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明石の章
明石の章㉚
しおりを挟む人違いだと気付いた朱寧の血の気が引いた瞬間、天井から檻が降ってきた。
ガシャンっ!!と無情な音が響く。朱寧は檻の中に閉じ込められてしまった。
龍の力でもびくともしない。
何とか脱出しようと足掻く朱寧に無駄だと常磐は告げた。
「おてつきだからね。貴方は今から三十分、そこから動けないわ」
「そんな!」
「まぁまぁ、方向性は間違っていないわ。だから私を引き当てた。直球すぎる答えを選んだ場合、偽物は女装した弟達だし」
女装した弟達。想像した朱寧はゾッとした。
「ヒドい想像をしているかもしれないけど、末の弟は姉さんそっくりよ?胸がぺったんこな明石姉さん。悪くないでしょう?」
「ま、まあ・・・そうですね」
朱寧は美しい弟君を想像する。
まさに紅顔の美少年だ。何と麗しい姉弟なのだろう。朱寧は心の中で明石姉弟を賞賛した。
その素直さがツボだったのか、常磐が笑った。
「あはは!貴方、面白い人ね。ねぇ、名前は?」
「龍族の朱寧です」
「イケメンの朱寧さん。ここで三十分過ごすのは退屈でしょう?私が話し相手になってあげる」
常磐はニヤリと笑った。
オマールも人違いに気付いて思考が停止した。
その隙に奥から出て来た犬の武官達にオマールは縛り上げられ転がされてしまった。
愛宕は申し訳なさそうに屈み、オマールに出来るだけ視線を合わせた。
「も、申し訳ありません。三十分耐えて下さい。おてつきなので一旦休止となります」
「・・・理解はしましたが、随分手荒というか・・・」
「屋外なので、仕方なく・・・。貴方は強そうですし」
「確かに鍛えてはいますが、誓って女性に手を上げたりはしません。貴女のような素敵な女性なら尚更」
「す、素敵ですか??」
「ええ。明石姫のきょうだいは皆美しいのですね」
愛宕は恥ずかしそうにオマールから視線を逸らす。その頬はピンクに染まっていた。
「わ、私は人見知りなので、きょうだいの中でも目立たないんです。その、名前を伺っても良いですか?」
「有鱗目族のオマールです。愛宕姫、お見知りおきを」
姫。
そう呼ばれたのは初めてで、愛宕は恥ずかしくて両手で顔を覆った。
ライバル二人がお手つきで足止めを喰らっているとは知らず、レオンハルトはマルチーズの文官と共に図書室へ駆け込んだ。
「ついでに花言葉の辞典も探してくれ!大至急で頼む!!」
「は、ハィイイ!!」
マルチーズ文官は司書に事情を話すと、ふっくらと優しげな黒狐族の女性司書は辞典のある場所まで案内してくれた。
「こちらですね」
「助かる!ありがとうな!」
マルチーズ文官は猫族の大男からやっと解放され、逃げるように走り去った。
レオンハルトは巻末にある一覧を見ると、その植物の頁を開く。
花言葉は「待望」「愛嬌」「真実は一つ」。
可愛らしい見た目に合う言葉が並んでいた。
・・・ただ、もう一つ。
その言葉を見た瞬間、レオンハルトは信じたくなくて楽団へ向かった。
楽団控え室に貼ってあるスケジュール表を見てほぼ確信に変わった。
天帝のカードは答えを知るとこれ程明確なヒントはない。
レオンハルトはマップを見る。
その場所は神殿から一番遠い場所に建てられていた。急がなければならなのに足が重たくて前へ進まない。
間違いであれば良いと思いながら、レオンハルトはその場所へ向かった。
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