Marriage Interview~異種お見合い婚~

土筆祐依

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三次審査編

三次審査⑦

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 鏡の池からカフェスペースに戻った空は、隅っこの机で一人ポツンと座るユアンを見かけたので声を掛けた。

「ユアンさん」

「そ、空くんか・・・びっくりしたよ」

 ユアンの顔は真っ青を越えて白くなっていた。
 
 ギョッとした空は急いでコーヒーメーカーまで走り、ホットコーヒーのボタンを押す。温かなコーヒーが完成すると、直ぐにユアンに差し出した。ユアンは指先まで真っ白になっていて、ありがとうと言いながらホットコーヒーを受け取った。

「一体何があったんですか!?」

「正確には今からかな・・・」

「え・・・?」

「君も見ただろう?ミハエル殿の惨状を。不安になって朝顔さんと見合いをした知り合いにどんな様子だったか聞いて回ったんだ。・・・皆ミハエル殿と同じで、疲れ切った顔をして下を向いていたよ・・・」

「え、ええっ!?」

「頑張れよ、心を強く持てと全員に言われてね。もう不安で不安で・・・」

 そこまで聞いた空も恐怖しかなかった。
 
 ユアンは温かなコーヒーを飲み終わっても白いまま。不安になった空は途中まで付いていこうかと提案したが、丁重に断られた。

「終わった後にミハエル殿とイフラース殿を呼んで、四人で食事に行く方が嬉しいな。一人だと益々落ち込みそうで」

「ミハエルさんにお店を紹介して貰います。何が良いですか?」

「美味しいお肉が食べたいな。ステーキとか。分厚いお肉を食べると元気が出ると思うんだ」

「・・・食べられますか・・・?」

「お肉は正義だからね」

「まぁ、確かに」

 少し表情が和らいだユアンだが、その後直ぐに名前を呼ばれて神兵訓練場に向かった。やや足取りが重いのは仕方がない。空は手を振って見送った。

 ユアンの姿が見えなくなると、空はミハエル、イフラースに連絡を取って慰労会という名の食事会が決定した。
 
 予定が決まってもユアンが心配で部屋に戻る気にもなれず、空はそのままカフェスペースで待つことにした。ディアゴの忠告が頭を過ぎったが、ユアンを待ちたい気持ちが強かった。
 
 絡むなら絡んでこいと開き直った空だが、カフェスペースの空気が一変した。その場にいた猫族全員が立ち上がり、後方に向かって頭を下げた。

「?」

 何事かと見ると、猫族の王レオンハルトが侍従を伴いながら歩いていた。

 大神殿内では基本、候補者と神殿関係者以外の立ち入りは禁止している。しかし一国の王となれば話は別だ。レオンハルトと伏雅は『特例』として侍従も伴えるし、外部との連絡も可能だ。それに文句を言う者は誰もいない。猫族・龍族以外の候補者達もだ。

「レオンハルト様、これより螺鈿の間にて葵様とのお見合いがございます。終了次第、財務長官とのウェブ会議、その後は情報共有の為の夕食会となります」

「他は?」

「王太后から連絡が来ておりますが」

「それは後で良い」

「畏まりました」

 秘書官らしき黒猫、護衛のユキヒョウと共にレオンハルトはあっという間にカフェスペースを通り過ぎてしまった。

 一国の主、『王』として国を運営し民を守る重責は想像を絶する重さだろう。
 
 レオンハルトは確かまだ二十五か六くらいだったはず。空と違い、彼は最初から『後継者』になるべく育てられた者ではない。ある日突然降ってきた王冠を前に、彼は一体どんな気持ちで戴冠式に挑んだのか。空には分からなかった。

(今更だけど、レオンハルト王は同族から王妃を迎えるつもりは無いのかな・・・)

 ふと湧いた疑問。王となれば通常、同族の女性を娶るものではないだろうか?

 人口が百人切った龍族は分かる。彼らは他種族との婚姻なくして存続の道はない。だがレオンハルトは違う。望む女性は全て手に入れられる地位にいるのに、何故か今回の見合いに参加した。

(伏雅王は玉鬘さんに一目惚れしたようだけど、レオンハルト王は既に誰か決めているのだろうか?)

 王である彼を支え、寄り添えられるのは普通に考えると同じ王族出身の若紫だろう。二人が並ぶ姿を想像し、空の胸がチクッと痛んだ。

「?」

 痛みの理由が分からなくて首を傾げると、遠くからユアンの姿が見えた。

「ユアンさん!」

 手を振るが反応はない。心配になって駆け寄ると、ユアンの顔色は白いままで目は虚ろだった。

「ゆ、ユアンさん!?」

「・・・あぁ、空くんか。あれ?私はいつ神兵訓練場を出たんだっけ??」

 記憶が飛んでいる。よく見るとユアンの身嗜みは乱れ、髪もボサボサだ。ミハエルとは違う惨状に空はゾッとした。ユアンの心の安寧の為にも、一刻も早くこの場から離れるべきだと空は判断した。

「ユアンさん、行きましょう。ミハエルさんが美味しいステーキのお店を予約してくれましたから・・・」

「ステーキ・・・」

 それだけ呟き、ユアンは黙り込んでしまった。空は泣きたくなったがグッと堪え、ユアンの背に手を添えて歩き出したのだった。
 
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