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第1章『運命の出会い』

第4話 『鬼』

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 少女を近くの公園のベンチに座らせ、さっき買ったばかりのおにぎり弁当を渡した。 ……少女は瞬時にたいらげ、一緒に渡したウーロン茶も一気に飲み干し、まだ足りなそうにしている。

 俺は不憫ふびんになって、コンビニでおにぎりを追加購入し、少女に渡した。

 少女は、先程さきほどと違い、ゆっくりと、味わいながら食べている。 俺も横に腰掛け、ついでに買った自分の分を食い始めた。

 ひと息ついたところで、俺はバッヂの話を切り出した。

 少女は、ゆっくりと話し始めた。

 少女は、別次元の軍『衛鬼兵団えいきへいだん』の司令官。

衛鬼兵えいきへい』(巨大な怪物や、ジョ○ョのス○ンド的な異形いぎょうの者)は、もとは『皇帝』の近衛兵だった。

 皇帝に逆らう者達ものたちが、幾度となく反乱をくわだてたが、彼らの非情な作戦と強大な戦力で、総て殲滅せんめつされた。 …いつしか彼らは『いくさおに』と恐れられ、やがて『衛鬼兵団えいきへいだん』と名を変えて現在に至るそうだ。

 ところが皮肉な事に、規格外に強すぎた『衛鬼兵団えいきへいだん』の活躍で、皇帝に逆らう者は根絶ねだやしにされ、平和が訪れた。

 いくさが無ければ兵士は無用。彼らは居場所が無くなり、流浪の兵団となった。

 それだけでは無い。 彼らには、戦い続けないと消滅してしまう……という過酷な運命が待ち受けている。

 そんな彼らの転戦先てんせんさきを探す為、兵団で唯一ゆいいつ、細胞の配列を変えてあらゆる生物に変身する能力を持つ少女が、先遣せんけんとして次元を超えてやって来た。

 しかし、次元が変われば、価値観や思想が全く異なる。

 そこで、それぞれの次元での『司令官』を擁立ようりつし、どの次元が、兵団の適正に合致するかを見極める事にした……そうなのだ。

 このバッヂは、この次元で『司令官』として相応ふさわしい『正しいright資質staff』を持つ優秀な人材を自動的に選抜する……

 ……なんて都合の良い話があるわけ無く、偶然拾ったのが俺だったそうだ。

 このバッヂは、司令官の徽章きしょうで、兵団との連絡機能があるだけ・・らしい。

 また、おまけ・・・で、戦時中のみ、自衛する機能が付いているそうだ。それで、さっきの、少女の目にもまらぬ攻撃をけられたのか。 ……あざだらけになったけど。

 ……自衛が『おまけ』とは……やはり価値観は相当違うようだ……。
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