肩こりじゃないんだからさ。



〔整理すると、私はまだ〈挑戦者ディファイアンス〉でもあるんですね?〕



〔攻略記録ポイントが抹消されていないから、そのようだなぁ〕



〔それは何よりです。ですが、すると問題がありますよね。私、いまは995階も受け持ちのようなんですけども。そこまで攻略したら、どうなるんです?〕



〔まぁ、あんた自身が995階まで行ったら、そこはスルーでいいんじゃないか。あんたが、あんた自身と戦える、超絶器用なら別だが違うだろうし。そもそも、あんたはとりあえず〈擬態幻魔ミミクリーデビル〉を撃破したんだろ? 単独で〕



 確かに、あれはほぼ単独といって良かったような。一応、ベロニカさんがミリカさんの相手をしてくれたのと、サンディさんが『いい感じの悲鳴』を上げてくれたのは、助けになったけども。



〔なら、このまま【覇王魔窟】の外に出ていっても構わないんですね?〕



〔なんでもかんでも、俺に聞くなよ!〕



〔だって、サポート担当じゃないですかっ!〕



〔だーから、正式なサポート担当はアリエルさんだって言ってんだろ!〕



〔いまはジョンさんが、代理サポートでしょ! ちゃんと仕事してくださいよ! こっちは、いろいろとストレスたまることが多発しているんですからね! ちょっとは、私の身になって考えてくださいよっっ!〕



〔…………すまん〕



〔いえいえ、分かっていただければいいんです〕



 あれ。私はいま、神様の1柱と思われる相手にブチ切れた? まぁいいか。私の言い分は、100%正しかったし、ちゃんと抗議するべきときはするのが良いのだ。



〔あー、そうだな。あんたの質問だが、答えはひとまずYESだ。【覇王魔窟】の新方針では、あんたは外の世界と、つまり人間世界へと自由に出入りすることができる〕



〔えーと、新方針というのは何でしょうか?〕



〔〈攻略不可能体〉の6体は、自由に【覇王魔窟】の外に出られるようになった。良かったなぁ。これであんたも、人間時代の友達やらと、堂々と会えるわけだ〕



 うーん。確かに、私がまたミリカさんたちと会えるのは良いことだけども。休耕中のカブ畑もあるし。

 ただその前に──〈攻略不可能体〉は、自由に外へ出られるようになった? 

 だから〈擬態幻魔ミミクリーデビル〉は、アーテル国の王様に成り代わって、好き勝手が出来たのかぁ。

 しかも、〈攻略不可能体〉はまだ、あと5体もいるのだ。人間世界にはこれからがガチの悪夢のような。



 ……そういえば、〈倦怠艶女ミスティナ〉さんが、私の体内にいない。寝息が聞こえてこないので確か。

 さすがに私が〈攻略不可能体〉として肉体を『再創造』させられたとき、どこかよそへ出されたようだぞ。



 すると私は、なぜかこう思ってしまった。

〈倦怠艶女ミスティナ〉さんを迎えにいかないとっっ!!



しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件

さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。 数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、 今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、 わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。 彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。 それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。 今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。   「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」 「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」 「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」 「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」   命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!? 順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場―― ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。   これは―― 【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と 【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、 “甘くて逃げ場のない生活”の物語。   ――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。 ※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。

追放された俺の木工スキルが実は最強だった件 ~森で拾ったエルフ姉妹のために、今日も快適な家具を作ります~

☆ほしい
ファンタジー
ブラック企業で過労死した俺は、異世界の伯爵家の三男・ルークとして生を受けた。 しかし、五歳で授かったスキルは「創造(木工)」。戦闘にも魔法にも役立たない外れスキルだと蔑まれ、俺はあっさりと家を追い出されてしまう。 前世でDIYが趣味だった俺にとっては、むしろ願ってもない展開だ。 貴族のしがらみから解放され、自由な職人ライフを送ろうと決意した矢先、大森林の中で衰弱しきった幼いエルフの姉妹を発見し、保護することに。 言葉もおぼつかない二人、リリアとルナのために、俺はスキルを駆使して一夜で快適なログハウスを建て、温かいベッドと楽しいおもちゃを作り与える。 これは、不遇スキルとされた木工技術で最強の職人になった俺が、可愛すぎる義理の娘たちとのんびり暮らす、ほのぼの異世界ライフ。

クラス最底辺の俺、ステータス成長で資産も身長も筋力も伸びて逆転無双

四郎
ファンタジー
クラスで最底辺――。 「笑いもの」として過ごしてきた佐久間陽斗の人生は、ただの屈辱の連続だった。 教室では見下され、存在するだけで嘲笑の対象。 友達もなく、未来への希望もない。 そんな彼が、ある日を境にすべてを変えていく。 突如として芽生えた“成長システム”。 努力を積み重ねるたびに、陽斗のステータスは確実に伸びていく。 筋力、耐久、知力、魅力――そして、普通ならあり得ない「資産」までも。 昨日まで最底辺だったはずの少年が、今日には同級生を超え、やがて街でさえ無視できない存在へと変貌していく。 「なんであいつが……?」 「昨日まで笑いものだったはずだろ!」 周囲の態度は一変し、軽蔑から驚愕へ、やがて羨望と畏怖へ。 陽斗は努力と成長で、己の居場所を切り拓き、誰も予想できなかった逆転劇を現実にしていく。 だが、これはただのサクセスストーリーではない。 嫉妬、裏切り、友情、そして恋愛――。 陽斗の成長は、同級生や教師たちの思惑をも巻き込み、やがて学校という小さな舞台を飛び越え、社会そのものに波紋を広げていく。 「笑われ続けた俺が、全てを変える番だ。」 かつて底辺だった少年が掴むのは、力か、富か、それとも――。 最底辺から始まる、資産も未来も手にする逆転無双ストーリー。 物語は、まだ始まったばかりだ。

死んだはずの貴族、内政スキルでひっくり返す〜辺境村から始める復讐譚〜

のらねこ吟醸
ファンタジー
帝国の粛清で家族を失い、“死んだことにされた”名門貴族の青年は、 偽りの名を与えられ、最果ての辺境村へと送り込まれた。 水も農具も未来もない、限界集落で彼が手にしたのは―― 古代遺跡の力と、“俺にだけ見える内政スキル”。 村を立て直し、仲間と絆を築きながら、 やがて帝国の陰謀に迫り、家を滅ぼした仇と対峙する。 辺境から始まる、ちょっぴりほのぼの(?)な村興しと、 静かに進む策略と復讐の物語。

最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。

みこみこP
ファンタジー
高校2年の夏。 高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。 地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。 しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。

真祖竜に転生したけど、怠け者の世界最強種とか性に合わないんで、人間のふりして旅に出ます

難波一
ファンタジー
"『第18回ファンタジー小説大賞【奨励賞】受賞!』" ブラック企業勤めのサラリーマン、橘隆也(たちばな・りゅうや)、28歳。 社畜生活に疲れ果て、ある日ついに階段から足を滑らせてあっさりゲームオーバー…… ……と思いきや、目覚めたらなんと、伝説の存在・“真祖竜”として異世界に転生していた!? ところがその竜社会、価値観がヤバすぎた。 「努力は未熟の証、夢は竜の尊厳を損なう」 「強者たるもの怠惰であれ」がスローガンの“七大怠惰戒律”を掲げる、まさかのぐうたら最強種族! 「何それ意味わかんない。強く生まれたからこそ、努力してもっと強くなるのが楽しいんじゃん。」 かくして、生まれながらにして世界最強クラスのポテンシャルを持つ幼竜・アルドラクスは、 竜社会の常識をぶっちぎりで踏み倒し、独学で魔法と技術を学び、人間の姿へと変身。 「世界を見たい。自分の力がどこまで通じるか、試してみたい——」 人間のふりをして旅に出た彼は、貴族の令嬢や竜の少女、巨大な犬といった仲間たちと出会い、 やがて“魔王”と呼ばれる世界級の脅威や、世界の秘密に巻き込まれていくことになる。 ——これは、“怠惰が美徳”な最強種族に生まれてしまった元社畜が、 「自分らしく、全力で生きる」ことを選んだ物語。 世界を知り、仲間と出会い、規格外の強さで冒険と成長を繰り広げる、 最強幼竜の“成り上がり×異端×ほのぼの冒険ファンタジー”開幕! ※小説家になろう様にも掲載しています。

追放された私の代わりに入った女、三日で国を滅ぼしたらしいですよ?

タマ マコト
ファンタジー
王国直属の宮廷魔導師・セレス・アルトレイン。 白銀の髪に琥珀の瞳を持つ、稀代の天才。 しかし、その才能はあまりに“美しすぎた”。 王妃リディアの嫉妬。 王太子レオンの盲信。 そして、セレスを庇うはずだった上官の沈黙。 「あなたの魔法は冷たい。心がこもっていないわ」 そう言われ、セレスは**『無能』の烙印**を押され、王国から追放される。 彼女はただ一言だけ残した。 「――この国の炎は、三日で尽きるでしょう。」 誰もそれを脅しとは受け取らなかった。 だがそれは、彼女が未来を見通す“預言魔法”の言葉だったのだ。

処理中です...