夢で出逢う - meet in a dream -

LikuHa

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第1章

第12話 乾き

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自分の部屋に帰った美癒は、風呂に入りベッドに横たわると数秒で眠りについた。

昨夜から一睡もしていなかったことに加え、今日の出来事に気疲れしていた。

深い眠りにつく中、誰かが部屋のチャイムを鳴らしていたが全く目覚める気配はない。

ところが美癒は在宅中、大概 部屋の鍵は開けられたままである。

もちろん今日も例外ではない。

それを知ってか、チャイムを鳴らした主は無断で扉を開き、平然と美癒の部屋へと足を踏み入れる。

静まり返った部屋で美癒が眠っていることに気付くと
そっと布団をかけ、点いたままにされていた明かりを消す。

そして暗闇の中、美癒の頭を撫でながら呟いた。

「美癒ちゃんには、夢を見てもらうよーーー・・・。」


***


彼女は【この世】の夢を見た。

菜都の彼氏である琉偉と話している。

辺りを見渡すと菜都がいない・・・何故ならそれは美癒ではなく菜都目線の夢だったからだ。

「今日も琉偉と一緒にアイスが食べたい。アイスが私達を待ってるよ~!」

「この暑さだと、秒で溶けると思うけど・・・食べる?」

「大丈夫だよ。あ、でも琉偉は食べるの遅いからカップアイスがいいかもね。」

騒ぎながら駄菓子屋の前にあるベンチに座って一緒にアイスを食べる。

自転車で二人乗りをしながら駐輪場に戻る。

駐輪場には他の友達もいて、皆で一緒にゲームをした。

・・・妙に懐かしい気持ちになった。

いつも通りの日常のように感じる。


***


ハッと目が覚める。

勢いよく上半身を起こすと、心臓がバクバクとうるさく息が上がっていた。

ーーー何かが物足りない。

自分のココロが空っぽになったような気分だ。

(妙にリアルな夢だったなぁ。琉偉とこんな風に過ごしたことが本当にあったような気がするくらい・・・。
あ~看視実習の影響かな?でも、もし私も【この世】に生まれてたら一体どんな人生だったんだろう?)

人の私生活を覗き見るのがあまり好きではないため看視実習が苦手だった。

だが今は菜都の様子が気になって仕方がない。

真っ暗な部屋の中、乾いた喉を潤すために立ち上がると
椅子に座っている人影に気付く。

美癒は驚きのあまり、掛布団を両手に隠れる仕草をする。

「だっ誰!?」

(そういえば私は電気消してないよね?何で消えてるの?)

「あ?俺だけど。」

パチンと指の鳴る音がすると、部屋が明かるくなった。

見慣れた顔を目にして胸をなでおろす。

「・・・なんだ琉緒か。」

一気に力が抜けて安心した笑顔を向ける。

琉緒は驚かせてしまったことに少し罪悪感を持ちながら、
美癒に近付きフワリと優しく抱きしめた。

「琉緒?」

「お前のうめき声、すごすぎなんだよ。」

「・・・ムカつくなぁ。」

「まだ夜中だから寝てろ。」

鼻で笑いながら、再び美癒を横にして布団をかける。

「・・・ん。」

美癒は喉の渇きも忘れ、布団の温もりに包まれたまま再び深く眠りについた。

また夢を見た気がするが、今回の内容は忘れてしまって思い出せなかった。         

そして美癒が眠りから目が覚めたのは、次の日の夜だった。

夜に寝たはずなのに目覚めたのも夜。

美癒は1日経っていること気付くまで時間がかかった。

だが再び強い眠気と倦怠感が続き、3週間以上 学校に行くことができなかった。

そんな中、琉緒は毎日部屋に無断で入り、
用があるわけでもないのに長時間居座っていた。

琉緒以外にたまには珍しい見舞客もいて、ジンが来た日もあった。

もちろん琉緒がすぐに追い返してしまっていたけれど・・・。


「美癒の部屋の鍵、俺にちょうだい。」

突然の琉緒からの提案に、目が点になった。

「は?嫌に決まってるじゃない。合鍵がないから1つしかないのに渡せるわけないし。」

「最近はほとんど鍵を閉めてないから危ないだろ?だから俺が閉めて帰る。」

「何が危ないの?ここは安全だから大丈夫だし。
それに外出時はきちんと鍵閉めてるわよ!」

「朝は俺が迎えに来てるし、外出する時は俺を呼んでくれたらいい。鍵を閉めに行く。」

「はぁー。ちょっといい加減にして。絶っっっっ対イヤ!!渡さないからね!」

デレカシーの無い琉緒は不満そうな顔をしていたが、美癒の方こそ納得がいかなかった。

「もう帰って!いつまでいるつもりなの!?琉緒とはしばらく絶交よ!!!さ・よ・う・な・ら!!!」

「お、おい!!?」

美癒は琉緒の背中を押して部屋から追い出した。

そして鍵を、わざと琉緒に聞こえるようガシャンと音を立てて閉めた。

(全く!!!琉緒の優しさに甘えてた私も悪いけど、今回は琉緒が悪いよね!!!)

倦怠感は少し残っていたが、明日からは学校に行こうと思い早めに眠りについた。

この約3週間、ほとんど寝ていたのにまだ眠たい。

いくらでも寝れる。

それに菜都目線の夢は、ここ最近毎日のように見続けていた。

たまには自分(美癒)目線の夢を見て、菜都が出てきてくれたらいいのにとも思った。

姉妹で楽しく話をしたい・・・。
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