Marriage Interview~異種お見合い婚~

土筆祐依

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葵の章

葵の章㉓

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「「「えっ!!」」」

 イフラース、ユアン、レオンハルトは驚いて声を上げた。

「俺も驚いたんですが、お二人の気遣いが嬉しくて」

「しっかし『キープ』って何だ?んなルールあったか?」

「で、でも良かったです。空くんはまだ帰ったら駄目ですよ」

「そうですよ!まだチャンスはありますから!」

「はい!」

 エドワードが帰国したと知った空は自分も帰った方が良いのか悩んだ。
 悩む空を引き留めたのは何と玉鬘と朝顔だ。

「空はまだ帰ったら駄目だよ。キープしておいたから」

「今帰るなんて勿体ないねぇ。じゃ、私がキープしておいてあげるよ」

 二人に呼び出されて告げられたのは新制度の『キープ』だ。

 最終候補として決定打に欠けるが、相手の辞退・帰国を避けるために設けられた制度だそうだ。

 キープされた候補者は勝手に辞退も帰国も出来ない。
 立場が宙ぶらりんだと怒る候補者もいるだろうが、まだ帰りたくないと思っていた空には嬉しい制度だった。

 本当に欲しかった女性からのキープは貰えなかったが、空は落ち込まなかった。


 もう少ししたら、また君に会える。そんな予感がした。
 だから前を向いて進む。



 二週間後、ミハエルと葵は鳥の国最大のレジャーランドにいた。

 誰もが振り返る超絶美人が、右手にチュロス、左手に限定カップの飲み物を持っていて、人気キャラクターの容器に入ったポップコーンを首からぶら下げている。
 キャラクターを模した大きな帽子は耳を隠すには丁度良い。

 全力で人生初のレジャーランドを楽しむ葵を、ミハエルは夢中で撮影していた。

「葵ちゃん、可愛い~~!!」

「ねぇ!次はアレに乗りたい!」

 葵が指差したのは世界一の高低差を誇るジェットコースター。ミハエルは顔を引き攣らせた。

「いや!!アレは怖いでしょ!」

「怖いけど乗るの!さぁ!行くわよ!」

「葵ちゃ~~ん!お願い!それだけはっ!!」

「い~~やっ!」

 葵はケラケラ笑いながらミハエルの手を取り、ジェットコースター乗り場まで引っ張っていく。

 嫌がるミハエルを奥の座席に押し込み、レバーを下げる。
 チラッとミハエルを見ると、彼は何かをブツブツ呟いていた。

「何言ってんの?」

「天国の爺やに、俺、もうすぐそこに行くかも・・・ごめんって謝っていた」

「あははっ!な~~に言ってるの。まだ逝くには早いから!」

「でもさ、だって」

「でもでもだってじゃないの!爺やさんも追い返すだろうし、私も無理矢理連れ戻すから!」

「え?どうやって?」

「ふふ」

 私の可愛い旦那様。
 無事ジェットコースターを乗り越えたら、ご褒美をあげなくては。

「私からチューしてあげる!」

「俺頑張る!!」

「は~~い!では出発しま~~す!」

 スタッフのアナウンスの後にベルが鳴る。二人を乗せたジェットコースターはゆっくりゆっくり頂上目掛けて登っていく。
 ミハエルは既に失神しかけていたが、葵はワクワクが止まらなかった。

 自由を手に入れ、楽しくて妻想いな旦那様を手に入れた。

 何不自由ない鳥かごから飛び出した以上、これからは自分の行動に責任を持たなくてはならない。
 想像もしないような困難に直面するときもあるだろう。

 夫に守って貰うだけでは駄目だ。自分も家族を守る為に力を付けなくては。

 まだ何をすれば良いのか分からないけど、彼となら見つかりそうな気がする。
 自分がここに来た意味がきっとあるはずだから。


「ミハエル~~!ほら、見て!」

「・・・・・・」

「もう!」

 ジェットコースターは一番高い位置で一旦停止する。
 その時見た光景を葵は忘れないだろう。

 空が近く、レジャーランド全貌どころかその先の海まで見渡せる。
 あのまま家にいたら、決して見られなかった風景だ。

 もっと見たい。そう思ったが、その願いも空しくジェットコースターは急降下を始めたのだった。

「きゃああああああ!!!!」

「葵ちゃ~~~ん!!」



 無事ジェットコースターを乗り切った二人だが、ミハエルはフラフラで葵は笑いながら彼を支えた。

 余裕たっぷりの笑顔は見る影もない。
 でも、私の旦那様はどんな時だって一番格好良い、正統派イケメンである。

 元気を出して貰おうとほっぺにチューをする。
 ミハエルは驚いた顔をしていたが、葵は悪戯が成功した子どものような顔で笑った。

「口とは言ってないわよ!」

「そりゃないよ・・・・」

 がっくり肩を落とすミハエルを見て葵は笑った。
 その笑顔はズルい。ならば自分からキスしようとしたが、ヒラリと躱されてしまった。

「ねぇ!次はお化け屋敷行きたい」

 ニコニコしながらお願いされると何でも言うことを聞きたくなる。

 これはお化けが苦手なんて言えない。

 葵が望む所に連れて行くと約束したからには腹を括ろう。
 それが例え、世界一怖いと称される巨大迷路お化け屋敷でも。

 体を張って愛する妻を守ろうではないか・・・!

「葵ちゃんの望むままに!」

「そうでなきゃね!!」

 葵は嬉しそうにミハエルに抱きついた。
 ミハエルも嬉しそうに抱きしめ返してくれる。
 優しくて大きな手。彼の優しさが伝わってくる。
 彼は言葉でも伝えてくれるが、葵はふと気付いた。

 ・・・私の気持ちは伝わっているだろうかと。

 思い出すのはあっち連れてけこっち連れてけと我が儘しか言っていない自分の姿だ。

 これはいけない。今すぐ伝えなくては。

「ミハエル、大好きよ!これからもずっと一緒にいようね!」

「うん!」

 ミハエルは頬を染めて嬉しそうに笑った。こんなに喜んでくれるなら、これからは素直に告げよう。


 貴方が好き!世界で一番愛しているのだと!





 ~葵の章・終わり~
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