進め、我らが総統祖国の為に。

KRONOS

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本編

女兵士と黒の総統

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コンコン
高級感のある漆黒のドアをノックして、
「死田 彩花です」
と一礼してから部屋に入る。

「…どうぞ」
「失礼します」

部屋の大広間に座っていたのは
紛れもなくゾチ帝国総統である。
一昨日、赤の彼がキル、と呼んでいたので
恐らく名前はキルというのであろう。

私を真っ直ぐに見捉える緋色の目に、
初めてあった日のようにじっと見つめてしまう。
いくら殺して赤を見ても、この人の
紅にはきっと叶わないだろうな、と思った。

「我が名はキル·バースト。
この国を統べる者。」
「…私は死田彩花、本日は
我が総統に仕えるべく私の思いを表明しに
お伺い致しました。」
「…まあ、座ってくれ」
「…はい」

室内に重い空気が渡る。
とはいいつつ私は慣れているので、
奉仕に対する意思表明を語った。

「…なるほど。まぁ、私自身君を
我が国の幹部として迎えたい気持ちがあったのだが」
「光栄です」
「以上の理由により、君を我が軍に
迎え入れる事は決定としよう。そして
大事なものが、君の役割についてだ」

「私は、貴方を護衛します。」
「貴方は私の事を助けてくれた。
私は、貴方が倒れそうになった時、
命をかけて守ります」

最初は唖然としていた総統だったが、
次第に大爆笑を始めた。

「…ど、どうしました?!」
元々頭のおかしい国家だと思っていたが、
その理由は総統にあったらしい。

しばらくして笑いが収まると、
「お前、面白いな」
「…それはどういう?」

私としては、あなたの方が面白いが。

「ならばお前は役に立たない」
「…なぜ?」
「お前が手を出す前に敵はもういないからだ」
「すごい自信ですね」
「皮肉のつもりか?」
「いいえ、純粋な本心です」

純粋な本心なんてものありはしないが、
この総統、大分頭が切れる食えない奴らしい。
お前は最前線で戦い幹部の負担を減らしてくれ。
特に否定する事もないのではい、と返事する。
すると、総統はいきなり机に突っ伏した。

「あー、疲れた」
そして皿に盛られた大量の菓子を食べ始める。
さっきまでの重い空気と総統の威厳が消え去った。

「甘いもの、お好きなんですか」
「まぁ、好きだが…」

一番は戦争とゲームだな。

と答えられた。
やっぱりこの総統頭おかしいんじゃないか。
まぁ、殺人鬼の私が言おうと説得力はないけれど。

ひたすらもくもくとお菓子を食べ続ける総統。
そんな不健康な生活を送り太らないのが
疑問である。やはり動くからだろうか。

「仕事、無いんですか?」
総統たるもの仕事量は尋常ではないはず、
手伝うつもりで来たのだが、一向に
資料に目もくれず、資料すら見当たらない。
「仕事は全て有能書記長がやってくれるから」
「え…」

その書記長は大丈夫だろうか。
今頃過労で死ぬのではないか?

…まぁ、気にしない事にしよう。

所で、本当にらしくない。
総統らしきものが彼に見当たらない。
私生活は堕落、仕事は人任せ。
新人幹部に警戒心がまるでない。

あろう事かソファーで眠りだした。
全く、今私に撃たれたら貴方の
人生は終わるというのに、無防備な総統だ。
「…綺麗」

彼の寝顔を見ての感想がそれだった。
海外に行ったら間違いなく
モデルは出来るであろう顔と体型で
なぜ国の総統をしているのだろう。
謎だらけのこの彼に私は興味を持ったが、
恐らく私が知っていい事では無い。

五分足らず、考えているうちに
彼は起きた。
「うーん、戦争の予感」

なんだその予感は。
うんざりしたが、次の瞬間警報が鳴った。

「キタコレー」

なんだこの総統は。
戦争予報能力が備わっているというのか。

『緊急連絡!
ウォレリ国の下等民族がこちらに
向かっている!城内に入る前に対象求む』

「さぁ、女兵士の出番だ。
戦争を、始めようじゃないか」

初めてこの人の無邪気な笑顔を見た。
その顔を今この状況で見ても引くだけだが。
「さて、我々も向かうぞ」
「総統が戦いに出向くのですか」
それほど重要な戦いだったか?

「俺だって殺したいじゃん」
「そ、そうですか」

そういう問題ではないと思うが
取り敢えず同行する。

「こちら総統。
私もそちらへ向かう。
エージェントはオペレーターを、
フィジシャンは手当の準備を、
その他は持ち場に別れろ、作戦はCUSTOMでな」
『おい待てキル!
お前は戦いに出るなって何度m』
「戦争開始ー!」
『聞いてんのかごるァ!!』

こうして始まった戦争を
私は楽しみにしていた。

***
敵が大分減ってきて、
残り数人になった時。

「伏せろ!!」
よく通る総統の声が響き渡る。

私が反応しようと思った時には、
視界に皆はいなかった。
それと同時に、背中に鈍痛が走る。

コンクリートに思いっきり打ち付けられたらしい。
そして私が立ち上がろうとした時には、
皆はすでに城内に攻撃を始めていた。

「いった、ミスった」
「バカ総統!だから来んなって…!」
「はいはい、心配してくれてアリガトー」
「おっまえ後でしばいてやる」

どうやら総統は私をかばってくれたらしい。
背中に血が滲んでいるのに、
命令を出し続け、一人残らず殺した。

***
「あ、足痛え…背中より足が痛い」
青い顔して書記長の説教を受けていた
総統が帰ってきた。

「大丈夫ですか」
「これで大丈夫に見えるなら君は頭おかしいよ」

「あの、今日はありがとうございました」
「……なんの事かな」
急にとぼけ始めた。

「今日、私をかばってくれて…」
「…ああ、かばったんじゃなくて
仲間を失う訳にはいかないからだ。
かすり傷くらいならどうでもいいし、
俺だって全員の動きを見てる訳じゃない。
致命傷になりそうだったから突き飛ばそうとしたら
俺が食らっただけ」

長々と説明を受けたが大体聞いていない。

この人が総統だと慕われる理由が
わかった気がする。
横暴な態度の裏に、仲間への思いと
優しさが滲み出ているから。

「そんな長々言わなくても、
守って下さっただけで嬉しいです」

そういうと総統は、
礼を言われるのは慣れない、と
目を逸らされてしまった。

これから、よろしくお願いします。

再び寝始めた彼の前で、小さく笑ってみた。
なんだか彼とは気が合いそうだ。
不器用で、素直じゃなくて、
意地悪で寂しがり屋の貴方に。

誠心誠意お仕え致します。
我が総統と、祖国の為に。

to be continue…

ーーーーーー
第二回、人物紹介!
総統としての強さと
裏の子供っぽい性格が
伝わったらいいな、と思います。

お読み頂きありがとうございました!
次回の更新もお楽しみに★
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