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葵の章
葵の章⑱
しおりを挟む最後の一人、ミハエルはニコニコ笑いながら着席した。
「葵ちゃん!今日も可愛いね!」
「軽い!けど何か慣れてきたわ・・・」
「本当?嬉しいな」
ミハエルは優しい顔で葵を見ると、プレイマットにカードを並べ始める。
「今日で最後なんて、俺嫌だからさ。全力で戦うからよろしくね!」
「望む所よ。私も一切手加減しないから」
ミハエルが選んだ基本の二枚は風を操る『風神の犬神』に大きな杖を持つ『賢者の犬神』。
呪具・武具の四枚には『運命の輪』『朱雀』『オーロラの盾』『流星群』を選択した。
「これで葵ちゃんに勝つよ」
「良いんじゃない?私も負けないんだから!」
ジャンケンの結果、先行は葵、後攻はミハエルだ。二人は五枚カードを引き、戦法を練っていく。
最後の戦の始まりである。
勝負は意外にも一進一退の攻防が続いていた。
葵は驚いていた。
初心者とは思えぬ力をミハエルは発揮していた。
『賢者の犬神』と『運命の輪』の組み合わせが中々に厄介だ。
この組み合わせはプレイヤーが二回目以降に引くカードを一枚から二枚に増やす効果がある。
どれだけミハエルの分が悪くなっても、運命の輪がある限りカードを二枚引ける。
手持ちのカードが増えるリスクもあるが、怖いのは『二枚使い』カードだ。
一部のカードは二枚で使用しなければ効果が発揮できないものがあり、組み合わせれば攻撃力が倍になる。
ミハエルはそれらを上手く使い、葵の『雅楽の犬神』を抑え込んでいた。
葵の攻撃も悉く弱体化される。
何とか運命の輪を剥ぎ取ってやりたかったが、ミハエルはギリギリで躱していた。
二枚同時引きは計算外だったが、そろそろ仕掛けが発動する頃だ。
実は葵は少しだけカードに小細工をしていた。
玻璃に頼んで仕込んだのは、全てのカードを無効化する『終焉の笛の音』。
大会で準優勝した時に貰ったレアカードだ。全てのカードが無効化されるが、攻略法は兄が見つけてくれた。
攻略法を知る葵はそのカードを出されても回避できるが、知らない人間が手にするとどうなるか。
その瞬間に見せる表情を葵は見たかった。それこそが相手がひた隠しにする本性だろうから。
ミハエルがカードを引く。葵はドキドキしながらミハエルを見た。
僅かな瞬間を見逃さないように、じっとミハエルだけを見つめた。
ミハエルはカードを見ると、少しだけ首を傾げた。
じっとカードを睨んで考えた後、ミハエルが出したカードは『明けの明星』。
光と共に夜が明ける。
中央に輝く金星のカードが持つ意味は『新たなる希望』。
このカードには二つの選択肢があり、プレイヤーはどちらか一方を選択できる。
一つは呪術系攻撃防御としての使い道。
光属性のカードは闇属性である『無音の静寂』を抑え込み、葵のカードを弱体化できる。
そして、もう一つの選択肢が。
「リセット。葵ちゃん、今度はイカサマ抜きで勝負しよう」
・・・そう、振り出しだった。
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