Marriage Interview~異種お見合い婚~

土筆祐依

文字の大きさ
70 / 201
朧月夜の章

朧月夜の章㉕

しおりを挟む

 

 翌朝。

 朧月夜は華やかな花嫁衣装を身に纏い、若紫に別れの挨拶をしに来た。
 紅白の梅に、目映い金糸で刺繍された鶴が舞う最高級の打掛け。高価な花嫁衣装と嫁入り道具は全て、天帝が朧月夜の為に用意したものだ。

 家を飛び出した朧月夜には婚姻費用を出してくれる身内がいない。身一つで嫁がせるのはあまりにも不憫だと、天帝は婚姻に掛かる費用を全額負担してくれた。

 黒狐族王女・若紫からは多額の持参金を贈られ、朧月夜は恐縮するばかりだ。

「とても美しいわ。朧月夜、幸せになるのよ」

「王女様のお陰で今があります。あの日、私を救い出して下さってありがとうございました」

「私は切っ掛けを作っただけですわ。幸せを掴み取ったのは貴女自身。・・・本当に、おめでとう。貴方の未来が輝かしいものであるように、私は心を込めて祈りましょう」

「光栄です。王女様もお相手が決まったら是非遊びにいらして下さい。夫の領地はフルーツも良く実るそうですので」

「あら、それは魅力的ね。私葡萄が大好きなの」

「覚えておきます」

「大粒の黒葡萄でよろしくね」

「はい」

「緑の葡萄も好きよ」

 本当に葡萄が好きなのだろう。次々出てくるお願いに朧月夜が笑うと、扉をノックする音が聞こえた。

「朧月夜様、お時間です」

 玻璃が迎えに来た。
 いよいよ出立の時だ。朧月夜は最後に深く一礼し、玻璃と共に若紫の部屋を去った。
 
 傷付き丸まった背中は漸く本来の姿を取り戻した。迷い無く進む後ろ姿は力強く、美しい。

「・・・美しき朧月夜。貴女は正しい相手を選んだわ。私の方こそ、ありがとう」

 若紫は小さく呟いた。その声は朧月夜に届かなかったが、それで構わない。彼を選んだのは間違いなく朧月夜の意思だから。
 やや強面だが、包容力溢れる優しい虎は彼女にピッタリだ。
 彼なら安心して朧月夜を託せる。

 折角誘われたのだから、麦畑が黄金に輝く頃に彼女に会いに行こう。

 その時は、私の『夫』と共に。


「ディアゴさん、おめでとうございます!」

「これ、プリンです。朧月夜さんと一緒に食べて下さいね」

 空とイフラースは満面の笑みで箱入りのプリンをディアゴに差し出した。
 この量を買うとなると一体何時から並んでいたのだろうか?気遣いが嬉しくもあり申し訳なかった。

「・・・また朝一で並んだのか?」

「「はい!」」

「ありがとう。朧月夜と一緒に食べよう」

「是非そうして下さい」

「スプーンと保冷剤もありますからね」

 準備の良い二人にディアゴは笑った。

 出立の日。

 ディアゴを見送ろうと空、イフラース、ミハエル、ユアン、レオンハルトは正門前に駆け付けた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

とっていただく責任などありません

まめきち
恋愛
騎士団で働くヘイゼルは魔物の討伐の際に、 団長のセルフイスを庇い、魔法陣を踏んでしまう。 この魔法陣は男性が踏むと女性に転換するもので、女性のヘイゼルにはほとんど影響のない物だった。だか国からは保証金が出たので、騎士を辞め、念願の田舎暮らしをしようとしたが!? ヘイゼルの事をずっと男性だと思っていたセルフイスは自分のせいでヘイゼルが職を失っただと思って来まい。 責任を取らなければとセルフイスから、 追いかけられる羽目に。

初夜に暴言を吐いた夫は後悔し続ける──10年後の償い【完結保証】

星森 永羽
恋愛
王命により、辺境伯ロキアのもとへ嫁いだのは、金髪翠眼の美しき公爵令嬢スフィア。 だが、初夜に彼が告げたのは、愛も権限も与えないという冷酷な宣言だった。噂に踊らされ、彼女を「穢れた花嫁」と罵ったロキア。 しかし、わずか一日でスフィアは姿を消し、教会から届いたのは婚姻無効と慰謝料請求の書状──。 王と公爵の怒りを買ったロキアは、爵位も領地も名誉も奪われ、ただの補佐官として生きることに。 そして十年後、運命のいたずらか、彼は被災地で再びスフィアと出会う。 地位も捨て、娘を抱えて生きる彼女の姿に、ロキアの胸に去来するのは、悔恨と赦しを乞う想い──。 ⚠️本作はAIの生成した文章を一部に使用しています。

【完結】一番腹黒いのはだあれ?

やまぐちこはる
恋愛
■□■ 貧しいコイント子爵家のソンドールは、貴族学院には進学せず、騎士学校に通って若くして正騎士となった有望株である。 三歳でコイント家に養子に来たソンドールの生家はパートルム公爵家。 しかし、関わりを持たずに生きてきたため、自分が公爵家生まれだったことなどすっかり忘れていた。 ある日、実の父がソンドールに会いに来て、自分の出自を改めて知り、勝手なことを言う実父に憤りながらも、生家の騒動に巻き込まれていく。

【完結】婚約破棄されたので、引き継ぎをいたしましょうか?

碧井 汐桜香
恋愛
第一王子に婚約破棄された公爵令嬢は、事前に引き継ぎの準備を進めていた。 まっすぐ領地に帰るために、その場で引き継ぎを始めることに。 様々な調査結果を暴露され、婚約破棄に関わった人たちは阿鼻叫喚へ。 第二王子?いりませんわ。 第一王子?もっといりませんわ。 第一王子を慕っていたのに婚約破棄された少女を演じる、彼女の本音は? 彼女の存在意義とは? 別サイト様にも掲載しております

【完結】 メイドをお手つきにした夫に、「お前妻として、クビな」で実の子供と追い出され、婚約破棄です。

BBやっこ
恋愛
侯爵家で、当時の当主様から見出され婚約。結婚したメイヤー・クルール。子爵令嬢次女にしては、玉の輿だろう。まあ、肝心のお相手とは心が通ったことはなかったけど。 父親に決められた婚約者が気に入らない。その奔放な性格と評された男は、私と子供を追い出した! メイドに手を出す当主なんて、要らないですよ!

酒の席での戯言ですのよ。

ぽんぽこ狸
恋愛
 成人前の令嬢であるリディアは、婚約者であるオーウェンの部屋から聞こえてくる自分の悪口にただ耳を澄ませていた。  何度もやめてほしいと言っていて、両親にも訴えているのに彼らは総じて酒の席での戯言だから流せばいいと口にする。  そんな彼らに、リディアは成人を迎えた日の晩餐会で、仕返しをするのだった。

好きな人と結婚出来ない俺に、姉が言った

しがついつか
恋愛
グレイキャット伯爵家の嫡男ジョージには、平民の恋人がいた。 彼女を妻にしたいと訴えるも、身分の差を理由に両親から反対される。 両親は彼の婚約者を選定中であった。 伯爵家を継ぐのだ。 伴侶が貴族の作法を知らない者では話にならない。 平民は諦めろ。 貴族らしく政略結婚を受け入れろ。 好きな人と結ばれない現実に憤る彼に、姉は言った。 「――で、彼女と結婚するために貴方はこれから何をするつもりなの?」 待ってるだけでは何も手に入らないのだから。

【完結】お父様の再婚相手は美人様

すみ 小桜(sumitan)
恋愛
 シャルルの父親が子連れと再婚した!  二人は美人親子で、当主であるシャルルをあざ笑う。  でもこの国では、美人だけではどうにもなりませんよ。

処理中です...