165 / 201
浮舟の章
浮舟の章⑮
しおりを挟む是非モデルになって頂きたい。
浮舟は大人しく若紫の後を付いて行った。
『甘い物はお好きですか?』
『まぁ、普通に』
若紫は浮舟にメニューを差し出した。
『何でも好きな物を注文して下さい』
浮舟はフルーツパフェを注文した。貧しい幼少期を過ごした浮舟にとってフルーツは高級品だ。
美しくフルーツが盛られたパフェに浮舟は目を輝かせた。
『フルーツが好きなんですね』
『まぁ、はい』
浮舟は大きくカットされたウサギ林檎を取ると、そのまま囓った。
こんなに甘い林檎は生まれて初めて食べた。浮舟上機嫌で食べ進めた。
『ねぇ、浮舟。聞いて良い?何故あの病室に?』
『・・・王女様ならご存じでしょう?』
『ええ、まあ』
若紫はクリームブリュレを食べながら優雅に笑った。
『浮舟、仇討ちは諦めて頂けませんか?』
『何故?』
『必要ないからです』
若紫の表情は変わらない。
だが空気が一変した。
『・・・王女様が代わりに手を下して下さる、と?』
『ええ。その代わりに明石にはあるお役目を引き受けて貰いますが』
『・・・お役目、とは?』
『ふふ、知りたいですか?』
若紫は妖しく笑った。
『浮舟、貴女は美しい。流石は番付六位。その才能も実に、相応しいですわ』
そして浮舟は呪われた六種族とのお見合いを持ちかけられた。
『・・・結婚に憧れも願望もありませんが、私のお願いを聞いて頂けるなら引き受けます』
『何でしょう?』
『私のモデルになって下さい』
初めて出会えたミューズ。
たった一枚で構わない。彼女を自分の手で表現したかった。
『良いでしょう』
若紫はあっさり了承した。
その日から浮舟は全ての力を注ぎ、若紫を描いた。
目の前の若紫は例えるなら『仮』の若紫だ。これは彼女の真の姿ではない。
天から与えられた才能を惜しみなく使い、若紫の美しさと神秘を表現しなければならない。
自分はこの絵を描くために産まれたのだ。
寝る間も惜しんで絵に没頭した。
目の前に座る若紫はただ美しく微笑んでいる。
ああ、何と美しいミューズだろう。浮舟は賞賛の言葉しか思いつかなかった。
ミューズは浮舟との約束をちゃんと守ってくれた。
明石をいじめた馬鹿女達は相応の罰を受けた。
表向きは謹慎としているが、あの馬鹿女達に待ち受ける未来は決して明るくはない。
宰相の父親は何とか娘を庇おうとしたが、絶対的プリンセス・若紫の前では余りにも無力だった。
あの女どもは明石と同じ運命を辿る。
謹慎明けは閑職に追いやられ、徐々に存在を忘れ去れていく。自主退職など決して許されない。
室長も解任され、イジメに加担した同期達も移動を余儀なくされた。
宰相は王に泣きつき、何とか地位を奪われずに済んだが弱みを握られた。侯爵と伯爵はそろって地方に飛ばされた。
若紫は貴族が神殿の人事に介入したことを重く見ていた。
爵位剥奪をちらつかせると彼らは必死に弁明し、左遷を受け入れた。
父親達は娘を連れて行かなかった。この先娘達がどの様な運命を辿るか知っていてもだ。
彼らはあれだけ大事にしていた娘をあっさり見捨てたのだ。
『満足して頂けました?』
微笑む若紫は美しく、浮舟はゾクゾクした。
0
あなたにおすすめの小説
とっていただく責任などありません
まめきち
恋愛
騎士団で働くヘイゼルは魔物の討伐の際に、
団長のセルフイスを庇い、魔法陣を踏んでしまう。
この魔法陣は男性が踏むと女性に転換するもので、女性のヘイゼルにはほとんど影響のない物だった。だか国からは保証金が出たので、騎士を辞め、念願の田舎暮らしをしようとしたが!?
ヘイゼルの事をずっと男性だと思っていたセルフイスは自分のせいでヘイゼルが職を失っただと思って来まい。
責任を取らなければとセルフイスから、
追いかけられる羽目に。
初夜に暴言を吐いた夫は後悔し続ける──10年後の償い【完結保証】
星森 永羽
恋愛
王命により、辺境伯ロキアのもとへ嫁いだのは、金髪翠眼の美しき公爵令嬢スフィア。
だが、初夜に彼が告げたのは、愛も権限も与えないという冷酷な宣言だった。噂に踊らされ、彼女を「穢れた花嫁」と罵ったロキア。
しかし、わずか一日でスフィアは姿を消し、教会から届いたのは婚姻無効と慰謝料請求の書状──。
王と公爵の怒りを買ったロキアは、爵位も領地も名誉も奪われ、ただの補佐官として生きることに。
そして十年後、運命のいたずらか、彼は被災地で再びスフィアと出会う。
地位も捨て、娘を抱えて生きる彼女の姿に、ロキアの胸に去来するのは、悔恨と赦しを乞う想い──。
⚠️本作はAIの生成した文章を一部に使用しています。
【完結】一番腹黒いのはだあれ?
やまぐちこはる
恋愛
■□■
貧しいコイント子爵家のソンドールは、貴族学院には進学せず、騎士学校に通って若くして正騎士となった有望株である。
三歳でコイント家に養子に来たソンドールの生家はパートルム公爵家。
しかし、関わりを持たずに生きてきたため、自分が公爵家生まれだったことなどすっかり忘れていた。
ある日、実の父がソンドールに会いに来て、自分の出自を改めて知り、勝手なことを言う実父に憤りながらも、生家の騒動に巻き込まれていく。
【完結】婚約破棄されたので、引き継ぎをいたしましょうか?
碧井 汐桜香
恋愛
第一王子に婚約破棄された公爵令嬢は、事前に引き継ぎの準備を進めていた。
まっすぐ領地に帰るために、その場で引き継ぎを始めることに。
様々な調査結果を暴露され、婚約破棄に関わった人たちは阿鼻叫喚へ。
第二王子?いりませんわ。
第一王子?もっといりませんわ。
第一王子を慕っていたのに婚約破棄された少女を演じる、彼女の本音は?
彼女の存在意義とは?
別サイト様にも掲載しております
【完結】 メイドをお手つきにした夫に、「お前妻として、クビな」で実の子供と追い出され、婚約破棄です。
BBやっこ
恋愛
侯爵家で、当時の当主様から見出され婚約。結婚したメイヤー・クルール。子爵令嬢次女にしては、玉の輿だろう。まあ、肝心のお相手とは心が通ったことはなかったけど。
父親に決められた婚約者が気に入らない。その奔放な性格と評された男は、私と子供を追い出した!
メイドに手を出す当主なんて、要らないですよ!
酒の席での戯言ですのよ。
ぽんぽこ狸
恋愛
成人前の令嬢であるリディアは、婚約者であるオーウェンの部屋から聞こえてくる自分の悪口にただ耳を澄ませていた。
何度もやめてほしいと言っていて、両親にも訴えているのに彼らは総じて酒の席での戯言だから流せばいいと口にする。
そんな彼らに、リディアは成人を迎えた日の晩餐会で、仕返しをするのだった。
好きな人と結婚出来ない俺に、姉が言った
しがついつか
恋愛
グレイキャット伯爵家の嫡男ジョージには、平民の恋人がいた。
彼女を妻にしたいと訴えるも、身分の差を理由に両親から反対される。
両親は彼の婚約者を選定中であった。
伯爵家を継ぐのだ。
伴侶が貴族の作法を知らない者では話にならない。
平民は諦めろ。
貴族らしく政略結婚を受け入れろ。
好きな人と結ばれない現実に憤る彼に、姉は言った。
「――で、彼女と結婚するために貴方はこれから何をするつもりなの?」
待ってるだけでは何も手に入らないのだから。
【完結】お父様の再婚相手は美人様
すみ 小桜(sumitan)
恋愛
シャルルの父親が子連れと再婚した!
二人は美人親子で、当主であるシャルルをあざ笑う。
でもこの国では、美人だけではどうにもなりませんよ。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる