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第7章 実習生

第5話 尾行

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 かなり走って、ようやく繁華街のネオンが見えて来た。

 ……兄貴に電話するが、出ない! 何回かけても出てくれない! ……もしかしたら、どこかイヤらしい所に遊びに行っちゃたんじゃないの?



 あ~、こんなことなら、ボスじゃなくて、深田先輩でも合わせておけば良かった……と、不謹慎な事を考えていたら、兄貴から電話がかかった。


「心配してたよ! どうしたの?」

「ごめん、車で移動してて!」

 
 ……あの二人は、車で、何処どこかに行ったの? それとも……兄貴が ……ゆ! 誘拐!?

「バカ! 違うよ!」

 
 ……兄貴の話では、津田さんたちは、歓楽街を素通りし、すこしさびれた停留所から、マイクロバスに乗り、『クサノフーヅ』……という会社に移動したらしい。

 お弁当の会社だ。



 ……これで判った。 津田さんたちは、お弁当屋さんの夜のアルバイトをしていたんだ。

 ……彼女たちは、田舎から東京に出て来て、『看護師になる』という夢を必死に追いかけている。 

 ……しかし、病院から支給される、お給料だけでは、生活が苦しいこともあるらしい。 



 聞いた話では、以前、本当に如何いかがわしい店でアルバイトした挙げ句、好きになってしまった男性に、働いたお金を全て吸い取られ、病院を退職し、そのまま行方すら判らなくなってしまった実習生もいた……らしい。 ……その子も、秋田出身……だったそうだ……。



 昼間は病院で仕事、夜は看護学校で勉強、その後アルバイト……こんな過酷な生活をしているなんて……。


 病院の規則で、アルバイト禁止なのは知っている。 

 生活がつらくても、病院の規則を守って、少ない収入でやりくりしている実習生がいるのも事実だ。

 もし、どうしてもお金が足りないなら、やはり、それは病院に相談するべきなんじゃない…かナ? ……と、社畜ならぬ院畜になっている私は思ってしまう……。



 まあ、ここからは、私が出しゃばる問題ではない。 私にできるのは、病院にアルバイトしている事がバレないように祈る事くらいだ。 

 ボスに詳細を送り、私達も帰途についた。 

 そうそう、ボスからお礼のLINEに加え、兄貴への愛の告白文が添付されていた!

 二人の愛の行方ゆくえは……皆様のご想像にお任せ致します

 はっ! もし、この恋が実った暁には、ボスが私の『お義姉ねえさん』になるって事!?

 ふくざつ……。
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