神様のミスで女に転生したようです

結城はる

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96 完了報告

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「セレナさん、依頼の完了報告に来たよ」
「ヒナタさんお疲れ様です。あれ? カレンさんとシャーロットさんは?」
「シャルが依頼で気を失っちゃったから、家で寝かせているよ」
「え、オーク討伐でしたよね?」
「それが、オークジェネラルがいてね……」
「え!? 本当ですか!?」

 セレナがイスから立ち上がり声をあげる。
 そもそも今回の依頼は新人冒険者からの報告でオーク5体を討伐するというものだった。
 それなのにオークは20体いて、さらにはオークジェネラルもいた。
 こういう依頼は本当に困るよね。
 私たちじゃなかったら、死人が出ているよ。

「よくご無事で……。オークジェネラルはどうなりましたか?」
「カレンとシャルが討伐したよ」
「それはよかったです。追加で報酬をお渡しします」

 私はオークの魔石とオークジェネラルの死体を渡す。
 オークの死体は、コハク用に持ち帰るために魔石のみ渡した。
 でもセレナから分けて欲しいと言われたので、半分の10体を引き渡した。
 私は何もしていないので、カレンとシャルの報酬を現金でもらう。

「そういえば、ヒナタさんはクロト迷宮が攻略されたことを聞きました?」

 クロト迷宮?
 そういえば、前にソティラス王女が言っていた迷宮だな。
 噂で攻略されたっていうことは聞いたけど。

「結構前に噂で聞いたけど……」
「そうなんですね。なんでもSランク冒険者の方が踏破したみたいですよ。他国なので情報が回るのも時間がかかりましたが、3ヶ月くらい前に攻略したみたいです」

 ということはソティラス王女を助けた時期と同じだな。
 さすが王女。情報が早いもんだ。

「すごいですよね。あの迷宮は攻略不可だって言われていたのに」

 ソティラス王女もそんなことを言っていたな。
 事実だとしたら私よりも強い冒険者なのは間違いない。

「その冒険者の名前って分かるんですか?」
「えっと、確か……ケータと言う名前らしいです」
「!?」

 ケータって王都で会った冒険者だよね。
 そんなに強い人だったんだ。
 そういえば、別れ際にパレルソン帝国に行くって言っていたけど、迷宮攻略に行っていたのか。
 ソティラス王女が言っていた時に聞いたことのある国だと思っていたけど、ケータから聞いていたのか。
 あの時仲良くしていてよかった。絶対敵対したくない人だね。

「ありがとう。また何か情報があったら教えてね」
「もちろんです!」

 私は夕食の準備もあるから急いでマイホームに帰った。

「シャルの調子はどう?」
「まだ目は覚めないな……」

 マイホームに着いた私は、カレンに今日の報酬を渡して夕食の準備をする。
 コハクも頑張ったので、大好物のオークステーキを焼く。

「ママ、ご飯まだー?」

 コハクもお腹が空いているようなので、急いで4人分焼き終える。

「はい、できたよ」
「やった! いただきまーす!」

 最初は手でかぶりついていたコハクも、今ではナイフとフォークを器用に使って食べている。コハクも成長したね。
 本当は聞き分けのいい子のはずだから、教えてあげればちゃんと吸収していく。
 今後の成長が楽しみだね。

 3人で夕食を食べていると、ステーキの匂いに釣られたのかシャルが2階から降りてきた。

「シャル!」

 カレンが一番にシャルに駆け寄る。
 私とコハクも次いでシャルの元に行く。

「ごめんね。いつも迷惑をかけて……」

 シャルが涙を流しながらカレンに言う。
 カレンはシャルを抱きしめながら慰めた。

「そんなこと言うなよ……」

 この2人は私と出会う前から、ずっと一緒に行動してきた。
 私の知らない2人の過去がある。
 どんな過去があるかは分からないし、聞くこともないだろう。
 大切なのは過去ではなく今だ。
 過去の経験を乗り越えて今のカレン達がいる。
 どんな楽しいことがあったのか、どんな辛いことがあったのか。
 私にはこの2人ほどの友情に入り込む隙間はないだろう。
 でも少しでも一緒にいて近づきたいとは思う。

「シャルが後方にいるからあたしも安心して戦っていられるんだ。これからもよろしくな」
「……うん、ありがとうねカレン」

 しばらくしてシャルも泣き止み、今度こそ4人で夕食を食べた。
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