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39 少女を拾う②
しおりを挟むどうやら、少女が目を覚ましたようだ。
私は急いで服を着て寝室に向かい、少女の容態を確認した。
「大丈夫? あなたが森の中で倒れていたからここまで運んだんだけど、気分とか悪くない?」
少女は衰弱しているせいか、あまり反応しない。
徐々に状況を察してきたのか、私たちの顔を見て話そうとするが。
ぐうぅぅぅぅぅ……
話す前にお腹がなった。
私は微笑みながらチーズハンバーグを食べさせてあげた。
「おいしい……」
「よかった。あなたのお名前は?」
「アンナ。9歳」
「そう、私はヒナタよ。後ろにいる赤髪のお姉ちゃんはカレン、金髪のお姉ちゃんはシャーロットっていうの。それで、アンナちゃんはどうして森の中で倒れていたの?」
ようやく本題に入れそうだ。
内容によってはこの少女を保護しなくてはいけないし、ただ道に迷っただけなら家に返してあげたい。
「わ、私のお母さんが病気で……。それで、薬草を探しに森に入ったんだけど、魔物に襲われて逃げてきたの。でも、帰り道がわからなくなって……」
よかった。思ったほどの深刻な内容じゃない。
いや、深刻ではあるけど、私の想定していた予想よりかはまだマシだ。
これなら、村に送り届ければ大丈夫そうだ。
「そっか。でも、今日はもう遅いから、明日にでも村に連れて行ってあげるよ。だから今日はゆっくり休んで」
「……本当に? お姉ちゃんたち、ありがとう」
夕食を食べて少しは元気になったアンナを連れてお風呂に入れてあげた。
「ねぇ、ここってヒナタお姉ちゃんの家なの? どこの街にいるの?」
そうだよね。普通森の中にこんな立派な家があるとは思わないよね。
「ここは森の中だよ。私の魔法で作った家なの」
「そうなの!? ヒナタお姉ちゃんすごい!!!」
子供だからかすんなり信じてくれた。
よかった。疑われて質問攻めにされても面倒だし。
アンナは初めてお風呂に入ったらしく、すごく気持ちよさそうだ。
私もさっきはアンナの心配でゆっくりできなかったから丁度いい。
お風呂から上がると、アンナが眠そうにしていたので、ベットに連れて行き、私たちも眠った。
翌朝目覚めて、4人で朝食を取りながら、アンナの村について聞く。
「アンナちゃんの住んでいる村ってなんて名前なの?」
「えーと、確かコリン村だったかな」
「ふーん、カレンとシャルは知ってる?」
「「知らない」」
これは大変だ。
どうやって調べようか。
王都に戻れば分かるものなのかな。
「王都に行けば、分かるものなの?」
「冒険者ギルドに行けば分かると思うよ」
なら一度王都に戻るのもいいかもしれない。
でもそれだと時間もかかるし、何よりアンナのお母さんの病気も気になる。
「なら私だけ王都に行くよ。飛行魔法使えばすぐ着くしね」
「「確かに」」
アンナはきょとんとしていたが2人は納得してくれた。
「そういえばアンナちゃんのお母さんの病気は薬草で治るの?」
「わからない。村の人たちにも見たことない症状だって……」
「どんな症状なのかな?」
もしかしたら私の前世の知識で分かる病気かもしれない。
この世界特有の病気ならお手上げだけど。
「う~ん。なんか手足が痺れたり、どんどん痩せていっちゃって、立ち上がることもできなくなっているの」
……私が知っていそうな症状だ。
もしかしたら時間をかければ治るかもしれない。
でも期待させるのも悪いしな。
「そっか。王都に行って、薬師の人にでも聞いてみるよ」
「本当に! ありがとうヒナタお姉ちゃん!」
私は飛行魔法ですぐに王都に向かった。
さすが飛行魔法だと早い。2時間程度飛んでいたらもう王都が見えてきた。
すぐに冒険者ギルドに入り、何人かの冒険者がこちらを見ていたが無視だ無視。
前回カレンが私のことを話したせいで少しだけ有名になってしまった。
周囲のことは気にせずに、受付にコリン村について情報を聞く。
地図を確認すると、マイホームから馬車で2日くらいの場所だ。
私は地図をもらい、アンナのお母さんの病気を治すためにすぐに薬師……ではなく、精肉店に向かった。
そこで必要なものを買って、王都を出て、マイホームに戻る。
往復で5時間程度か。みんなが飛行魔法を覚えれば、革命が起きそうだ。
「ただいまー」
「え、早いよヒナタ!」
そりゃ驚くよね。私もそうだもん。
誰がここから馬車で往復2日かかる道のりを5時間で帰ってくるんだよ。
「ごめんね。アンナのお母さんのことも心配だから、すぐに出発しよう」
4人で急いで馬車に乗って出発した。
アンナのお母さんの病状が私の想像している病気であることを祈ってコリン村へと向かった。
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