Marriage Interview~異種お見合い婚~

土筆祐依

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浮舟の章

浮舟の章⑮

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 是非モデルになって頂きたい。
 浮舟は大人しく若紫の後を付いて行った。

『甘い物はお好きですか?』

『まぁ、普通に』

 若紫は浮舟にメニューを差し出した。

『何でも好きな物を注文して下さい』

 浮舟はフルーツパフェを注文した。貧しい幼少期を過ごした浮舟にとってフルーツは高級品だ。
 美しくフルーツが盛られたパフェに浮舟は目を輝かせた。

『フルーツが好きなんですね』

『まぁ、はい』

 浮舟は大きくカットされたウサギ林檎を取ると、そのまま囓った。
 こんなに甘い林檎は生まれて初めて食べた。浮舟上機嫌で食べ進めた。

『ねぇ、浮舟。聞いて良い?何故あの病室に?』

『・・・王女様ならご存じでしょう?』

『ええ、まあ』

 若紫はクリームブリュレを食べながら優雅に笑った。

『浮舟、仇討ちは諦めて頂けませんか?』

『何故?』

『必要ないからです』

 若紫の表情は変わらない。
 だが空気が一変した。

『・・・王女様が代わりに手を下して下さる、と?』

『ええ。その代わりに明石にはあるお役目を引き受けて貰いますが』

『・・・お役目、とは?』

『ふふ、知りたいですか?』

 若紫は妖しく笑った。

『浮舟、貴女は美しい。流石は番付六位。その才能も実に、相応しいですわ』

 そして浮舟は呪われた六種族とのお見合いを持ちかけられた。

『・・・結婚に憧れも願望もありませんが、私のお願いを聞いて頂けるなら引き受けます』

『何でしょう?』

『私のモデルになって下さい』

 初めて出会えたミューズ。

 たった一枚で構わない。彼女を自分の手で表現したかった。

『良いでしょう』

 若紫はあっさり了承した。

 その日から浮舟は全ての力を注ぎ、若紫を描いた。

 目の前の若紫は例えるなら『仮』の若紫だ。これは彼女の真の姿ではない。
 天から与えられた才能を惜しみなく使い、若紫の美しさと神秘を表現しなければならない。

 自分はこの絵を描くために産まれたのだ。
 
 寝る間も惜しんで絵に没頭した。
 目の前に座る若紫はただ美しく微笑んでいる。

 ああ、何と美しいミューズだろう。浮舟は賞賛の言葉しか思いつかなかった。

 ミューズは浮舟との約束をちゃんと守ってくれた。
 明石をいじめた馬鹿女達は相応の罰を受けた。

 表向きは謹慎としているが、あの馬鹿女達に待ち受ける未来は決して明るくはない。
 宰相の父親は何とか娘を庇おうとしたが、絶対的プリンセス・若紫の前では余りにも無力だった。

 あの女どもは明石と同じ運命を辿る。
 謹慎明けは閑職に追いやられ、徐々に存在を忘れ去れていく。自主退職など決して許されない。
 室長も解任され、イジメに加担した同期達も移動を余儀なくされた。

 宰相は王に泣きつき、何とか地位を奪われずに済んだが弱みを握られた。侯爵と伯爵はそろって地方に飛ばされた。

 若紫は貴族が神殿の人事に介入したことを重く見ていた。

 爵位剥奪をちらつかせると彼らは必死に弁明し、左遷を受け入れた。
 父親達は娘を連れて行かなかった。この先娘達がどの様な運命を辿るか知っていてもだ。

 彼らはあれだけ大事にしていた娘をあっさり見捨てたのだ。

『満足して頂けました?』

 微笑む若紫は美しく、浮舟はゾクゾクした。
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