「リスポーン地点は魔王の城でした。」

師芭

文字の大きさ
10 / 26
第1章

Ⅰ―Ⅹ

しおりを挟む
 耳鳴りがさっきから止まない。ずっとキンキンしてる。

 理由は魔王に耳元で叫ばれたからです。
 
 
 「相棒!!元気になったら外に出ると良い!」
 
 
 まだ耳鳴りが続いている中、魔王が話しかけてきた。
 
 
 「外…?」
 
 
 そういえば、ここがどこだか分からないままだ。元気は良いとは言えないけど。とりあえず外に出てみよう。
 
 
 「じゃあ出てみるよ」
 
 
 「お?元気になったのか?」
 
 
 耳鳴りも収まってきたし、コクリと頷く。魔王はニッと笑って部屋から出て行った。僕はその後についていく。
 
 部屋を出た先は廊下で、真正面には別の部屋の扉がある。見回してみると、他にも同じ模様の扉が備え付けられていた。
 
 魔王の後ろを歩きながら廊下を行くと少しばかり広い空間に出た。その空間のほとんどを占めているカウンターには若い女の人が立っている。
 
 
 「あら?もうお供の方は大丈夫なのですか?」
 
 
 女の人は、僕を見るなり魔王にそう話しかけてきた。
 
 
 「あぁ、こう見えて丈夫なのだ」
 
 
 魔王は何故か誇らしげに答えている。僕としては丈夫ではない方だと思ってるんだけど…。
 
 
 「今夜はお泊りになられるんですか?」
 
 
 「あぁ。宜しく頼む」
 
 
 そういった内容の会話をする二人。ここは宿なのかな?この前の村よりも、随分と生活的な所だ。
 
 
 「少し、街を見てくる」
 
 
 そう言って魔王はカウンターを通り過ぎ、外に繋がっているらしい出口に向かって行った。
 僕もその後についていく。
 
 「お気を付けて、行ってらっしゃいませ」
 
 
 女の人は僕達にそう言いながら、軽くお辞儀をした。僕もそれに応える様におずおずとお辞儀をした。
 
 
 建物から出ると、眩しい光が目に入ってくる。目は見えないけど、沢山人の声が聞こえた。
 
 
 「ここが我が城から山を超えた先にある国だ」
 
 
 ここが今朝、言っていた人間の統治する国…。
 
 めちゃくちゃ活気あるんですけど!
 
 道行く人は誰もが笑顔で談笑しあっているし果物や海産を売っている店の人の声も混ざり合って、まるでお祭りみたいだ。
 
 
 「凄い…」
 
 
 思わず呆気にとられる。あの厳しい岩山を超えた先には、こんなにも繁栄している国があるんだ。
 僕は子供の様に目を輝かせている。
 
 
 「やはり、人間の国は美しい」
 
 
 魔王も藍色の目を輝かせていた。魔王は人間の国が好きなようだ。確かにモンスターばかりじゃ、人間独特の活気は出せないと思う。
 
 
 「ここでも情報収集するんだよね?」
 
 
 こんなに人が多い所で情報を集めるのは苦労しそう。
 
 
 「いや、今日はゆっくりするとしよう。たまにはノンビリとやった方が良いであろう?」
 
 
 おぉ…。じゃあ今日はこの街でゆっくりとするのか。そういや、あまり休める時間という時間が無かったなぁ。
 
 
 「うん、そうだよね…!」
 
 
 僕達は世界を冒険する旅から、少しの休息として街でゆっくりすることにした。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

妻からの手紙~18年の後悔を添えて~

Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。 妻が死んで18年目の今日。 息子の誕生日。 「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」 息子は…17年前に死んだ。 手紙はもう一通あった。 俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。 ------------------------------

人質5歳の生存戦略! ―悪役王子はなんとか死ぬ気で生き延びたい!冤罪処刑はほんとムリぃ!―

ほしみ
ファンタジー
「え! ぼく、死ぬの!?」 前世、15歳で人生を終えたぼく。 目が覚めたら異世界の、5歳の王子様! けど、人質として大国に送られた危ない身分。 そして、夢で思い出してしまった最悪な事実。 「ぼく、このお話知ってる!!」 生まれ変わった先は、小説の中の悪役王子様!? このままだと、10年後に無実の罪であっさり処刑されちゃう!! 「むりむりむりむり、ぜったいにムリ!!」 生き延びるには、なんとか好感度を稼ぐしかない。 とにかく周りに気を使いまくって! 王子様たちは全力尊重! 侍女さんたちには迷惑かけない! ひたすら頑張れ、ぼく! ――猶予は後10年。 原作のお話は知ってる――でも、5歳の頭と体じゃうまくいかない! お菓子に惑わされて、勘違いで空回りして、毎回ドタバタのアタフタのアワアワ。 それでも、ぼくは諦めない。 だって、絶対の絶対に死にたくないからっ! 原作とはちょっと違う王子様たち、なんかびっくりな王様。 健気に奮闘する(ポンコツ)王子と、見守る人たち。 どうにか生き延びたい5才の、ほのぼのコミカル可愛いふわふわ物語。 (全年齢/ほのぼの/男性キャラ中心/嫌なキャラなし/1エピソード完結型/ほぼ毎日更新中)

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

ゲームの悪役パパに転生したけど、勇者になる息子が親離れしないので完全に詰んでる

街風
ファンタジー
「お前を追放する!」 ゲームの悪役貴族に転生したルドルフは、シナリオ通りに息子のハイネ(後に世界を救う勇者)を追放した。 しかし、前世では子煩悩な父親だったルドルフのこれまでの人生は、ゲームのシナリオに大きく影響を与えていた。旅にでるはずだった勇者は旅に出ず、悪人になる人は善人になっていた。勇者でもないただの中年ルドルフは魔人から世界を救えるのか。

【完結】捨て去られた王妃は王宮で働く

ここ
ファンタジー
たしかに私は王妃になった。 5歳の頃に婚約が決まり、逃げようがなかった。完全なる政略結婚。 夫である国王陛下は、ハーレムで浮かれている。政務は王妃が行っていいらしい。私は仕事は得意だ。家臣たちが追いつけないほど、理解が早く、正確らしい。家臣たちは、王妃がいないと困るようになった。何とかしなければ…

主人公の恋敵として夫に処刑される王妃として転生した私は夫になる男との結婚を阻止します

白雪の雫
ファンタジー
突然ですが質問です。 あなたは【真実の愛】を信じますか? そう聞かれたら私は『いいえ!』『No!』と答える。 だって・・・そうでしょ? ジュリアーノ王太子の(名目上の)父親である若かりし頃の陛下曰く「私と彼女は真実の愛で結ばれている」という何が何だか訳の分からない理屈で、婚約者だった大臣の姫ではなく平民の女を妃にしたのよ!? それだけではない。 何と平民から王妃になった女は庭師と不倫して不義の子を儲け、その不義の子ことジュリアーノは陛下が側室にも成れない身分の低い女が産んだ息子のユーリアを後宮に入れて妃のように扱っているのよーーーっ!!! 私とジュリアーノの結婚は王太子の後見になって欲しいと陛下から土下座をされてまで請われたもの。 それなのに・・・ジュリアーノは私を後宮の片隅に追いやりユーリアと毎晩「アッー!」をしている。 しかも! ジュリアーノはユーリアと「アッー!」をするにしてもベルフィーネという存在が邪魔という理由だけで、正式な王太子妃である私を車裂きの刑にしやがるのよ!!! マジかーーーっ!!! 前世は腐女子であるが会社では働く女性向けの商品開発に携わっていた私は【夢色の恋人達】というBLゲームの、悪役と位置づけられている王太子妃のベルフィーネに転生していたのよーーーっ!!! 思い付きで書いたので、ガバガバ設定+矛盾がある+ご都合主義。 世界観、建築物や衣装等は古代ギリシャ・ローマ神話、古代バビロニアをベースにしたファンタジー、ベルフィーネの一人称は『私』と書いて『わたくし』です。

冷遇王妃はときめかない

あんど もあ
ファンタジー
幼いころから婚約していた彼と結婚して王妃になった私。 だが、陛下は側妃だけを溺愛し、私は白い結婚のまま離宮へ追いやられる…って何てラッキー! 国の事は陛下と側妃様に任せて、私はこのまま離宮で何の責任も無い楽な生活を!…と思っていたのに…。

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

処理中です...